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文化通信社企画セミナー「映画界大論戦 プロデューサーVS学生」

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文化通信社企画セミナー「映画界大論戦 プロデューサーVS学生」

2012年12月26日

違う動きの中でどうやって企画を見つけるか

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大高 プロデューサーは毎日何をやっているのかと、皆さん思っていると思うんですけど。川村さんの毎日の日常的な動き方は?

川村 昔は僕も本読みだったんですよ。年間300冊くらい本を読んでいたときもありました。何が面白いのか、面白くないのか、何が売れて、何が売れないのか、あるいは何が映画に向いていて、何が映画に向いていないのかということとは、数読んでみないとわからないという思いもありました。
 最近は、日本映画もいっぱい作られるようになって、今はツイッターで情報をチェックして、書店に行って売れている原作をチェックしてみたいな動きも多くなってきていますが、僕はひねくれ者なので、そうなると自分はどうやって違う動きの中で、企画を見つけるかという考え方を今はしています。


大高 そんな中で最近、川村さんは本を書いたらしいですよね。小説を書いてベストセラーにしてそれを映画化するのかなと思ったんですが。

世界から猫が消えたなら書影.jpg川村 それはちょっと違います(笑)。自分の中で映画にはならないけど、文章だったら面白く出来るんじゃないかというアイデアがいくつかあって、それを小説にして出したということです。「世界から猫が消えたなら」(マガジンハウス)という本なんですが、映画的ストーリーテリングなんだけど、文章じゃないと表現できないことにチャレンジしています。一冊小説を書いたことで、映画表現の利点や魅力をあらためて再発見することにもなりました。そうやって自分の中でいろいろな表現を行ったり来たりしながら、それぞれのジャンルの良さを見つけていく作り方が今の自分には必要なのかなと思っています。


大高 今の話を聞いて、中沢さん、どうですか?それを映画にするかどうかは別として、やはり映画との関係性みたいなものが当然あると思うんですけども。

中沢 話をうかがっていて悔しいですね(笑)。自分で本を書いて、もちろん映画に直結しなくても、次に作る映画に使うにしても、また原作を使うにしても物凄くプラスになると思います。僕も毎朝本屋に行っているというのは、やはりいいお寿司屋さんが毎朝築地にいいネタがあるのではないかと行っているのと同じです。
 配布資料に並べているラインナップはすべてやるつもりでいるんですけど、約20本というのは全部朝行く本屋で仕入れてきて、それをどんな風に僕の中でアレンジして、追加して引いて作品にしていくかというのは、その辺も映画作りの一つの楽しみでもあります。
 それからデベロップ、準備の費用だけは、惜しみません。「スシ・ポリス」は3回くらい海外にロケハンに行ったり、台本を何稿も作って、いつでも立ち上げられる時が来たら立ち上げる形でやっています。僕たちフリーのプロデューサーはとにかく変わったことをしていかないと、絶対にメジャーに勝つことは出来ないので、自分の中であえてそういうチャレンジを常にやっていくことにしています。


ギャンブルに勝つため、いかに自分の中で作品を積み上げるか

大高 中沢さんは、20本近くの企画が同時に動いていますが、配給会社との折衝はその間どういうような形をとられていますか?

中沢 いま十何本作っていますが、その十何本の中に、「おしん」、それから「忍たま乱太郎 夏休み宿題大作戦!の段」という映画があります。先ほども言ったように自分で作るので、最終的に公開できなかったら大変なことになるのですけど、とにかくそこからの仕事は配給会社さん、TV局さん含めてこの作品に興味を示してくれるようにもっていくのがプロデューサーの仕事だと思っています。作品をいろんなアレンジをして、いろんなことをつけ足したりして、配給会社さんの方に声を掛けて頂ければということでやっています。
 すべてそんなやり方で、自分自身で映画を作ってきましたので、かなりリスキーなのですけど、ある意味、映画というのはギャンブルですから、他人にギャンブルするからお金を出してくれというのはおかしな話。とにかく自分が出来る範囲のことは一生懸命やって、ギャンブルに勝つために、いかに自分の中でその作品を積み上げていくかが今の僕の仕事だと思っています。


P1210507.jpg大高 本当に一本作って映画が公開されなかった、一本作って映画がコケたという状況になってしまうと、製作会社も監督もプロデューサーも次の作品を撮るためには大変な労力が必要になってきます。そういう中で中沢さんは、ギャンブルと言われましたが、いま製作委員会方式というのがあります。企業が参加してくるんですけども、お金を出すから逆にうるさいですよ。そうすると中身なども最初のものと違うものになってくることもあります。お金が沢山入る分、中身が薄められていくこともあるんですけど、中沢さんの話を聞いていると、作りたいものを作りたいという自身の方向性の中で、もし出来ない場合はギャンブルでやってしまうという、そういう気構えを感じたんですね。

