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トップインタビュー:豊島雅郎アスミック・エース エンタテインメント代表取締役社長

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トップインタビュー:豊島雅郎アスミック・エース エンタテインメント代表取締役社長

2007年06月12日



―邦画ラインナップを見ると、シネマ・インヴェストメント、IMJ‐E、ジェイ・ストームとのコラボが目立ちますが、ROBOTとの初コラボが注目ですね。

豊島 今回の企画はシネマ・インヴェストメントさん、IMJ‐Eさん、ジェイ・ストームさんを核にやって行きたいと思っていますが、他にも一緒にやって下さる勢いのいいプロダクションともお付き合いしていきたい。ROBOTさんとは間接的に「逆境ナイン」という作品でお世話になっていますが、アタマからがっちりというのは初めてです。一個仕事が生まれれば、IMJ‐Eさん、ジェイ・ストームさんも前からやっていてどんどん続いていますが、本当に付き合っているうちに化学反応というか、人が人を呼ぶじゃないですけど、もっとネットワークが増えていって欲しいと思います。

―ROBOTとの作品はバジェットが大きいものになりますか。

豊島 恐らく製作費2~3億円レベルじゃないでしょうか。いきなりフジテレビさんとやられている5~10億円みたいな規模ではありません。ただ、「忍びの城」は10億円以上を見積もっていて、最近の邦画では「日本沈没」「どろろ」等と同様の規模になります。正直そういう作品をやって大丈夫かというのがありますが、既に面白いクリエイター、役者さんが賛同してくれていて、10億円クラスの作品でもGOを出してもいいくらい、外堀は埋まりつつあり、早ければ08年後半に撮影予定です。

―それから「ハイブリッド」というのを打ち出されましたが。

豊島 新しいレーベル、製作の延長線上と取ってもらって構わないんですけど、一応海外との資本的ないしはクリエイティブな部分で、コラボというのをこれからもう少し積極的にやっていこうというものです。これは昨今、「ラストサムライ」(ワーナー・ブラザース映画配給)とか「硫黄島からの手紙」(同)が当たり、「バベル」(ギャガ・コミュニケーションズ)などハリウッド絡みでも日本人が出て、日本・東京が舞台になっているものが注目を集めています。世界的にもジャパン・カルチャーが注目されていますよね。ファッション、文学、建築、アニメ・ゲーム、それから衣食住と、日本人が思っている以上に注目されています。ですからもっと日本の文化で誇れるものを海外に商売として輸出していくことが、これからますます盛んになっていくと思います。そういう意味で、ハイブリッドというレーベルを立ち上げて、海外の方々ともお金だけではなく、クリエイティブな面でもコラボして、アスミックAらしい切り口でやっていきたい。第1弾「シルク」以降の企画も動いていて、アスミックA主導でやるもの、いきなり背伸びではありますが、日本の原作を海外のクリエイターと一緒に実写でやるっていうことを目論んでいます。これからは実写の面でもインターナショナルで、商業映画として、きっちりとまずはビジネスになる映画をやりたいし、それが出来るんじゃないかなと思っています。ハイブリッドの新作企画に関しては年度内、来年の3月までには発表する予定です。


ドリームワークス作品


―洋画は本数を絞り込んでということですが、「ウォー」(原題)を東映系で公開することになった経緯は。

豊島 過去に東映さんもギャガさんと「マスク」なんかをやったりしていますし、うちも東映さんとご一緒できればと思っていました。今後も面白いから一緒にやろうと言って頂ければ、洋画、邦画で年一本くらいはご一緒できたらと思っています。そういう意味で我々としてもエポックですし、逆に一本目なので、やっぱり実績を出さなければいけない。これに関してはウチから持って行きました。日系ヤクザと中国系マフィアの抗争にFBIが絡むという話なので、作品的にも東映さん風なハイブリッドではないかと。ウチとしてもハイブリッド的なアプローチで洋画というところでご一緒してもいいのではないかという自然な発想でした。今のところ営業を東映さん、ウチが宣伝をやります。

―ドリームワークス作品は、「シュレック3」が最後ですね。

豊島 基本的には角川グループホールディングスさんがドリームワークスさんに出資し、その見返りとして映画・DVDの国内配給の窓口に角川エンタテインメントがなっているというような形で、そこからウチは再委託されてこれまでやっていたのですが、角川映画で配給出来る体制も整ったので、そちらが主体になってやっていくというのが自然の流れだと思います。ウチとしては、今までドリームワークス作品に投入してきたエネルギーを今後は製作、ハイブリッド、買付け、ヨーロッパ・コープ作品に投入します。

―ヨーロッパ・コープ作品は今後も配給していくことになったのですね。

豊島 5年という契約期限でしたが、この4月で丸5年経ちまして、また更新する方向で話を進めています。但し、お互いに発展的な取組みをしていこうと。第二期においてはもう少し日本で市場性があるもの、もう一つは第一期で出来なかったクリエイティブな面でのコラボももっとやっていきたいということを先方と話し合って調整しています。例えば、東京を舞台にした「TAXi」シリーズの最新作や、フランスで人気の1970年代の日本のTVアニメのCGアニメ化ないしは実写化などを彼らと一緒にやっていけたらいいなと思っています。年数は決めていませんが、契約を更新しようと考えています。


