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IDCF2020閉幕、土川D〝来年はここで〟

【FREE】IDCF2020閉幕、土川D〝来年はここで〟

2020年10月06日
 初のオンライン開催となった「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020」が4日(日)に閉幕。当日は、授賞式を現地・埼玉県川口市のSKIPシティ映像ホールで行った。規模を縮小し、国際コンペティション部門・国内コンペティション部門のみをオンライン上で上映してきた。授賞式では、受賞した海外監督らは来日がかなわない代わりに、ビデオメッセージを寄せ、口々に「いつか日本に行き、映画祭に参加したい」と願った。

 国際コンペ部門の最優秀作品賞(グランプリ)は、ノルウェー=スウェーデン合作、マリア・セーダル監督『願い』に贈られた。末期の脳腫瘍の診断を受けた、アンニャの物語。審査員長の澤田正道氏(映画プロデューサー)は、「ガンを告知された主人公が、けして憐れみも受け入れず、時に観客にとっても目を背けたくなるような態度を見せながらも、死んでしまうことの恐怖と、残されていく子どもたちへの母親としての責任がひしひしと伝わった。まさにそこに生身の一人の女性、一人の母親を見ることができる」と絶賛した。監督賞と審査員特別賞は、ロシア映画、ナタリア・ナザロワ監督『ザ・ペンシル』がW受賞(映画祭初)、観客賞はオーストラリア映画、ベン・ローレンス監督『南スーダンの闇と光』が受賞した。

 国内コンペの優秀作品賞には長編部門でアンシュル・チョウハン監督『コントラ』。戦時中に記された祖父の日記を辿る物語。短編部門で藤田直哉監督『stay』。空き家で共同生活を送る5人と、退去勧告を言い渡しに来た男の物語。観客賞は、長編部門で磯部鉄平監督『コーンフレーク』、短編部門で朴正一監督『ムイト・プラゼール』。磯部監督は、3年連続ノミネートで3年連続受賞という同映画祭初めての快挙を達成した。

 国際・国内の両コンペを通じた日本作品のなかから、今後の長編映画制作に可能性を感じる監督に対して授与する「SKIPシティアワード」には、国際コンペに出品していた『写真の女』(ピラミッドフィルム配給)串田壮史監督が受賞。同作は、写真屋を営む孤独な男の物語。審査を行った部谷京子氏(美術監督)は「独特の世界観を持つとてもユニークな作品」と、串田監督の作家性と将来性を認めた。

 実行委員会会長の大野元裕埼玉県知事は、会期中にオンラインで作品を鑑賞し、「私が6年以上住んでいたイラクを映像で見た時、色がイラクだと感じ、そのうちに匂いがしてきた。自宅にいながらそういったことが共有できる、そんな時代になって来た。日本、世界に向けて文化と人々の息吹きを伝えられるような新しい映画祭を目指したい」と意気込みを語った。

 土川勉ディレクターは、「昨年、私は、『来年は東京オリンピック・パラリンピック2020の年だが、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭は不滅。また来年もこの場でお会いしましょう』と言ったが、まさか今年の映画祭がこのような形で行われるとは全くの想像外。今年は、オンライン配信による映画祭という、すべて初めての試みであり、異例づくしとなった。しかし、関係者のご努力により無事に終了できた。来年は、本当に、本当に参加者全員とこの会場でお会いしましょう」と締めくくった。
※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。