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釜山フィルムコミッション、オ・ソクグン運営委員長

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釜山フィルムコミッション、オ・ソクグン運営委員長

2012年12月20日

映画教育と技術協力を通じてアジア映画の未来に備える

AFCNet.JPG


 アジア各国の映像政策責任者が集まり、アジア映画発展のために実質的な議論を行う、アジア唯一の映画・映像政策フォーラム「2012アジア映像政策フォーラム」(AFPF)と、世界各地のロケーション情報や先端映像技術を紹介する釜山国際フィルムコミッション(BFC)・映画産業博覧会(BIFCOM2012)が、去る10月8日から11日まで、韓国・釜山海雲台BEXCOで開催された。今年のテーマは、「映画教育と技術協力を通じてアジア映画の未来に備える」で、BIFCOMは、昨年に続き今年も釜山国際映画祭アジアフィルムマーケット(AFM)、アジアプロジェクトマーケットと共同開催された。
 そして、最終日の11日には、AFCNet(アジアフィルムコミッションネットワーク)の総会が開催され、新規理事を選任し、ジャパン・フィルムコミッションの寺脇研理事長が副会長に選任された。また、11年~12年の事業結果の報告、12年~13年事業計画(案)を承認。AFCNetが今後さらに発展するための方向性について議論が交わされ、各国でのワークショップの定期開催、準会員確保の重要性、言語を越えた会員間のコミュニケーションの強化、アジア各国にある障壁を越えた協力を訴え、さらなる発展を標榜し閉幕した。尖閣諸島や竹島など領土問題がアジアの緊張感を高めている中で、アジア間の協力は進むのか。
 釜山フィルムコミッション(BFC)運営委員長で、AFCNetの会長でもあるオ・ソクグン氏(写真中央)に今回の成果と課題などについて聞いた。
(インタビュー:和田隆)




 ―BFC運営委員長、AFCNet会長に就任されて今年で3年ですが、この3年を振り返っての感想は。

P1210350.JPGオ運営委員長
 AFCNetを中心に話をすると、AFCNetは国から公認してもらった組織ではありません。アジアの各都市から集まったフィルムコミッションがコミュニケーションをとる所です。でも、昨年から注力してきたのは、会員数を増やすことに重きを置いてきました。それにも拘わらず財政的に、システム的に、事業的に組織を固めるには大変でした。今年の成果は、理事が直接選出されたこと。この3年間、組織を整備するのが一つの目的ではありましたが、組織が整備されることによって、行政的な部分や事業的な部分、財政的な部分に関して具体的な論議が出来るようになると思います。(右写真、オ運営委員長)


 ―昨年から東南アジア諸国連合(ASEAN)が加わった効果はありましたか。

P1210223.JPGオ運営委員長
 アセアンフィルムコミッションの設立支援など、今回の総会で正式に承認されることになりましたが、組織の具体的な業務は昨年から進めていました。今回承認された理事は、昨年から理事なるであろうと予想していて、その理事を中心に新しい事業の話をしてきました。AFCNetは撮影のロケーションの情報交換が最初の目的ではありましたが、撮影場所に誘致して、各都市で撮影するのは現実的には難しいところがあります。ですから、フィルムコミッションが共同で出来る事業として、映画を作ることに意味を置くことになりました。
 その一つが教育事業でもあります。教育事業はAFCNetの発展にもつながりますし、これからのアジア映画の発展にもつながるのではないかと思っています。教育的な部分を話すと技術的な部分も話さなくてはいけないのですけど、今回は教育と技術をテーマにしました。これは実際的に仕事にもつなげることが出来るので、今回のテーマに選びました。 (左上写真はAFPF開幕式で記念撮影)


日本初「コンテンツ特区」札幌でワークショップ開催

 ―教育を実際にやっていくとなると、成果が出るまでに時間を要すると思いますが、どれくらいの期間を想定していますか。

P1210142.JPGオ運営委員長
 はじまりを盛大にするとお尻が小さくなるので、最初は小さくはじめていきます。まず、11月からアセアン10か国から各2名、プラス韓国から2名を選抜して、フィリピンのダバオでアジア映画の教育プログラムを設けました。この教育事業になぜ意味があるかと申しますと、アセアン・ファウンデーションから基金をもらっていますので、それに大事な意味があるのではないかと思っています。
 また、来年の2月から札幌でこの学生を招待して企画開発のワークショップをやることにもなりました。日本、韓国、中国、台湾など、アジアの10か国が一緒に教育事業をやることが出来ると思います。
 この教育事業の目的は何かと申しますと、釜山が中心になって行うものではなくて、映画人が人材を育成することに意味があります。ですから、来年からは日本から監督や撮影監督が来て学生を教育します。台湾の監督や撮影監督が来て講演をしたりするなど、“アジアの人材”を育成することに意味があると思います。(右上写真は、札幌映像機構をプレゼンする上田文雄札幌市長)


