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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.78】
GW完全制覇、東宝の超独壇場許すまじ

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.78】
GW完全制覇、東宝の超独壇場許すまじ

2012年05月08日
 またまた、映画業界で驚きの声が上がっている。このGW興行で、東宝が圧倒的な強さを発揮したのである。こうしたことは、もはや当たり前過ぎで、誰も驚かないと思うのだが、そうではなかった。その凄さに、驚きを通り越して、声さえ出なくなったと言ったほうがいいかもしれない。

 東宝は、4月7日から5月5日までの5週間、毎週新作を公開した。これには、誰も驚かない。が、東宝は何と、この5週間、毎週ヒット作品を連発したのである。このとんでもないヒットの連続性に、声が出なくなる人は多かろうと思う。その作品と、5月6日時点での各興行成績を記してみよう。

 4月7日に「劇場版 SPEC~天~」(動員165万9681人・興収21億2722万8300円)、4月14日に「名探偵コナン 11人目のストライカー」(237万0144人・28億0811万9500円)、4月21日に「僕等がいた 後篇」(101万3052人・12億6189万6200円)、4月28日に「テルマエ・ロマエ」(174万9012人・22億2318万4700円)、5月5日に「宇宙兄弟」(28万5341人・3億8232万6100円)。

 ざっと、こんな感じなのである。ちなみに、5月5、6日の2日間だけで、東宝は全作品の興収累計で、何と17億4千万円を記録している。今や配給会社にとっては、1ヶ月でも17億円を上げることなどめったにないことなのに、この会社は2日間でそれを実現している。全く、ありえないことである。

 さて、ではどうするか。といっても、どうしようもない、これが現実と、納得する以外ない。かつて私は、東宝の独壇場を許すな。大手映画会社よ、奮起せよと、口が酸っぱくなるくらい言ったものだが、その叱咤激励の言葉も今や、虚しいと言う以外ない。

 私は冗談ではなく、言葉の虚しさを、本当に実感している。東宝は、己が進むべき道を歩んでいる。個別的(作品)には言い分もあるが、それは別の問題だ。東宝のシェア独占を許しているのは、他の会社のふがいなさであろう。これに、邦画、洋画の別はない。いったい、映画ジャーナリストの俺は何をやってきたのだ。何も、状況は変化していないではないか。園子温の「恋の罪」ではないが、まさに、“言葉なんか、覚えるんじゃなかった”である。

 と、あらぬ方向に文章が先走ってしまったが、とにかくだ。製作、配給、興行、マスコミなどの各分野に携わる映画業界の面々にとって、己の力量が今ほど問われている時代はないのではないか。だから何度でも、東宝の“超”独壇場、許すまじ。と、声を振り絞って、俺は言ってみるのだ。

(大高宏雄)

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