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「クランチロール」ジョアン・ヴォガGM、リタ・ワン日本法人社長に聞く

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「クランチロール」ジョアン・ヴォガGM、リタ・ワン日本法人社長に聞く

2019年05月13日

 日本アニメの米動画配信サービス「クランチロール」が、有料会員200万人突破を記念した業界人向けの“感謝の会”を、3月12日にグランドハイアット東京で開催した。当日は、アニメや出版業界などから多数の関係者が詰めかけ、クランチロールへの注目度の高さを窺わせた。また、クランチロールサイドも多くの幹部が来日し、ひらがなで「くらんちろーる」と書いたはっぴを着て鏡開きを行う、純和風な演出で日本のアニメ業界に寄り添う姿勢をアピールした。


スタジオ新設、WB傘下入り

 2006年にクン・ガオ氏がサービスをスタートさせたクランチロールは、当初こそ無断でアニメがアップロードされていたが、2008年に正規の動画配信サービスとして生まれ変わり、米国で着実に日本アニメのファンを取り込んできた。正規サービス開始から約8年後の2017年2月には有料会員が100万人を突破。それから2年ほどで200万人に到達し、加速度的に会員を増やしている。広告付きで鑑賞できる無料会員も4500万人にのぼり、米国を中心としたアジア以外の世界の日本アニメファンが最も利用している動画配信サービスの1つに成長してきた。


パーティーの様子.jpg
パーティーの様子(左よりトニー・ゴンザルベス、トム・ピケット、ジョアン・ヴォガ、リタ・ワン、クン・ガオの各氏)



 事業の成功に伴い、会員数の推移以外にも、着目すべき点が増えている。例えば、米国のバーバンクと、東京の東中野に自社のアニメーションスタジオを設立し、オリジナル作品の製作に着手した。タイトルは未発表だが、近いうちに明らかになる模様だ。

 米ワーナー・ブラザースの傘下に入ったことも見逃せない。「クランチロール」を運営するイレイション社の親会社(オッター・メディア社)が、昨年AT&T社の完全子会社となり、この3月にはグループの一員であるワーナー・ブラザースの直下についた。今後、ワーナーとの連携が始まっていくものと見られる。


米国以外の会員比率増へ

 3月12日に行われた“感謝の会”の直前には、こういったクランチロールの現状や、今後の方針を説明するプレゼンテーションも行われた。

 プレゼンのはじめに登壇したのはイレイション社のトム・ピケットCEOで、「この仕事に4年携わっているが、非常に大きな成功(の過程)を見ている」と事業の順調ぶりを口にした。続いて、創業者のクン・ガオ氏から半年前にバトンを引き継ぎ、クランチロール事業の指揮を執っているジョアン・ヴォガジェネラルマネージャーが登壇。「アニメのオーディエンスをグローバルに広げていくため、皆さんと手を携えていきたい」と客席の業界関係者に協力を呼びかけた。

 ジョアン氏と各事業担当者の説明によれば、現在クランチロールでは、日本で放送される新作アニメの90%ほどを配信中。会員数をさらに伸ばすために、米国以外の会員比率を上げていく考えだという。その方針のもと、8か国語の字幕に対応しており、24の国と地域で支社を設けて各地で会員数の増加に努めている。近年はデータ分析とターゲットマーケティングにも力を入れ、実際に効果が表れているようだ。

 また、動画配信の会員料や広告収入以外のビジネスにも手を広げており、「文豪ストレイドッグス」や「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」などのゲーム、昨年4万5千人を集客した「クランチロールEXPO」などのイベント開催、オンラインストア展開、モバイル端末での配信、電子書籍(漫画)など、360度ビジネスを強く意識している。

 プレゼンには、親会社のオッター・メディア社からもトニー・ゴンザルベスCEOが登壇し、ワーナーのグループに入ったことで「加速した成長が可能となる」とクランチロールへの期待の大きさを表した。その取り組みの一環として、アニメ専門チャンネル「カートゥーンネットワーク」とパートナーシップを結んだことをジョアン氏が報告。今後、より大きな展開が予定されていることを示唆した。

 コアなアニメ好きが集うニッチなサービスから、世界が注視する大きなメディアへと変貌を遂げつつあるクランチロール。感謝の会の後日、ジェネラルマネージャーのジョアン・ヴォガ氏と、日本法人「クランチロール株式会社」のリタ・ワン代表取締役社長が本誌のインタビューに応じ、考えを語った――。


クランチロールインタビュー.jpg
左よりジョアン・ヴォガ氏、リタ・ワン氏



想定より速い200万人突破


――まずは有料会員200万人突破の率直な感想を教えてください。

ジョアン グレイト! とても大きな節目ですし、世界でも、これだけのボリュームを扱っているサービスは多くありません。

――100万人突破まで8年間、それから200万人突破まで2年間と、大幅に有料会員獲得のスピードが速くなっていますが、200万人達成の時期は想定内でしたか。

ジョアン 思っていたよりも速かったです。いくつか理由はあると思いますが、まずは充実したコンテンツです。ここ3年間、非常に注目度の高い、サイマル配信(日本の放送と同日配信)用のタイトルを大量に買い付け、投入してきました。世界のアニメファンにとって、最も充実したラインナップを紹介しています。アメリカを第一次的なマーケットと見ていましたが、ここ1年ほどは世界への展開もより強化してきた成果もあると思います。彼らに向いているコンテンツやマーケティングであるかどうかはもちろん、支払いの方法がそれぞれの地域に合っているかどうかも大切で、そのあたりを精査した効果もあると思います。
 それと、この間のプレゼンでも申し上げた通り、データ分析を活用することで、ユーザーにとって最適な形でサービスを提供できるようになってきたということだと思います。

――アメリカ以外の国で会員数が伸びているところはどこですか。

ジョアン 我々は「国」と「地域」で考えていますが、国では、カナダがとても大きいです。地域では、ラテンアメリカです。ラテンアメリカの中でもブラジル、メキシコは大きいですね。ヨーロッパでは、英国、北欧、ドイツ、フランスなどが弊社にとって大きなマーケットになっています。あと、まだ規模は小さいですが、どんどん成長している新しい市場としてロシアが挙げられます。

――アメリカとその他の国の会員比率は。

ジョアン 現状は、会員の半分以上がアメリカですが、その他の国の比率を上げようと取り組んでいるところです。

――先ほど、支払い方法を精査したのが効果的だったと話されましたが、具体的にはどのようなことでしょうか。

ジョアン 例えば、南米は支払い方法が複雑です。クレジッドカードを所有している人が少なく、プリペイド系のカードで支払いたいという人が多いのです。ですから、プリペイドカードを作るなどして支払いのオプションを増やしました。クレジットカードにしても、ユーザーが利用している地元の銀行と関係を作ることで、支払いをしやすくしてきました。


続きは、文化通信ジャーナル2019年5月号に掲載。

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