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トップインタビュー:広瀬道貞(社)日本民間放送連盟会長

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トップインタビュー:広瀬道貞(社)日本民間放送連盟会長

2009年02月23日
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負ける理由がない

広瀬 しかし、テレビの場合は、視聴率争いをずっとやってきているし、そうした体質強化は特に在京キー局の場合はほぼ出来ている。なので、インターネットに負ける理由がない。例えば、エンターテイメントの番組を作るとなると、過去の経営資源がなければ出来ない。そういうノウハウの蓄積があるのは放送局だけであって、インターネット事業者が1日中、新しいものを出せるはずがない。その辺から見ても、放送局は中身が強く、無料放送で視聴できるなど、3つも4つも条件がいい。よくインターネットに影響されているとか云われるが、なんで負けなくてはいけないのか。インターネット広告費は伸びているけれども、パイが小さいから伸びているんだ。
昨年の北京五輪で、我々はインターネットで大きな実験をした。プレゼントキャストのサイト「ドガッチ」を通じて、ほとんどの種目をパソコンで視聴できるようにした。しかしパソコンで見ようという人はほとんどいなかった。

【(社)日本民間放送連盟会長 広瀬道貞氏の略歴】
昭和9年11月12日生。74歳。大分県出身。
昭和33年慶大法学部卒、同年朝日新聞社入社、平成5年同社取締役名古屋本社代表、同6年同社常務大阪本社代表、同8年同社専務大阪本社代表、同9年同社代表取締役専務、同10年テレビ朝日代表取締役副社長、同11年同社代表取締役社長、同17年同社代表取締役会長、同18年4月民放連会長(現任)、同19年テレビ朝日取締役会長、同20年6月テレビ朝日取締役相談役(現任)。
 深刻な状況ではない

―― しかし、この不況で地方局の経営は深刻なのでは。

広瀬 今年の正月に地方局の経営者に随分会う機会があって、東北や九州の放送局に「大変でしょう」と言うと、彼らは「世界不況と言われているけれども、自分たちにはそれほど届いていない」と話している。全国的に深刻にはなっていないんだよ。好景気の時もその恩恵を受けていないが、いまの状況も格別悪くなっていないと言う。良さも悪さもそうすぐには響いていないようなんだね。羨ましいというか。

 ―― ちょっと意外な感じですね。

広瀬 我々の感じだと、キー局がこんなに苦しいんだから地方局はもっと苦しいだろうと思うが、そうでもないらしい。度合が違うようだね。決算を見ても、大きな広告被害を受けているのは東京局や大阪局。大阪はいい時はワッといくが、悪い時は相当に落ち込む。浮沈が激しいのかもしれない。地方への影響にタイムラグもあると考えられそうだが、それなら良い時があってもいいが、好景気の時もそんなにいい話をあまり聞かないわけだから、やはり不況の影響をそれほど受けていないのでは。

 ―― しかし、世間的には不況ムードは蔓延していますよね。

広瀬 非常に目立つ大手の企業が大幅なリストラなどを実施して、あそこがやるのならば、うちも自粛しなくてはいけないとかいう気持ちが出てくることはあると思うが、いずれにしても、突破口を見出して欲しい。私たちもそれを期待している。
この不況も、誰か一部の人が、他人の苦労を糧にどんどん栄えていくようであれば、腹が立つだろうが、ある意味、皆平等でもある。景気が循環するということであるならば、深刻な状況ではないと思う。いまは痛みを分けて、皆が1歩2歩下がって辛抱する時だろう。もちろん、弱いものには最低限の保障を受けられる形が出来るのが望ましい。少なくとも他のメディアと比べて、テレビが悲惨な状況になるかというと、それはない。一番先に起き上がるよ。

 ―― 「痛みを分ける」というのはあの小泉元首相も言ってましたね(笑)。しかし、キー局も軒並み減収し、制作費も削減する方向にある。多い所では年間100億円以上の削減を見込んでいる。100億円と言えばキー1局の制作費の7~10%にあたるでしょうか、大変に大きい。

広瀬 たしかに、各社制作予算をカットしつつあるが、一方で視聴率競争の中で乗り越えていくためには限度がある。過去の素材を活用して、ある資源を新しい企画に投下するということもある。米国でも過去に成功したものを流すということがある。ただ、日本はその点、新しいものを出すという心意気は全然変わっていないと思う。制作の効率化を図っていけばいい。

(全文は月刊誌「文化通信ジャーナル」09年2月号に掲載)

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