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ツイン『バーニング』イ・チャンドン監督会見

【FREE】ツイン『バーニング』イ・チャンドン監督会見

2018年12月13日
左から吉田羊、イ・チャンドン監督 左から吉田羊、イ・チャンドン監督

 ツイン配給の韓国映画『バーニング 劇場版』のイ・チャンドン監督が来日、12日に有楽町のザ・ペニンシュラ東京で記者会見を行った。

 カンヌ国際映画祭で、各国の有力ジャーナリスト10人による星取表で4点満点中、平均3・8点を獲得した話題作。これは今年のコンペの中でトップの成績だったばかりか、歴代の最高点。同作は、村上春樹の短編「納屋を焼く」を大胆に脚色しながらも、過去の村上作品の世界観を見事に踏襲したミステリーだ。会見によれば、1999年『ペパーミント・キャンディー』でも国際共同制作のタッグを組んだ日本のNHKが、監督に「村上春樹さんの短編から何か一本撮りませんか」と提案したことに端を発して実現した。

 小説家を志すジョンス(ユ・アイン)。幼なじみヘミ(チョン・ジョンソ)。裕福な暮らしを送り、日々遊んでいるんだと話す正体不明の男ベン(スティーブン・ユァン)。ある日、ベンはジョンスに「僕は時々、ビニールハウスを燃やしています」と語る。この日を境に、ヘミが姿を消す――。

 会見で原作「納屋を焼く」について監督は「とても短い小説で、ミステリアスな事件を追うストーリー。結末は明かされず、曖昧模糊なまま終わる。私はこの短編小説を広げて解釈し、ミステリー要素を何層にも重ねることで映画にできると思った」とコメントした。

 同作は謎の解決に向かっていく構成のミステリー映画とは異なり、観れば観るほどに新たな謎が出現し、観客の想像力を刺激し続ける。この構成について監督は「最近の映画の展開は、段々とシンプルになっていくものが多い。見やすい映画が増えていて、お決まりのストーリーを追うことに観客が慣れてしまっている。私はこの流れに逆行したいと思った。本作を通して、人生や、世界とは何かを皆さんなりに考えてほしい。日本の皆さんが、どのように受けとめて下さるのか、どのように楽しんでくださるのか、とても期待している」と語った。

 劇中、ヘミが象徴的なセリフをジョンスに語る。果物を食べているフリのパントマイムを披露しながらヘミは「あるということを信じるのではなく、ないということを忘れるの」。このシーンについて監督は、「このシーンでは、人生の大切な問題を語っている。私たちは普段、目に見えるものだけを受け入れて生きているが、目に見えないものも受け入れ、ないということを忘れるということは切実であると考えていけば、人生はより健全になる」とし、「本作はミステリー、スリラーの枠を持っているが、一方では目に見えるものと、目に見ないものの境界にある秘密を描いている」と説明した。

 終盤には、監督のファンである女優・吉田羊が登壇。吉田は「監督の『オアシス』が好きで、観るたびに色んな感情が出てくる。毎回新鮮な気持ちになる」と会えた喜びを語り、「今作には、最初から最後まで見えない糸がピンと張り詰めている緊張感があった。短編小説を長編映画にするという作業はとても大変だが、監督の大胆な解釈が村上さんにとっても正解では、と思わせてくれるほどの説得力」と大絶賛した。

 2019年2月1日よりTOHOシネマズシャンテ他全国公開される。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。