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【大高宏雄の興行戦線異状なし〈特別編〉Vol.143】
ジャニーズ映画、今年の新展開と今後

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【大高宏雄の興行戦線異状なし〈特別編〉Vol.143】
ジャニーズ映画、今年の新展開と今後

2013年10月25日

 本紙のニュースで、今年のジャニーズ映画(ジャニーズ事務所所属俳優の主演作)の興行ランキングを載せた。ポイントは、興収(推定含む)上位作品の主演者が、すべて違っていたことである。以下、見ていただこう。

(1)「映画 謎解きはディナーのあとで」(櫻井翔、32億円)
(2)「プラチナデータ」(二宮和也、26億4千万円)
(3)「劇場版ATARU~」(中居正広、18~19億円)
(3)「陽だまりの彼女」(松本潤、18~19億円)
(5)「図書館戦争」(岡田准一、17億1千万円)
(6)「脳男」(生田斗真、12億7千万円)
(7)「映画 妖怪人間ベム」(亀梨和也、11億7千万円)

 これは、ちょっと驚くべき俳優の布陣である、一つの芸能事務所に所属する7人の俳優のそれぞれの独立した主演作が、同じ年に、ここまで数字を上げてきたのは非常に珍しい。同じ事務所の他の俳優の作品で、厳しい成績のものも当然あったが、前記7作品の興行成績の “安定感” にこそ、現在進行形のジャニーズ映画の真骨頂があると言っていい。

 隔世の感がある。今から30年ほど前のジャニーズ映画は、「たのきん映画」(説明しません)がブームだった。第1弾「青春グラフィティ スニーカーぶる~す」(1981年、配収10億6千万円)、第2弾「ブルージーンズメモリー」(同年、配収11億9千万円)。まさに、純然たる “アイドル映画” として公開され、数字だけでは想像もつかないファンの熱狂ぶりがあった。

 この30年、グループアイドルの映画を基軸に、SMAP木村拓哉の突出した単独アイドルの映画までの系譜を経て、今年はその “バリエーション” を拡大化しつつ、新展開を見せ始めたと言っていいだろうか。これは、すでにここ数年のジャニーズ事務所の映画戦略であったが、そのさらなる “細分化” が、今年の興行の安定性へと成果を見せたのである。

 この流れが、今後続くかどうかは、いまだ明確ではない。というより、すでに今年の結果のなかに、今後への不安材料が見えているのではないか。ファン層の固定化である。つまり、安定性とは、固定化を包含しつつ、“抜けた” 成績には直結しないのである。一般層への広がりが、それほどではないということだ。

 どうしたらいいか。中身の底上げと、宣伝の転換である。その両面で、俳優の個性の可能性を拡大させることである。ただ、これがとても難しい。固定層の支持の理由は、俳優の一つのイメージが大きいので、それを中身の変化や個性の可能性のなかで崩していくと、ジャニーズ映画の枠そのものが崩壊せざるをえない。結果、安定性を保つ固定層が離れてしまうのである。

 ジャニーズ映画。日本の映画興行史に冠たる位置をこれまで築き、今後も築いていくことだろう。ただ、そのありようは、日々移りゆく。今年のように。要は、“アイドル強者” 無き時代のなか、彼らの個性を固定化させない映画製作を、周到に行っていくことだろうと思う。それは、今という時代だからできるのではないだろうか。

(大高宏雄)

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