中沢 ギャンブルですから、自分の金でやらなくちゃいけない。自分でできる範囲、もちろんハイバジェットの作品は個人ではできないのですが、心意気として映画は自分で作らなければいけないと思っています。バジェットは平均1億5000万円くらいで映画を作っていますが、そのくらいでしたら自分の範囲でできるということで、とにかく作ってしまう。それで製作委員会が出来る前、自分の方針を決めて作って、この作品に興味を示してくれたパートナーの方に製作委員会に入って頂いて、公開ということになるのです。その段階でもちろんいい意見を頂ければ訂正いたしますが、すでにその時には映画が進んでいますので、あまりいじらないでやっていけるという利点は自分の中であります。


大高 今のお話を聞いていると、本当にプロデューサーって生半可なものじゃない。よく考えるんですけど、映画監督がいます、プロデューサーがいます。映画監督が映画を作る人なんですけど、映画監督って一人では映画は出来ません。お金を持ってくる人、企画を持ってくる人、配役を決める人、そういう段取りをする人と監督は組まなければならないんです。恐らく私が感じている今の日本映画界の現状というのは、監督はいるんだけど、監督のパートナーとしてのプロデューサーと組める監督が果たしてどこまでいるのかということなんです。恐らく監督はもの凄く孤立しているのではないか。つまり映画を作りたいんだけど、それを作る手立て、いろんなところでの動き方がなかなか出来にくいのではないでしょうか。

中沢 是非、映画プロデューサーに皆さん参画して欲しいです。 



『おくりびと』の滝田洋二郎監督は3人目の監督だった!?

Q&A

質問 企画を自分でどこかから見つけてきて、立てて、それを映像として実現する時に監督と組んで行くと思うんですけど、この作品はどの監督に任せたいとか、どの監督にしようというのは、ご自身の中でどうやって経験を培っていかれたのですか?

中沢 自分で企画を立ち上げて、それで本屋さんで見つけたネタをどうやってアレンジしていくかが僕の仕事なので、アレンジして出来てきたと同時に監督に言うのですけど、俳優のイメージも浮かべて、自分の中で少し収支計算が出来るわけですね。大体これくらいのリクープが出来るだろうと。そこでその段階では、ある程度脚本も出来ているので監督と交渉します。
 監督と脚本作りをするんですけど、何人も交渉する場合があります。『おくりびと』も滝田洋二郎監督は3人目の監督でした。意見が合えばやろうということになるし、意見が合わなければ無理してやる必要もないというやり方をやっています。僕の場合は勝手に作るので、いつ配給というのは決まっていない。ある条件が整った時に、やればいいわけなので、脚本家、監督、俳優さんともじっくり話をして、意見がみんな合って、タイミングが合った時期にクランクインしましょうという形をとっています。

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川村 僕の中ではオリジナルストーリーだったり、原作ものだったりと10個くらいの企画を回していて、同時に一緒にやってみたいという監督が何人か頭の中でぐるぐるまわっていて、さらにこういう俳優を組み合わせてみたいという、その3つがカチッと固まる瞬間があるんですよね。結局、物語を探すという行為と、一緒にやるクリエイターを探す行為と、俳優を探す行為を同時にやって、それがどう組み合わさって企画になるのか、という作り方です。


いま海外への進出は逆にチャンス!

大高 中沢さんはいま海外でマレーシアでしたか、そこを拠点にされている話もして頂けますか。

中沢 僕の場合は、日本ではなかなかビジネスにならない。今の日本映画界の現状は収入に対して僕たちのところに戻ってくるのは15%くらいしか戻らないんですね。原価率の15%というのは、どんなビジネスにしても商売に絶対にならない構造になっているわけなんです。
 とにかく日本で川村さんのように常に当てていくというのは、本当にピンポイントで、針の穴に糸を通すくらいの難しい状況になっています。なので、少しでも海外に進出できればということです。コンビニもユニクロもすべて海外に行っています。かつては映画も海外に行っていましたが、いま日本映画はまったく皆無というくらい海外に出なくなっています。でも、逆にチャンスだと思っています。
 昔、日本で『トラック野郎』(75年~79年)というのがあって、この映画は日本各地をトラックで巡っていく話で、これを少しスケールアップして、東南アジア各地でこの『トラック野郎』の物語をやってみようと思って一本、マレーシアで作って、これも完成して、来年は今度中国の雲南省で作る方向で進めています。そうしたら向こうも、マレーシアの映画会社の方から今度は逆にマレーシア映画に出資しないかという話が来ました。まだ、一般公開される映画がマレーシアの自国映画は6000万円、7000万円くらいなので、そのくらいの計算で出来るのだったら収支計算が出来るのじゃないかと思い、マレーシアに事務所を作りまして、今度はマレーシア映画に少し投資していければと思っています。


質問 危惧しているのは、映画館で映画を観ることが当たり前でなくなってきていると思っています。いろんな映像を観るデバイスが広がっていることだと思っていて、TV、PC、モバイルで観るという広がりが出てきている。特に若い人に、そういった中でDVDも売れない、ブルーレイも売れない状況がありますよね。観方が多様化している中で、作り手としてどういう風に考えていますか?

