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第5回沖縄国際終え、大崎社長インタビュー

【FREE】第5回沖縄国際終え、大崎社長インタビュー

2013年04月18日
第5回沖縄国際終え、大崎社長インタビュー 第5回沖縄国際終え、大崎社長インタビュー

 吉本興業の大崎洋代表取締役社長に、節目・第5回まで積み重ねた「沖縄国際映画祭」の現状総括や、創業101年目の同社グループのビジョンなどを聞いた。


―区切り5回目の映画祭が終了。吉本興業100周年の締めくくりにもなった。

大崎 見よう見まねで、5回目まで終えることできた。映画業界の方から見たら、まだ単なる吉本興業のイベントだと思われているだろうけれど、それでもこうして積み重ねてきた。東日本大震災後に決行した第3回目で、全社員、全スタッフ、芸人、タレントたちが何かをつかみ、方向性が見えてきた。

―プログラム発表会見で「ようやく映画祭らしくなってきた」とおっしゃった。

大崎 元々は “テレビ、ラジオ、映画、映像、雑誌、週刊誌、月刊誌、新聞、WEBメディア” 祭としたかった。業界人が年に1度沖縄に集まりコミュニケーションをとる場、プラットフォーム。アジア中の人に集まってもらい、沖縄に支えてもらい、そこから広がりができればと。そのコンセプトに近づいていて、その意味で「映画祭らしくなってきた」かなと。継続は力なりと実感する。

―吉本興業を中心とした民のパワーで「国際映画祭らしくなってきた」。

大崎 東京国際映画祭とは違った、民のパワーでしかできない国際映画祭として形づくりはできているんじゃないか。お金のことだけなら、国の援助とか喉から手が出るくらい欲しいけれど、享受すると規制なりも一緒に出てくるわけで。自分たちが自由に現場を走って次のヒントを見つけていくのと天秤にかけて、どちらをとるか。ひとまず、このまま走っていく。

―地域、アジア、デジタルが映画祭と吉本興業の大きなキーワードだ。

大崎 映像が持つ潜在的な力と地域の物産品を両輪にして、アジアに打ち出す。吉本興業は、7月に台湾・金門島に開業する大型商業施設で47都道府県の物産展を運営する。沖縄をアジア展開のハブにする。映画祭開始時からイメージしていたが、どんどん可能性が開けてきている。他の国際映画祭と比べ後発だし、人脈、フィルムマーケットもないが、違うマーケットみたいなものができつつあると思う。オリジナリティもあるし、他の映画祭とバッティングもしない、良い感触だ。

―吉本興業のアジア展開のひとつのゴールはどこか。

大崎 具体的にライブハウス(劇場)のアジアネットワークの構築をこの3年ぐらいで考えている。お笑いなどのライブ、映画や映像の上映、関連雑誌やペーパーも置いてというイメージ。国内で何館でなく、アジアで何館というネットワーク。スマートフォンと連動させてチケットや映像や活字メディアもオンライン化したり、アジアでネットワークを組む。そして、はじめて欧米と向き合える。

―他社と組むことはあるか。例えばアミューズもアジアに積極的だ。

大崎 お声がけいただけるなら、色んなところと組まないと、体力も知力も足りないから。アミューズさんは大里(洋吉)会長がさらにパワーアップされて、オーナー会社さんでお金も持っていらっしゃる(笑)。スタートダッシュも早い。すごく勉強になるし、参考にさせていただいている。映画祭も、最初からよしもと一色でなんて思っていない。どこも相手にしてくれないだけ(笑)。吉本興業=お笑いを死守する責任はすごく感じているが、それ以外は色んなところと組ませてもらわないとできない。海外からも、よしもとブランドでもっと打ちだしたら良いのではとアドバイスもいただくが、それは違う。

―吉本興業は創業100周年を終え、200年に向かう。

大﨑 映画祭を通じ、社員、タレントが肌で感じていることがいっぱいあると思う。日常の仕事でも、それが積み重なって、次の吉本興業の方向性が自然発生的に、竜巻のように、ぐちゃぐちゃになりながらも見えてくると考えている。それが理想。映画祭で学んでいることは本当に多い。赤字だろうが安い勉強代。次の100年計画の方向性をつけられる場と考えると、お釣りがくるぐらい。

―日本のエンタメ業界へメッセージを。

大﨑 放送局は免許事業だし、上場会社もあるので、チャレンジしづらいと思う。ほかのメディアの大きな所帯の会社もそうだろう。吉本興業ぐらいの会社なら小回りが利く。元々が興行で食べてきた会社だから、興行師らしく一か八かのチャレンジもできる。創業から100年お世話になった業界の皆さんのためにも、率先してチャレンジして、どこかでお返しさせていただきたい。

―特に映画業界に向けて何かあれば。

大﨑 どうして今また吉本興業が映画なのかといわれるだろう。ただ、同じことをやるつもりはまったくなく、吉本流の土壌を作っていく。ああいうのは映画じゃないとか、ドラマツルギーがどうだとか、そういうことは極限なく泥沼に入りそうなので(笑)。門外漢なりの映画の世界みたいなものを、これから100年かかるかもしれないけれど作っていきたい。


※当記事は「インタビュー」コーナーに掲載中の記事から一部抜粋・要約したもの。関連記事として沖縄国際映画祭エグゼクティブプロデューサー・奥山和由氏のインタビューも掲載中。

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※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。