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トップインタビュー:星野有香(株)ギャガ・コミュニケーションズ代表取締役社長

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トップインタビュー:星野有香(株)ギャガ・コミュニケーションズ代表取締役社長

2009年05月29日
本誌 入社されて12年、宣伝からミニシアターの方を中心にやってこられた星野さんにとって「映画宣伝」とは―。

星野 私にとっては天職というか、すごく大好きな仕事です。私は元々そんなに映画ファンではないのですが、映画宣伝のポリシーというのは、年に3~4回映画に行くライト・ユーザーが見たくなるような映画は何だろうということを、どう考えるかということですよね。あくまでも映画は衣食住ではない。だからこそ、対象となる個人に向けて、なくてはならないものにどうしたらなるんだろうかということを考える作業なんです。その映画が必要となる人は誰だろうかを考えて、その人に向けてどういうことをやったらいいのかを考える作業。だから、非常に楽しいです。元々宣伝が好きなんですよ。広告にとても興味があったので。私が宣伝マンとしてヒットを出すことができたのは、“一般のお客様の目線”をずっと持ち続けているからだと思うんです。業界の中にこれだけいて、あまり業界ずれできていない(笑)。

危機の時に凄い力を発揮

本誌 ご自分にとっても、ギャガにとっても、ポイントになった作品はなんですか。

星野 私にとって最初にポイントとなった作品は、やっぱりペドロ・アルモドバル監督の「オール・アバウト・マイ・マザー」ですね。Gシネマ・グループを99年10月に立ち上げた当時、「バッファロー’66」をキネティックさんが配給されて大成功されましたが、元々はギャガが買い付けたのに配給・宣伝を外部にお願いしたのです。それをきっかけに、じゃあギャガの中でもアート系作品のチームをつくったらどうかと、できた部署が私の部署。私と永田愛の2人だけの社員と、いま宣伝部長になっている松下剛が慶応の大学生のアルバイトでした。業界的には「そんなの出来るの?」という形のスタートでしたが、00年4月に公開した「オール・アバウト~」が大成功するわけです。

 その後もいい作品をいい形でやらせて頂きました。次のターニング・ポイントは、「ボウリング・フォー・コロンバイン」。あの当時、まだマイケル・ムーア監督も無名だったので、ドキュメンタリー映画のブームを作れたのは、凄い良かったなと思っています。その次は「チョコレート」とアート系作品のヒットが続き、部署も大きくなり、後にチェーンの作品も担当するようになりました。

 その次の転機は、USENグループに入った頃かなと。04年11月にUSENグループになり、翌年すぐ「オペラ座の怪人」「Shall We Dance?」「私の頭の中の消しゴム」と大きなヒットを出すことができて、その年165億円のギャガの歴代最高興収をあげました。なにしろ危機の時に凄い力を発揮する会社なんですね、ギャガは(笑)。サプライズを起こすということが信条だと思っているのですが、みなさんに心配される頃に、何らかのヒットを出していく――それがギャガの面白いところじゃないかなと思いますし、そういう会社であり続けたいなと思います。
 
 実は去年も、4月に買付・製作機能を分社化すると発表して、かなり心配されたんですが、その発表があった後のカンヌ映画祭の時に、「スラムドッグ$ミリオネア」を当時の国際部長の小竹里美(現・ユーズフィルム)が買い付けをしています。かつ去年はドキュメンタリーの「アース」(興収24億円)の大ヒット、そして配給委託の邦画の大作「クライマーズ・ハイ」(11・9億円)もあり、松竹さんとご一緒させて頂いた「ライラの冒険/黄金の羅針盤」も興収38億円と、もちろん買値を考えるとどうかというのはありながらも、去年の洋画のトップ10の4位に入って、非常にいい数字になりました。去年の発表でギャガは77億円という年間興収になっていますが、「ライラの冒険」と「クライマーズ・ハイ」を入れれば、130億円弱です。創業以来、二番目に大きな興行収入となりました。

 「スラムドッグ~」なんて、「何でギャガがあの発表のあとに買ってるの!?」と、本当に大きなサプライズだと思います。

本誌 数々の荒波、星野さんを含めたスタッフの方たちも本当に大変だったと思いますが…。

星野 やっぱり映画の会社なので、ヒットが出ないと元気がなくなるわけですよ。ところが、いい意味で所々ちゃんとヒットがある。昨年は「アース」も「ライラの冒険」はもちろん、「ランボー 最後の戦場」も10億円の興収になり、「セックス・アンド・ザ・シティ」(18億円)、邦画「僕たちと駐在さんの700日戦争」(3億円)も長く愛される作品となりました。いろんな危機はもちろんありましたが、そういうことで乗り越えていけたんじゃないかなと思います。今年も年明けに「チェ」二部作(日活共同配給)を公開し、その後にベルリン映画祭があって、海外の権利元から、「アート系の二部作を、2つ合わせて13億円近く、本当によくやった」と褒めて頂きました。

優等生集団にならない

本誌 ギャガ宣伝のDNAを伝えていき、さらに新しいことに挑戦していく、マネージメントの仕事も増え、若いスタッフを育てる時に心がけたことは。

星野 なるべくそれぞれのスタッフが、自分が面白いと思うことを自由にやらせるということですかね。私は元々どういうプロデューサーかというと、自分と違うタイプの人間、自分と違う才能や、自分と違う発想を持つ人たちの良さを、どう引き出せるかが一番大事だと思っています。年齢も違い、趣味も違うメンバーが、面白がって「こういう企画でやりたい」というのを、自由にやらせます。

※全文は「文化通信ジャーナル09年4月号」に掲載

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