閲覧中のページ:トップ > 文化通信バラエティ > インタビュー >

メディアの責任、コンテンツの質、人材の不足…
11年目の韓流、嫌韓を越えて―古家正亨氏に聞く

インタビュー

最新記事

メディアの責任、コンテンツの質、人材の不足…
11年目の韓流、嫌韓を越えて―古家正亨氏に聞く

2014年02月28日
古家正亨氏

2014年の年明け早々、ガールズグループ「KARA」の分裂がついに現実に。タブロイド紙や週刊誌には連日、韓国バッシングの記事が並ぶ。あれほどの人気を誇った韓流ブームはどこへいってしまったのか――。

 2012年8月の李明博大統領(当時)の竹島上陸に端を発し、日韓の溝は深まるばかり。政治と無縁のはずだったエンタテインメントにも嫌韓の波は及んでいる。一方で、韓流を熱狂的に支持しつづける層もまだまだ多い。ヨン様は、いまだ絶大な人気。東方神起のCDは、依然セールス10万枚超。韓国アーティスト、俳優の日本進出も止まらない。

(インタビュー/文・構成:高崎正樹)



●日韓関係悪化による影響 KARA上陸前に逆戻り

▼ブームの終焉、あるいは好きと嫌いの2極化。奇しくも、去る2013年はドラマ「冬のソナタ」の日本初放送から数えた“韓流10周年”だった。大きな曲がり角にあたり、韓流ビジネスといえばこの人、古家正亨氏に聞いた。

 まず、2013年をどう見たか。韓流10周年ともあって、業界を挙げた「韓国ドラマ大賞」などさまざまな取り組みが行われた。しかしイベント司会などで最前線に立つ古家氏は、嫌韓を肌で感じ取り、率直に「厳しかった」と首を横にふる。一方で「これまでが異常だった」とも指摘し、時局を見守る。

古家 2013年は、良くも悪くも転換期となる1年だったと感じています。韓流カルチャーが10年継続でき、サブカルチャーとして定着したという点で、周年的なお祝いにはなった。しかし、日韓関係が最悪ななかで、これまでの勢いは完全に失った年でもありました。ビジネス的には明らかに厳しかった。だけれども、単純にマイナスと見るべきか、むしろ今までが異常だったとも捉えられるわけです。

 李明博元大統領の竹島上陸や天皇陛下に対する高圧的な発言を境に、一般的には、韓国という国に対しての嫌悪感が増すばかりです。その感情が、この1年でついに韓流に興味があった人に対しても残念ながら及ぶようになってしまいました。特に2013年、ファンと距離をより詰めなくてはならない大切な1年だったはずが、むしろどんどん離れていく結果になりました。

 韓国の場合は、お国柄、もともと政治と文化の結びつきが強いんです。対して、日本って、政治と文化を切り離して考えられる国だったはず。政治は政治、文化は文化、だから韓流もここまで定着したと思いますし、人気を得てきたと思うんです。でもこの1年って、そうじゃなかった。嫌韓の意識は韓流ファンにまで及び、日本でもやっぱり、政治的な関係が文化にまで影響を与えることが顕著となりました。背景にはメディアの影響を痛感しますが。状況としては、2010年のKARA上陸前に戻りました。

 では、私の仕事が極端に減ったかというとそうでもないのです。この10年で根付いたサブカルとしての韓流需要は揺るぎません。日本のカルチャーは多様性があって、サブカルでもビジネスが成立する国です。韓流が大好きな層に対する文化の継承という意味では、しっかり定着したことが感じられる1年でした。

▼いずれにせよ、日韓関係が極めて冷え込んでいるのは違いない。この10年で歩み寄ってきた両国のエンタメの距離もまた遠のいた。李明博大統領(当時)の竹島上陸から1年半。日本は安倍晋三総理大臣に、韓国は朴槿恵大統領に、ともにトップが代わったものの、事態は好転の気配を見せず、むしろ不和が露わになるばかりだ。

 「冬ソナ」以前から韓国エンタメを日本に紹介してきた古家氏。かねて日韓の健全なビジネスを呼びかけ、過剰な韓流ブームには危機感を示してきた。しかしながら、互いを煽り合う現状は歓迎しない。

古家 ネット上の言論のなかには、嫌韓機運というのは昔からありました。しかし、韓流ファンがそれ以上により強固なコミュニティを形成していて、そのコミュニティに対して情報発信さえ間違えなければ、政治的な影響ってさほど大きくはなかったわけです。

 ただ、さすがに李明博氏がとった行動・発言は大胆過ぎました。その上で、マスコミの格好のネタになった。特にテレビです。民放もNHKも、それまで日韓間の問題をさほどクローズアップせずに、むしろ韓流を持ち上げていたはずが、一転して韓国バッシングに傾いた。日本メディアのこの変わり様は、私も正直予想していなかったほどで、一般への影響は絶大でした。私もこの流れには、不安を感じましたね。

 とはいえ、朴槿恵氏が新しい大統領に就任するとともに事態は改善に向かうと誰もが思っていたはずなんです。ところが実際は改善どころか、日本叩きがすごいじゃないですか。ただでさえ韓国に対する感情が、韓流ファンのなかでも「どうなの?」となっているとき。政治的な問題にあまり敏感ではなかった日本人の心にさらに火をつけてしまいました。