川村 僕は単純で、企画を立てて、面白いクリエイターと面白い作品を作るしかないと思っています。なにより、映画館にわざわざ足を運んで入場料金を払ってくれる、一番リスクをとってくれる人に対して作っています。携帯電話で観る人が多いから、DVDが売れないから、と想像したところで作るものが変わるとはちょっと思えません。

P1210481.JPG中沢 僕も川村さんと同じなのですけど、ネットとかDVDで観るから、映画館で観るからといって作り方は変わらないのですが、映画というのはスタッフもライティングのこととか現場で小さな工夫は監督、キャスト含めていっぱいやっています。ただ、映画だから映画館で観なきゃいけないというのは、今は昔の話。それでもエンタテインメント・ビジネスとして独立プロの人はやっていかなければいけないので、ラインナップを発表しているもので、このうちの何本かは配給を決めないで作っています。
 とにかく最初にやってみようと思って、インターネットで最初に配信して、その後同時にDVDと映画配給公開ということにチャレンジしようと思って現状では進めている作品が、発表している作品の中から5本くらいはあるのですが、そんなやり方もやっています。


質問 それぞれネットでも配信をされていくということなんですが、これから映画館でこんな風に上映したいということがあれば教えて下さい。

中沢 エンタテインメントですからなんでもありだと思っていますので、映画館だから映画だけを上映するのではなくて、イベント的なことも僕はあり得ると思っていますので、そういう企画はこれからやっていこうと思っています。すでにやっていますけど、コンサート付きの映画でもいいし、そういうところで配給会社と劇場が協力してくれるのでしたらこれから進めて行こうかと思っています。


自分の中で発生した感情を映画化したら面白いかもという発想

質問 年間300冊ほど原作に触れていたという話があったのですが、僕は学生ですが、1週間に小説を1冊読めればいい方なのですが、そういう原作に触れる際に、プロデューサー目線というか、こういった視点で読むと面白いというアドバイスがあればお願いします。

川村 あまり学生時代にそういう目線で読まない方がいいと思います。大事なことは、100万人、200万人なりそれ以上のお客さんが受け取る感情をイメージできるか、ということだと思うんです。お客さんにとっては、プロデューサー目線とかは関係ないわけで、特にそういう観方や本の読み方もしないわけですよね。だから、僕はなるべく最初は素直に読んで、つまらなかったらつまらないと思い、感動したら何で自分が感動したのかともう一回巻き戻しながら考えて、そこで自分の中で発生した感情を映画化したら面白いんじゃないかという発想の仕方をしています。

中沢 川村さんとまったく同じで、僕も本屋に行って、何を映画化しようかと思って見ていては駄目で、とにかくパラパラ立ち読み、どうせ僕は本を買って来たって、うちの机に積んでおくだけなので、本屋へ行って1日で2万、3万円分くらいの本を立ち読みしたり、じっくり読みたければ買ってみたりして、その中から自分に引っかかることがあったらそれをどういう風に育てていくかが、そこからの勝負。とにかくあらゆる情報をパラパラ見ているだけでそれでいいと思います。


映画が好きという一点で広がるとてつもない豊かな精神性

大高.jpg大高 映画をやりたい、映画ファンだと言う人に限って、映画を全然観ていないですね。新藤兼人監督は今年100歳で亡くなりましたが、もう一人、木下恵介監督が今年生誕100年なんですよ。そしてもう一人いるんです、日本の巨匠で今年生誕100年の方が、どなたかご存知ですか? 武智鉄二という監督なんですね。私は武智監督を非常に高く買っていますが、武智監督の作品を観てる人は非常に少ないですね。

 よく映画業界に入る人は、映画が好きなだけでは駄目だと言われます。その通りなんです。しかし、映画が好きであるという一点で広がっていくとてつもない豊かな精神性があるんですよ。学生の方々、映画を無心で観る、好き嫌いで観ていいし、そういう時代を経ていかないと、映画ってなかなか近づいていけないものなんだなあとおふた方の話を聞いて感じました。

 中沢さん、川村さんの話を聞いて私自身勉強になりましたし、皆さんも何かどこかで自分の映画に関する知識、これから行く道に参考になってくれればいいなと思います。 今日は朝から本当にありがとうございました。
(了)



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TIFF学生応援団とセミナー終了後に記念撮影する中沢氏と川村氏


※なお、文化通信社では2013年以降もセミナーなどのイベント、新規事業などを積極的に手がけていく予定ですので、弊社とのコラボレーションにご興味のある企業・個人様はお声掛けいただければ幸いです。宜しくお願い申し上げます。
 問い合わせ先は、担当:和田まで
(03-3214-6041/info@bunkatsushin.com).




 




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