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トップインタビュー:加藤鉄也東芝エンタテインメント(株)代表取締役社長

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トップインタビュー:加藤鉄也東芝エンタテインメント(株)代表取締役社長

2006年10月02日
洋画だけでは経営不可能

――東芝に限らず、インディペンデントの配給会社が、洋画だけで会社を回していくことは出来ませんか。

加藤 洋画配給だけでは、経営が成り立たないでしょうね。洋画だけでやっていくとしたら、無理やり買い付けてしまいますから。後ほどお話しますが、コンテンツのジャンルの拡大、事業の多角化で、配給のリスクをヘッジしなければなりません。

――厳選して買い付けた洋画とは、どんな作品でしょうか。07年以降のラインナップに反映されますか。

加藤 とにかく特徴のある作品を持ってきています。ケネス・ブラナー監督の「魔笛」が良い例です。この映画はモーツァルトの歌劇をもとに映画化する作品ですが、脚本段階で買って、どんな映画が完成するのか見当もつかないですね。下手すればゲテモノかもしれない、だけど何か尖ったものがありそうな予感もする。昨年のAFMで買い付けましたが、他社は恐くて手が出せない状況で、それほど競り合いにならずに買うことができました。洋画の買い付けは、そういうポテンシャルに賭けていくしかないと思っています。どんな作品が出来上がるのかというリスクより、競り合ってオーバープライスになるリスクの方が大きいと僕は思ったわけです。大化けするポテンシャルがあるという作品を、安く買って来る方が夢があると思うんですよ。渡辺謙が主演する「ア・ドリーム・オブ・レッド・マンション(原題)」も然りですね。


邦画の製作・配給に本腰

――洋画配給を見直す一方で、邦画に製作から関わっていくと聞いています。

加藤 嵐の松本潤主演の「僕は妹に恋をする」は当社が製作幹事で、企画から立ち上げました。来年1月下旬、正月第2弾作品として恵比寿ガーデンシネマ他で公開します。大友克洋監督の「蟲師」は今年のベネチア国際映画祭のコンペ出品でも話題となっていますが、当社は一部出資を行い、配給を手掛けます。来年春休み、渋谷東急系で全国公開します。舞台を映画化する「キサラギ」は7月末に東映の大泉撮影所でクランクインし、来年春に公開します。まだ発表はできませんが、他に3本くらい企画が進んでいます。


――ミコット・エンド・バサラと共同で複数の企画を進めていると聞きました。

加藤 「キサラギ」がその1本です。ミコット・エンド・バサラとは、昨年受託配給した「8月のクリスマス」からの縁です。他の制作会社とも色々な企画を検討していますが、残念ながらまだ発表できる段階にまで至っていません。


――これまで洋画が中心だった配給会社が、邦画の製作・配給に参入するケースが増えています。邦画製作もリスクが高いのではないですか。

加藤 やはり洋画と比べると、邦画はリスクが小さいので、同じ額の予算を投下するとしても、邦画に使った方が有効だと考えています。まず今の日本のマーケット自体が、ベースとして邦画が強い傾向にある。そして原権利が得られ、海外に売る販路もある。いわゆるクリエイティブコントロールで、我々も色々と意見を言えるので、とんでもない作品になるリスクも少ない。こういったことを考えた場合に、やはり邦画の方が絶対に得である、リスクの少ない事業であると言えます。
「僕は妹に恋をする」はたまたま製作幹事ですが、出資比率にはこだわりません。邦画はみんなで盛り上げていくこと、つまりパートナーが必要なんです。だから広がりが出るようなパートナーとの座組みを組むことが大原則。座組みができた段階で、当社が一番多く出資することもあれば、出資はゼロで受託配給の場合もあります。その時々のベストの形で、邦画のプロジェクトに参加できればと思っています。
ただし配給はやりたいですね、この3年間で当社が身に着けた一番大きな力は配給力ですから。邦画3社のようにチェーンにかける配給力というよりも、単館拡大、ミニチェーンというフリーブッキングで100館、150館に広げる配給力を付けてきました。



(全文は月刊誌「文化通信ジャーナル」2006年9月号に掲載)

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