 正直なところ、韓国そのものが好き、興味があるという日本人ってそんなに多くないと思うんです。韓流が好きだから韓国に関心が向いたという見方の方が正しいはず。文化がつないでくれたのです。その細い糸を、韓国側が内政のためとはいえ、自ら切ってしまう行動をとったのは、とても残念です。

 これまでの経験ある政治家たちって表向き日韓関係をまずくしても、裏でどうにかやってきたはずです。韓国の政治家も日本としっかりコンタクトをとっていた。変わってきたのはこの10年くらいでしょう。韓国も国力がつき、英語に長けた国際的な人材を輩出するようになり、さらに世界トップクラスのインターネット社会を築き、世界に自国の存在感を様々な分野でアピールできるようになった。一方で、日本はかつてほどの勢いはない。そうしたなかで、韓国がちょっと上から目線になっているように受け取らずにいられません。

 興味深いのは、韓流の10年ってネットが力をつけた10年と一致するんです。ネットの力は、韓国の方が日本と比較にならないくらい強いですからね。そういったさまざまな要素が絡み合って、2013年悪い意味で頂点を極めた感じです。

日本国旗.jpg      韓国国旗 

●根本はコンテンツの質の低下 日本に頼りすぎた韓国
▼古家氏は、日韓両国にリップサービスしない。「韓国が死ぬほど好きというわけではない。どちらに肩入れるわけでも、右でも左でもなく、常に客観的に意見してきたし、今後もそうしていく」と冷静なスタンスを崩さない。

 さて、安倍総理と朴槿恵大統領が首脳会談を行い、日韓関係に陽が差せば、また韓流はかつての勢いを取り戻すのだろうか。古家氏はそれに賛同しない。「政治的な問題は大きい」としながらも、韓流失速の根本原因は「コンテンツの質が落ちたから」だと判断する。韓国エンタメの現状はどうだろう。

古家 韓国のエンタメそのものに、かつてのような勢いがなくなっている、失速しているように感じます。まだまだ、表向きはすごく華やかに見えるし、力があるようにも見えるけれど、ほころびが垣間見えるんです。主にK‐POPといわれるジャンルに顕著です。

 そもそもの民族性の違い、徴兵制のあるなしも関係すると思いますが、韓国ってどうしても成果主義です。目の前の状況に対し、とにかく結果重視、短期的に勝負をつけようとするんです。ましてや韓流ビジネスは、日本進出が成功して短期間で大金を稼げると知ってしまって、スピードに拍車がかかった。そういうなかで、この10年突っ走りすぎて、もう余裕がないですよ。

 韓流に政治的な側面は確かに大きい。日韓関係が悪いと地上波テレビでプロモーションしにくくなるなどいろんな問題はあります。でも、じゃあ今のテレビってかつてのような影響力があるのかというと、ないわけです。むしろ、趣味を共有するならネットの方が強いかもしれない。ネットに強固なコミュニティがあれば、嫌韓気運が高まっても、人気は大きく左右されないはず。でも実際に、CDやDVDの売上、イベント集客などが明らかに落ちつつあります。飽きられてきている。コンテンツそのものの質が落ちたからと見るのが正しいでしょう。

 長期的な計画性を持たずに、日本で流行っているから、とにかくそっちの方向をどんどん突き進め!と進んできたアイドル至上主義のツケが来ていると思います。日本に頼り過ぎた感はありますよね。もちろん、それを歓迎してきた日本側にも問題がありますが、気がつけば、一部を除いて焼き増しのようなコンテンツしか生まれなくなったという現状があります。それでは、再浮上は厳しいですね。


■古家正亨(ふるや・まさゆき)

 1974年北海道生まれ。カナダ、韓国へ留学し、2000年に札幌のFMノースウェーブで日本初のK‐POP専門番組を立ち上げる。2004年にはMTV KOREAのJ‐POP番組で日本人として初めてVJデビュー。2008年に韓国観光公社の韓国観光名誉広報大使に任命され、2009年には日本におけるK‐POPの普及に貢献したとして、韓国政府褒章文化体育観光部長官褒章を受章。また、2010年にaT(韓国農水産物流通公社)より韓国農水産物広報大使に任命される。
 ラジオDJ、テレビVJのほか、韓流イベントでMCや通訳を務めること400回以上。一方で、K‐POPレーベル「オールドハウス」を主宰、日韓音楽文化交流コーディネーターとして日韓間の音楽著作権問題に詳しい。K‐POP、韓流関連の著書多数。韓国大衆文化ジャーナリストとして恵泉女学園大学で教鞭もとる。


過去のタイトル一覧

2019年

2月

2018年

1月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 9月│ 11月

2017年

2月│ 4月│ 10月

2016年

2月│ 3月│ 5月│ 9月│ 11月

2015年

1月│ 2月│ 6月│ 7月│ 9月│ 10月│ 12月

2014年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2013年

2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2012年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2011年

1月│ 2月│ 4月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2010年

1月│ 2月│ 3月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 12月

2009年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 9月│ 10月│ 12月

2008年

1月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2007年

2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 7月│ 8月│ 10月│ 11月│ 12月

2006年

4月│ 5月│ 6月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月