 ―日本初の「コンテンツ特区」札幌市に期待するものは何ですか。

オ運営委員長 
札幌市が「コンテンツ特区」として先発されたことを大変嬉しく思っております。札幌が映画産業に対して考えているシナリオと、釜山市が考えているシナリオがほとんど一致していて、札幌と釜山が教育事業に参加するのが大変意味のあるものではないかと思っています。札幌は来年2月からファンドを作る予定だそうです。釜山も同じです。ですので、札幌と釜山がファンドを一緒に運営することも検討中です。これが小さなはじまりではないかと思います。


 ―総会で、副会長が井上俊彦さん(北海道コンテンツ戦略機構理事長)から寺脇さんへ変わりましたが。

P1210324.JPGオ運営委員長
 寺脇さんは私が尊敬する映画人です。寺脇さんの映画に対する考えがもの凄く好きです。私はAFCNetの会長ではありますが、寺脇さんが指示を出したら会長の私が現場で皆さんと会ったりと、そういう役割をしようと思います。寺脇さんよりはお酒が強く、自分は少し寺脇さんより年が若いので、自分が現場で働いていきます(笑)。
 寺脇さんは、日本のフィルムコミッションが持っている考え方を韓国に発信することもできるし、日本が一番メンバー数が多いので、そのメンバーに考えを伝えることもできると思います。そういう役割もやって頂けるものと期待しています。
 井上さんは、札幌映像機構=SAS(Screen Authority Sapporo)の中でも自分の役割を果たしていくのではないかと思います。井上さんは、ビジネス旅行が好きですね。インドや台湾、ヨルダンとか、自分が旅行をしながらビジネスをする方で、そういう役割をきちんとして頂けるのではないか、自分が出来ないことを井上さんがしてくれるのではないかと期待しております。井上さんは自分にとっては兄弟のような存在なので信用しています。(右上写真はAFCNet総会風景)


―日本のフィルムコミッションへの要望は。

オ運営委員長
 実は自分は、日本のフィルムコミッションに対しては非常に申し訳ない気持ちを持っています。そもそもFCが成立した目的は、沢山の海外の方々がそれぞれの国に来てドラマや映画を撮影するのが目的だと思います。札幌は例外として、他の地域はロケーションを目的とした観光客を誘致することが目的ではないかと思いますけども、例えば、韓国ドラマがなかなか日本では撮影できない、韓国はそういう力がないので大変申し訳ないと思っています。積極的に誘致をサポートできないんですね。
 寺脇さんと話しているんですけど、韓国の有能なドラマや映画のプロデューサーが、アジアに関係する方々を招いて日本のロケーションツアーを実施しようかと考えています。あとは、日本の政府からどれくらい支援が頂けるかですね。

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フィルムコミッションセッションでは、FCの役割と機能、これからについて話し合われた


韓国映画産業をどのように発展させるのか

 ―一方で、韓国の映画産業、釜山フィルムコミッションの課題とこれからの目標は。

オ運営委員長
 釜山FCと釜山市の考え方は同じです。韓国映画産業をどのように発展させるのか、釜山FCと釜山市がどういう役割を担うのかが目的です。映画産業の範囲が大きくなれば大きくなるほど、我々にインセンティブがあるかどうかは釜山市は充分にわかっております。
 釜山FCと釜山市をもう少し広い視点で考えると、映画産業をどのように発展させるのかを今夢見ています。それが釜山市の発展にもつながるし、これからのFCの発展につながるのではないかと思います。
 今回、アジア初のデジタルスタジオ「デジタルベイ」も公開しましたが、これもこれからの映画産業に影響を与えるのではないかなと期待しております。我々は、お金を釜山市と政府に支援をもらって構築しました。運営に対する責任は釜山FCが持つものではなくて、韓国コンテンツ振興院が責任を持たなくてはならないと思います。このシステムは、韓国の映画人が自ら運営して責任を持つことが大事だと思います。


 ―総会では、この3年の中でも特に活発な議論が成されたように思いますが。

オ運営委員長
 今回の総会の目的はコミュニケーションを深めることでもありました。多様な国々の方々が参加されています。この各国の方々と対面をする機会はあまりありません。この期間中ずっと夜中、お酒を飲んだりして友情を深めました。心を開き合わないと仕事は上手くいきません。腹を割って意思疎通が出来るかが大事だと思います。

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AFCNetパーティーで記念撮影。中央、感謝牌を授与された香港のナンサン・シ氏、その左が井関惺氏

 ―AFCNetの今後の方向性が見えてきたということですか。

オ運営委員長
 そういう話は非公式な場で心を開いて出来ることです。そういう意味で方向性が見えたり、ビジネスのためのコミュニケーションが取れたのではないかと思います。(了)




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