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トップインタビュー:宇野康秀(株)ギャガ・コミュニケーションズ代取社長兼最高執行役員

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トップインタビュー:宇野康秀(株)ギャガ・コミュニケーションズ代取社長兼最高執行役員

2006年12月05日
――そうすると、当面は興行結果に左右されずに作り続けていくということでしょうか。

宇野 とは言え、極端にはずし続けてしまうと、一旦縮小しながらとか、そういうことも考えなければいけないのかもしれません。ただ、いずれにしても短期間で結論を出して、諦めるつもりはありません。そういう意味で、3年、5年というレンジになってくるんだろうなと思います。
 河井(信哉プロデューサー)さんについてはご存知の通り、有名なプロデューサーであり、当てなければいけないというような意識が当然、ヒットメーカーとしてのプレッシャーが相当あったと思いますので、そういった意味で、いくつかの数をちゃんと出していくと、一発で、百発百中で当てて下さいというのはなかなか難しい話だと思います。そういう考えの中で、一旦5、6本同時に動かしたことが、会社全体で動き出すことのいい流れになったのかなと。邦画の年間総投資額は、これも企画次第だと思っています。当然、小さいローバジェット作品と、かなり大型の作品で一本当たりいくらというのも幅がありますので、何本でいくら以内に抑えようというのはないですね。幸い「総合コンテンツファンド」(総額300億円で国内最大級)の方も組成されていますので、こちらの資金や、通常の資金であったりと、資金的にはある程度の調整はできる体制は整えられていると思っています。


メジャースタジオの定義

――目指されている「メジャースタジオ」とは、「映画を製作し、かつ配給も行い、様々なメディアへの影響力を持ち、それらメディアを販売手段や宣伝媒体として活用していく機能を持った、総合的な映画会社」と定義されていますが、将来的に〝撮影所〟を持とうという気持ちはありませんか。

宇野 正直、興味はあります。現場の匂いは嫌いではないので、そこにいろんな情報も集まりますし、そういう意味で撮影所を持つ意味はあるのかなと思いますが、絶対必要だとは思っていません。いわゆる〝メジャースタジオ〟のスタジオ機能という意味合いですので、必ずしも自社保有する必要はないと思っています。

――今年3月に自社運営劇場「シネマGAGA!」をオープンしましたが、今後も劇場を増やしていこうという考えはありますか。

宇野 今のところ我々単独で、増やしていくというのは考えていないです。基本的には、チェーンマスターさんにお願いしてやっていきます。大型の作品はこの形をとり、同業者さんとどう親しく連携をとっていくかということが重要なテーマになってきますので、シネマGAGA!を頭にして、いわゆる単館拡大していくことは、いくつかのパターンの映画に関してということだと思います。全部それにしていこうという考えはありません。

――9月に組織変更を行い、企画編成本部、営業本部、宣伝本部、管理本部の4本部制を採用、「プロジェクト・マネージャー制度」を徹底していく組織にされましたが、この「プロジェクト・マネージャー制度」とはどういうものなのでしょうか。

宇野 この前の臨時株主総会の時に「プロジェクト・マネージャー制度」の話をしたら、株主さんから「今までなかった方がおかしいだろう」というご意見も頂きました。私もまったくその通りだと思っておりまして、元来、作品の収支を見て、プランをするような責任者というのは絶対いるべきだと思っています。これまでのGAGAはいわば「縦軸型の組織」でした。それを「横軸型の組織」、つまり作品ごとに責任を持ったプロジェクト・マネージャーが全てを統括する考えを導入しました。私が来た時も当初からそれを導入したいと思っていたので、ようやく実現したという感じです。


コントロールが目的

――05年から本格的にDVD/ビデオの自社発売機能の強化を進めてきましたが、今年8月1日に自社販売部門も設立されましたね。DVD市場はまだまだ拡大する余地はあるとの考えでやられるのですか。

宇野 全体としてDVD市場が大きく伸びた時期からは落ち着いていますね。我々は今までDVD・ビデオ化権を割りといい値段でライセンス出来ていたというか、販売出来てしまっていたということで、結果的にはビデオメーカーさんにご迷惑をかけたような作品もあったと思っています。ですから、そういうものが自社販売を始めたからといって、急に売上げが伸びるかというとそうではないですね。むしろまず我々が自社でやることにしたのは、DVD・ビデオ化権の変動要素をもっと自分の中に抱えていって、そこで適正な商売をしていくと、それによって自分たちの収益に対して冷静な判断をしつつ、コントロールしていくことが目的なんです。DVDの売上げが一気に増えるからこれをやるんだというのとはちょっと考え方が違います。
 ただ、パッケージのビジネスということでいうと、今のDVDもそうですし、これからダウンロード型のパッケージといいますか、ノンパッケージという言い方もしたりしますが、そういうようなウィンドウも大きく成長してくるだろうと思っていますので、自社でパッケージ販売機能を持つことで、どこでどういうタイミングで、どういうやり方をするかということが自由に出来るようになると、それによって商売の機会はかなり広まると思っています。自社販売第1弾作品は「バックダンサーズ!」です。


社会に意義ある会社

――宇野さんに「大好きな映画を仕事にしてやっていこう」と決意させたものとはいったいなんだったのでしょうか。

宇野 やはり社員たちということになるんでしょうか。一生懸命やっている姿を見ると、私もより一生懸命やっていかなければならないと思ったのが一番大きいですね。映画に、その他のエンターテインメントにもそうですが、異業種が参入してきて、悪い言い方ですけど、片手間でお金だけ出して、あとは上手くやっておいてということでは絶対上手くいかないと思っています。そういう意味ではやはり真剣に取り組んでいかなくてはいけないと考えておりました。しっかり実り、形になるまである程度時間もかかるだろうと思っています。もう一つはやはりやっていて、自分は映画が好きなんだなと単純に思っているところがありますね。


宇野康秀 (うの・やすひで)
1963年、大阪府生まれ。88年に明治学院大学法学部法学科卒業後、(株)リクルートコスモスに入社。翌年には人材ビジネス会社の(株)インテリジェンスを設立し、代表取締役社長に就任。そして、98年には父親の跡を継ぎ、有線ブロードネットワークス(現USEN、01年4月25日に大証ヘラクレスへ上場)の代表取締役社長に就任する。04年にギャガ・コミュニケーションズを子会社化、それに伴い代表取締役社長も兼務。その他、インテリジェンス取締役会長、(株)BMB取締役、(株)UCOM代表取締役会長、(株)ライブドア取締役、(株)アルメックス取締役副会長を兼任している。学生時代より大の映画好きであり、好きな邦画はATG作品から「私をスキーに連れてって」(87年)までと幅広い。

(全文は月刊誌「文化通信ジャーナル」2006年11月号に掲載)



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