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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.38】
「ハリー・ポッター」、今年最高のスタートだ

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.38】
「ハリー・ポッター」、今年最高のスタートだ

2011年07月19日

 「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」が、今年最高のスタートを見せた。7月15日(金)から18日(月)までの4日間で、興収23億9千万円前後を記録した模様だ。前作「~死の秘宝 PART1」(最終69億円)のスタート成績を大きく上回った。

 この勢いが今後も持続されれば、100億円突破の可能性は高い。前作「~死の秘宝 PART1」は昨年の11月19日から公開された正月興行作品であったが、今回は学生、子どもたちの長い休み期間がある夏興行作品であり、ある程度の持続性があるとみられるからだ。

 このシリーズは、本作で8作目。第1作目(2001年12月公開)が、これまででもっとも成績がよく、203億円を記録。今に至るも邦画、洋画の歴代興収の3位に入る。しかし2作目以降、成績は下降を続けた。「~死の秘宝 PART1」も69億円にまで下がり、1作目の34%にまで興収を落としたのである。

 ただ、このシリーズが2000年代はもちろんのこと、過去を振り返っても、もっとも高水準のヒットを続けてきたのは衆目の一致するところだろう。CG技術の進化によって、アクションをはじめとする様々な描写力を一段と誇示していったのがハリウッドの2000年代であり、それは物語より映像の迫力を重視する映画の方向性をより鮮明にしたとも言える。

 そうした “傾向” のなか、物語と映像の絶妙なミクスチュアとしての映画の形を、主人公の成長譚として提示しえたのがこのシリーズであり、それはハリウッドの数少なくなった “良心” とも言えるものだったのではないか。それがファンタジーというジャンルをとり、人々の気持ちを強くとらえたのは、この時代の底部にうごめく何物かを表してもいたのであろうか。

 「~死の秘宝 PART2」は、シリーズ最後を飾る作品にふさわしいスタートを切った。シリーズ最初には多かった子どもの観客も増え、年配者、若者など男女を問わない幅広い客層は、シリーズの原点返りとも言っていい。

 夏興行は、始まったばかりである。昨年のような派手さはないと思われるが、この「ハリポタ」が全体の興行を先導していくのは間違いないだろう。ただ、期待度が高かったから、スタート時にある程度かぶってきたとも考えられ、今後の興行の推移は要注意である。

(大高宏雄)

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