「TIME/タイム」が、意外なヒットである。2月17日から公開された「TIME~」が、17~19日までの3日間で、全国動員26万1161人・興収3億5101万9550円を記録したのである。スクリーン数は427。これは、2月10日から公開された「ドラゴン・タトゥーの女」の121.7%の興収だった(3日間比較)。
ちなみに、2月18日から公開された「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は、2日間で7万3798人・9481万2500円を記録(309スクリーン)。スクリーン数が違うとはいえ、「TIME~」の健闘ぶりが、うかがえると言えよう。「TIME~」は今後の興行展開を考慮し、配給会社は最終で15億円以上が視野に入ったとした。
本作の興行で特徴的なのは、10代から20代、30代の若い男女が多かったということである。最近、というか近年、洋画になかなか若い観客が関心をもたなくなったなかで、若い観客がこれほど目立ったことは注目に値する。
映画は、人々が25歳になった段階で、以降は時間を買わないと生きていけないSF的な物語設定をもつ。金持ちは長生きでき、貧しい人は過酷な仕事に従事する。荒唐無稽でありながら、全くの絵空事ではないようにも見えるこの設定に、映画と同世代の20代、30代という若い人たちが関心を抱いたとみられる。
そうした設定や中身を、日本独自制作のポスターや予告編、さらにテレビスポットの多用などで浸透させたことも大きかったようだ。俳優たちの来日会見がなかったので、日本語吹替え版の声優にAKB48のタレントを起用して、イベントを開催するなどもしたが、やはり映画そのものへの関心が高かった。
実は今年に入り、洋画でそれなりの劇場編成をして、興行の勝負をかけてきたのは本作と、先の「ドラゴン~」や「ものすごく~」の3本しかない。それだけ、洋画の話題作が少なくなっているわけで、配給会社のフォックスが、ヒットがそれほど簡単ではない「TIME~」で勝負をかけてきたことは、映画界全体にとっても非常に大きな意味をもつ。
ちなみに、この「TIME~」は米国において、4000万ドルに届かない興収だった。だから、日本で “捨て作品” にしても、全くおかしくはなかった。要は、頭の使いようということであろう。そのお手本が、本作の興行スタートにあったと言っていい。
(大高宏雄)