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トップインタビュー:佐藤直樹日活(株)代表取締役社長

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トップインタビュー:佐藤直樹日活(株)代表取締役社長

2008年12月26日
コンテンツファクトリー

――その経営方針変更の特別なキャッチフレーズはあるのですか。

佐藤 そもそも考え方が一緒なのですが、「コンテンツ・ファクトリー構想」ということで、(1)ものを作る川上に経営資源をシフトする(2)プロダクツ・ナンバーワンを目指す│という話を従業員にはしました。その中で明確に思っていることは、映画や隣接するテレビを含めた映像エンタテインメントのコンテンツ・ファクトリーですね。ここで日活が、しっかりとキラー・コンテンツを生み出し世の中の配給会社や興行会社、テレビ局、広告代理店、出版社等が認めてくれれば、僕たちの商売もどんどん拡大していくだろうと思っています。

――「デスノート」「L change the WorLd」に続くプロダクツの作品はあるのですか。

佐藤 はい。同じようなスキームのメンバーとお話しているタイトルはあります。

――日活とデスペラード(代表取締役:石田雄治)は、どういう経緯で「ブタがいた教室」を制作したジャンゴ・フィルムを設立されたんですか。川上の強化ということがあると思いますが。

佐藤 うちはもう一つ、連結対象会社ではないのですが、「奈緒子」を製作したIMJエンタテインメント(代表取締役:久保田修)とも会社を一つ持っています。面白いプロデューサーといろいろな仕事をしていきたいということなんです。そのために、〝場〟を作った方がやりやすいという、非常にシンプルな発想です。フリーのプロデューサーからしたら、1本1本企画を日活に持ってきてやり取りするよりも、安心感があると思うんです。「あなたと一緒に仕事をするために、僕は証拠として撮影所の中に会社を作ったよ」ということですね。この会社は、日活ではなくて製作に特化した部隊――ここは一定の自由を持っていて、日活以外のどの映画会社と仕事をしてもいいんです。

――ジャンゴ・フィルムは出資はせずに、あくまで現場制作ということですか。

佐藤 そうです。将来的にはあるかもしれませんが、あくまで現状では制作プロダクションです。日活の製作部門の機能を強化するという経営の一環です。ジャンゴ・フィルムが発足したことで、例えば日活が出資していない「トウキョウソナタ」(08・9)という黒沢組のタイトルを制作したり、いろいろなタイトルの制作がしやすくなったのです。僕が日活でプロデューサー・チームに対して要求していることがあります。一つは収益の構造として投資をしてリターンを得る。二つ目はプロダクションとして収益を上げる。三つ目はメーカーの機能を提供して、ディストリビュートしてフィーを頂戴する――この三つのうち、僕が言っていることは一つだけでは駄目だと。投資だけだったら銀行がやる。メーカーとしては、例えばビデオ・メーカーさんでも営業の権利だけ取るということをしています。この三つのうち、二つはクリアしてくださいということを日活のプロデューサー・チームには要求しています。ただ、ジャンゴはプロダクションだけでいいのです。

――ジャンゴ・フィルムの今後のタイトルは何本ぐらいあるのですか。

佐藤 いまお話した現在公開中の「ブタがいた教室」「トウキョウソナタ」に続く第3弾として奥田英朗原作を映画化した「ララピポ」(監督宮野雅之/成宮寛貴主演/09年正月第2弾シネクイント、シネ・リーブル池袋ほか)があります。そして08年から09年にかけて新作を立て続けにクランクインしていきます。その中には映画ではないのですが、WOWOWさんの“ドラマW”という2時間ドラマも入っています。先ほどジャンゴ・フィルムは制作プロダクションという話をしましたが、要は企画を組み立てる会社なのです。制作プロダクションというよりは、企画会社といった方がいいでしょうね。デスペラードやIMJエンタテインメントと組んだり、そのほかのいろいろなインディーズのフィルムメーカーの人たちと、積極的に橋頭堡を築いていきたいなと思っています。

――そこにさらにもう1社加わるということもありますか。

佐藤 1人か2人が入る可能性はあると思います。

――また新たな会社を立ち上げますか。

佐藤 作るかもしれません。もしかするとそれは提携ということで、新たな箱を作るということではないかもしれません。いずれにしろ、こういったことは積極的に進めていこうと考えています。

――具体的なお名前は出せないのですか。

佐藤 ええ、決定しているわけではありませんので。年内ぐらいにはほぼ目安がついてくると思っています。いずれにしろ、作ることですね。リスク・コントロールしながら映画を作り続けることです。ボラティリティが高いと言われますね。「映画は博打だ」「幅があるよね」――僕はそう思ってないんですが、今回、言われるようなことになったわけです。前期の決算で…。

――収益が前々期に比べて下がったということですが赤字になったわけではないですよね。

佐藤 黒字です。「ネガティブー」「奈緒子」「うた魂♪」と3連敗して、なおかつプロダクションの部門でちょっと痛いことがあり、興行も残念ながら赤字だったんですが、それでも黒字。そこまで日活は来ましたね。この3年で……。これだけボコボコの状況があっても、安定的な収益を上げる部門を擁していることによって、日活として黒字で経営を維持できる。そういう状況まで日活は強くなったのかなという手応えを感じています。
 
佐藤直樹社長プロフィール
1963年3月21日生まれ、北海道函館市出身。日本大学文理学部卒。86年JAVN(ジャパンオーディオ ヴィジュアルネットワーク)入社。88年東京ケーブル・プロダクション入社、90年大映入社。02年角川大映映画転籍(大映営業権譲渡に伴い)。04年角川映画企画製作本部企画製作グループ部長、05年角川映画取締役企画製作本部担当、05年11月1日 日活社長就任。


(全文は文化通信ジャーナル08年12月号に掲載)

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