8月12日から公開された「ツリー・オブ・ライフ」は、2週目にあたる20、21日の2日間で、全国動員4万4424人・興収5646万5100円だった。13、14日の2日間では、8万3120人・1億0204万2600円を記録していたので、2週目の土日は前週の55・3%の興収となった。
かなり落ち込んだと言っていい。これは、十分予想されたことである。ただ、この20、21日は、他の作品も相応に落ちている。「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」が39%、「コクリコ坂から」が37%、「トランスフォーマー ダークサイド・ムーン」にいたっては、47%の落ちを見せた。
これは、珍しいことではない。13、14日は、いわゆる“お盆興行”の真っただ中であり、一年を通じてもっとも集客率の高い時期である。その次の週は、かなり落ち込むのが普通で、そうした傾向が今年も顕著だったということだ。
ただ、「ツリー・オブ・ライフ」に話を戻せば、“お盆興行”云々を差し引いても、その落ち方は一般的に見て、中身への満足度が低かったのが原因だろう。宇宙論的な(何かの)描写の連鎖と、物語の進行にあたっての極度に統制のとれた映像表現のつらなりに、拒否反応を示す観客がいても何ら不思議ではない。
しかし本作は映画興行のあり方として、とにもかくにも一般的な広がりをもたせようと、“見せる”ことを念頭に入れた配給側の周到な営業、宣伝戦略が、実に小気味よかったと言える。純粋アート系とも言っていい作品を、ブラッド・ピット主演の父と息子の感動ドラマといった側面から強力プッシュする。ここに惹かれた人は当然多かったはずで、実は中身そのものはそのラインから大きくは外れていないのだ。
つまるところ、宣伝などからインスパイアされる題材への関心があったとして(これは、全く正当なのだ)、その“描かれ方“が特異だったために、映画全体に異和感をもつ人たちが多かったのではないかと推測できるのである。
人々が映画に対して期待する何物か。それを映画の宣伝が引き出し、しかし当の映画はそのエッセンスを十分に感じさせながら、表現のあり方において超絶していた。これに強く引き寄せられる人、逆に反発する人。様々な人たちがいるのは当然であり、それもこれも映画の魅力の一端を構成しているのである。
今回、そうしたことを白日のもとにさらしてくれた関係者に、私は素直に感謝したい。映画の底力と恐ろしさ。広く知らしめるのは重要である。
(大高宏雄)