新しいビジネスモデル


―アニメ、TV/DVDオリジナルコンテンツが、今後収益の大きな柱になっていきますか。

豊島 コンテンツを作って権利を確保していかないと多分これからの配信時代に生き残ってはいけません。家庭のTV受像機が2011年に完全デジタルになる時には、ビジネスモデルが非常に違ってくると物凄く感じていまして、その時に拠り所としてあるのは自分たちが、いろんな汎用性のある、運用する権利を持っているかいないかというのが重要です。映画は映画で続けていきますが、やはり映画は重たい。それはリッチコンテンツとして一つ素敵なことではあるんですけど、もう少し軽いもの、そこにお客さんが見えるものにも力を注いでいきたい。これからコンテンツはマスを相手にするものか、少ない人数なんですけど、確実に千人、1万人いるという熱狂的なお客さんに向けて提供していかないと商売として難しいのではないでしょうか。凡庸としたミドルクラスの、なんとなくS級作品の二番煎じみたいな作品は、既に通用しなくなってきています。特に独立系の輸入・配給会社の中庸な作品は厳しいし、あとメジャーさんだってアメリカでは受けるけど日本では市場性が劣るという作品で苦戦しているので、今後ますますそういう風になっていくと思っています。
 ですからウチとしては、まず確実に千人、1万人いる、それをもっと拡大して10万人くらいいるお客さんに向けてやっていきたい。マスの対極にある確実なものをいかにやっていくかということだと思っています。それを出来れば100万人くらいに向けたものにまでもっていきたいですね。映画でいえば興収10億円規模になりますので、その辺のレベルにもっていきたいと思っています。

―そこが新しい豊島カラーということになるのでしょうか。

豊島 そうですね、実はそういうのをビジネスモデルにした新しい事業というのをやっていきたいとは考えています。例えば電通さんはTV局、マスメディアを押さえてあそこまで大きい企業になったと思うんですけども、我々はソフトを押さえてビジネスをするというようなことをやっていきたい。それはグーグルとか最近の新しいIT関係のビジネスモデルは、興味がある人たちに対して、その人たちが好むであろう広告というのをダイレクトにぶつけることでやっているじゃないですか、我々は映像製作の中で、この映像に興味がある人に向けてやっていきたいと思っています。ここまで言ってしまうともう大体考えていることは漠然とお分かり頂けると思うんですけどね(笑)。
 自分たちが作る作品以外でも、いまネットワークが出来ているので、もしかしたら呼び方はわからないですけど、それはコンサルタント的な仕事かもしれない。ウチは映画・映像が好きな人間が多いので、ビジネスとして、ウチのスタッフが持っている知識をもう少し違う方面で活用できるようにやっていきたいのです。2011年の完全デジタル化、家庭のディスプレイが全部デジタルになれば、一台でテレビ、インターネットも何でも全て出来るようになります。その時代に向けた当社の事業方針は、既に社内にはアナウンスはしています。外部にも徐々にそういう話をしていって、そういう仕事だったら興味あるという人を募っていこうと思っています。
 製作に力を入れればいろんなクリエイターが集まってくるので、もっとそのクリエイターが持っているアイデアを活かして、きちんと商売が出来るベースを作ってあげることも出来るのではないでしょうか。それを実現するにはどうすればいいか考えた時に、お金をユーザーからもらうというのはハードルが高いので、無料でまずは出していって、それをノイズとしてアップさせて、千人、1万人のお客さんという次のフィールドにもっていき、それでDVDでやってみましょうとか、さらにステップアップさせて劇場でもやってみましょうとか、そういうようなことも出来るようになるのではないでしょうか。漠然としていますけど、クリエイターに対してあなたの作品だったらこういう千人に見せたら面白いんじゃないかというような、作品に一番合った見せ方というのを提案していきたい。映像に興味のあるクリエイターの方々が、映画だけでなく違う映像表現でも集まってくるような会社でいられたらと思っています。


「サテライト構想」


―08年はアスミック・エース エンタテインメントになって10周年という節目の年です。いま仰られたものが、そこに合わせた新たな展開ということですか。

豊島 今どうしても“アスミックAらしい”というやり方になってしまっているところもあるので、新しいビジネスのやり方という意味では、別会社、違うやり方ができる組織というのを作りたいと思っています。「サテライト構想」というもので、会社的には今後4年間でこういう形の姿にしたいと、社内には既にアナウンスしているんですが、それは「aae2・0」と呼んでいます。「web2・0」に引っ掛けていますが、次のステージということで、2011年までにハイブリッド、製作強化、そして「サテライト構想」で、アスミックAではできないことを、まわりのサテライトの会社がやっていくという構想です。それは一つでなく、例えば宣伝業務をアスミックAとは違った形でやる会社かもしれないし、配給・営業の業務を違う形でやる会社かもしれない。いまやっていることとは違う業態の、もしかしたら新しいタイプの広告代理店のような会社かもしれないですし、エージェント業務、タレントやクリエイターの才能を管理するような、そういうサテライトの会社もあるかもしれません。
 まあ、あくまでも“人”が起点なので、無理矢理ハコだけ作って、よくある企業でみんな兼務してやっているとか、名前だけ連ねているとか、そういうのではなくて、そこを仕切る人間、絶対これはやりたいという人間に任せたい。私はイメージだけ旗揚げして、そこに向けて豊島はこういうことを考えているんだと、それで自分もやりたいという人が一人でも増えてくれればと思っています。


豊島雅郎(てしま・まさお)
 1963年生まれ。86年、新卒一期生としてアスミック(現アスミック・エース エンタテインメント)入社。ビデオグラムのマーケティング業務を長年にわたり担当。家庭用ゲームソフト事業、音楽事業なども兼務した後、05年より取締役・常務執行役員、06年より代表取締役社長に就任。主な洋画担当作品は、「トレインスポッティング」(96年)、「ゴーストワールド」(01年)など。主な製作作品は「ピンポン」(02年)、「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」(03年)、「真夜中の弥次さん喜多さん」(05年)、「間宮兄弟」(06年)、「ハチミツとクローバー」(06年)、「さくらん」(07年)などがある。

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