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驚きのキャスティング実現『ロマンティック・キラー』製作の舞台裏を今井Pに聞く

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驚きのキャスティング実現『ロマンティック・キラー』製作の舞台裏を今井Pに聞く

2025年12月11日
 東宝配給『ロマンティック・キラー』が12月12日(金)に公開される。上白石萌歌演じる「絶対に恋したくない」女子高生が、魔法使いの策略により次々と投じられる“胸キュン”展開をぶっ飛ばしていくコメディ映画。『ヒロイン失格』や映画『おそ松さん』などを手掛けてきたコメディの旗手・英勉監督がメガホンをとり、少女漫画あるあるや、数々の名作恋愛映画・ドラマを思わせるロマンティックな要素を畳みかけ、上映時間106分を一気に駆け抜ける。

 驚くべきはその出演陣。主人公に急接近する男子3人を、「なにわ男子」の高橋恭平、「INI」の木村柾哉、「FANTASTICS」の中島颯太が演じるという、事務所やグループの垣根を超えた夢のキャスティングが実現。SNSでは各グループのファンからも驚きの声が挙がっている。さらにはテーマソングまで3グループがそれぞれ提供しており、かつてない豪華布陣の映画となった。初プロデュース作品にしてこのプロジェクトの音頭を取った今井翔大プロデューサー(東宝 映画企画部 映画製作室)に製作の舞台裏を聞いた――。


『ロマンティック・キラー』を手掛けた東宝の今井プロデューサー.jpg
東宝の今井プロデューサー


 原作は「少年ジャンプ+」で連載された百世渡による同名漫画。実写化に先駆けて2022年にアニメ化されており、今井Pもアニメをきっかけに原作の魅力を知ったという。「3年ほど前、現在の部署に異動した頃に原作を知り、『こんな面白い漫画があるんです』と会社で話していました。すると、上司でこの作品を一緒にプロデュースすることになる臼井(真之介)から、英勉監督もちょうど『ロマンティック・キラー』を面白いとおっしゃっているということを聞き、紹介してもらったんです。実際にお会いすると、すでに監督は映画化への構想をお持ちで、優れた原作の魅力はそのままに、さらに多くのイケメンを登場させ、恋に落ちるようなシチュエーションを次々に詰め込むという提案をして頂きました」。

 明確なビジョンを持つ監督に加え、『ヒロイン失格』を手掛けた制作会社ダブの宇田川寧、『モエカレはオレンジ色』などの脚本を担当してきた山岡潤平の両氏もプロットの段階から参画し、早々に脚本作りに移った。監督の思いつくアイデアが全部面白かったという今井Pは「あんなにゲラゲラ笑った本打ち(脚本の打ち合わせ)はないというほど、とにかく笑いっぱなしでした。実は上白石萌歌さんにオファーすると、もう目を輝かせて『すぐにやろうと思いました!』とすごく喜んで頂けて、こちらも嬉しかったです」と脚本の段階から大いに期待が高まっていたことを述懐する。

 上白石萌歌は『3D彼女 リアルガール』で英監督作品に出演している。近年は『366日』や『パリピ孔明 THE MOVIE』といった話題作への出演が続いているが、実は本格的なコメディ映画に主演するのは今回が初。「僕らの想いとしては、上白石萌歌さんにコメディエンヌとしての新境地を拓いてもらいたいと思っていました。ここまで振り切ったキャラクターを演じられたことはなかったと思うのですが、見事にやり遂げてくださいました」と大車輪の主演女優に今井Pも感服の表情を見せる。

 そして、何と言っても気になるのは、3大ボーイズグループから主要キャストを一人ずつ起用したその内幕だ。ウルトラCとも言えるキャスティングだが、今井Pは大前提として今作を「お祭りにしたかった」と狙いを語る。「絶対に恋したくない女子高生・杏子の前に次々とカッコいい男子が現れて、みんながアプローチしてくるという、お祭り騒ぎの話です。それなら、キャスティングも楽曲も、お祭りにしたいという想いを当初から強く持っていました」。

 そこで、人気の高いボーイズグループから一人ずつ出演してもらうという、お祭り映画ならではのコンセプトを打ち出し、各事務所にオファー。その結果、キャラクターのイメージに合った高橋恭平、木村柾哉、中島颯太の出演が決定した。当代屈指のグループのメンバーが集うだけに、事務所サイドが難色を示しても不思議はなさそうだが、今井Pは「皆さんすぐに好意的なリアクションを頂けたんです」と内実を明かす。別のグループのファンにも触れてもらえる機会が生まれることを各事務所とも好意的に捉えており、作品を盛り上げるために楽曲面でも積極的な協力を得られたという。「以前なら実現は難しかったかもしれませんが、今の時代なら、こういう映画があってもいいのではと思っていました。このお祭りに皆さんに乗って頂き、本当にありがたかったです」と感謝の意を述べる。

 マスコミ試写の評判は上々だ。試写室から漏れてくる笑い声に、今井Pも手応えを感じているという。女性はもとより、男性からの評価も高く、上の世代も爆笑しながら楽しんでおり、老若男女幅広く受け入れられる作品のようだ。実は同作には、自分だけの世界から一歩外に踏み出し、様々な人と出会うことの素晴らしさも描かれている。これは原作に通底するメッセージ性であり、実写化においても脚本作りから強く意識していた点だと今井Pは説明する。一方で「そうは言ってもまずは肩肘張らずに、頭を空っぽにして、年末年始に楽しんでもらいたいと思って作った映画です」ともアピール。目指すのは英勉監督の代表作の一つ『ヒロイン失格』を上回る大ヒットだという。異色のお祭り映画が“ロマンティック”に正月興行で旋風を巻き起こす。


取材・文 平池由典

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