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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.98】
「ハンガー~」、 “鉄は熱いうちに打て”

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.98】
「ハンガー~」、 “鉄は熱いうちに打て”

2012年10月02日

 言い回しは毎回違ってはいると思うが、洋画の厳しさを指摘するのは、今年いったい何回目になるのだろうか。先週もまた、洋画の興行が突出しない。

 9月28日から公開された「ハンガー・ゲーム」と「ボーン・レガシー」。前者はTOHOシネマズ日劇(スクリーン1)、後者はTOHOシネマズ日劇(スクリーン3)をそれぞれメインに、全国公開されている。

 夏興行が終了した9月下旬の公開とはいえ、かつての日劇と日劇プラザの公開作品である。当然、相応の期待感がもたれるわけだが、以下の成績を見ればわかるとおり、満足のいくスタートにはなっていない。

▽「ハンガー・ゲーム」=動員9万4872人・興収1億2240万0500円(9月28~30日)、7万1870人・9451万4000円(9月29、30日)
▽「ボーン・レガシー」=18万8618人・2億3120万3000円(9月28~30日)、13万8643人・1億7284万6800円(9月29、30日)

 「ハンガー~」は全米大ヒットとなり、当初、米版「バトル・ロワイアル」との情報も伝わったが、設定は似ていても、作品自体は似て非なるものだったと言うべきか。ゆえに、「バトル~」のようなヤバい雰囲気、バイオレンス的な要素を大きく謳えなかった。だから、結果的には普通のアクション的な娯楽作から、宣伝面などで大きな逸脱が見られなかったのである。

 全米公開から、もっと早く日本公開してもよかったのではないか。全米大ヒットを受け、その余波をかって、ゲリラ的に公開する。大劇場でなくてもいい。娯楽 “大作” ではないのだから、 “構えて” 公開する必要はなかった気もするのである。 “鉄は熱いうちに打て” といった作品ではなかったか。

 「ボーン・レガシー」は、これまでの「ボーン」シリーズのスピンオフ的な作品と言えるだろう。だから、「ボーン」シリーズの1作目(最終興収16億円)、2作目(12億5千万円)、3作目(16億5千万円)との安易な比較はできない。「踊る大捜査線」のスピンオフ作品と、それは同じことが言える。ただ、そうは言っても、物足りないことに変わりない。

 「ハンガー~」「ボーン~」とも、今の洋画興行を象徴している。若い層への広がりが、極めて限定的なのだ。洋画の興行が突出しないのは、他でもない、若い層の関心が希薄化しているからだが、単にそれを、「若者の洋画離れ」と言ってしまっては身も蓋もない。問題は、いったいどうどうすればいいのか、である。

 当コラムでは諦めず、一つ、一つ、現象を提示し、その原因を突き詰めていくつもりだ。繰り返しになっても、仕方がない。

(大高宏雄)

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