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今後の配信事業を占う、セミナー「映画配信の将来」をMPAが開催

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今後の配信事業を占う、セミナー「映画配信の将来」をMPAが開催

2013年11月07日

MPAセミナー.jpg


 モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)は10月21日、「映画配信の将来」と題したセミナーを六本木アカデミーヒルズ49「オーディトリアム」で開催。今後の映画配信の在り方について、基調講演やパネルディスッカションを行ない、業界関係者が多数詰めかける盛況な催しとなった。




キュレーターの存在欠かせない時代に

ドイッチマン氏.jpg 「劇場用映画のデジタル配信の発展と期待」と題した基調講演に登壇したのは、ニューヨークを拠点としたデジタル配給会社「エマージング・ピクチャーズ」のマネージング・パートナーを務めるアイラ・ドイッチマン氏(=右写真)。

 ドイッチマン氏によれば、現在、映像コンテンツのビジネスモデルは、地上波TVやユーチューブなどに代表される、広告料やスポンサー料で運営する「無料型」と、劇場公開やVODなどの「ペイパービュー型」、ケーブルTVや、配信会社ネットフリックスなどが取り入れる月額制(定額制)の「サブスクリプション型」、DVDやダウンロードなどの「所有型」の4つに集約されるという。

 また、今後の映像配信(映像業界)には、乱雑する情報・作品を整理し、推奨する能力のある「キュレーター」の存在が欠かせないとし、講演時間の大半をキュレーターの説明に割く熱の入れようを見せた。それによれば、従来のキュレーターと言えば「批評家」や「映画祭」などが挙げられるが、米国の場合、映画批評欄のある新聞は数社を残してほとんどが消滅していまい、批評ブロガーについても信頼性に問題があるとした。映画祭は、特定分野やニッチなジャンルで需要があるものの、世界のほとんどの主要都市で開催されているほど映画祭が急増してしまい、正確な価値を精査する必要性があることを示唆した。

 さらに、その他の従来型キュレーターとして、HBOなどケーブルTV局の番組編成を差す「ディストリビューション・チャネルのコントロール」や、「口コミ」を挙げた。口コミに関しては、近年は噂が広まる前にコンテンツが消費されてしまっていることから、現在の市場では機能しづらくなっていると指摘した。

 一方、これから主流になると予想される新しい形のキュレーターとして、はじめに「コンピュータ・アルゴリズム」があるとした。Amazonで「この商品を買った人はこんな商品も買っています」と表示される機能や、ユーザーの趣向に合わせて自動でTV番組を録画してくれるデジタル録画機「TIVO」などを例にとり、様々な情報を整理し、コンピュータが自動で推奨するタイプのキュレーターの台頭を挙げた。次に「ソーシャル・メディア」も新たなキュレーターになるとし、ユーチューブやIMDBのレーティング、フェイスブックの「いいね!」機能などを例に挙げた。さらに、「オピニオン・アグリゲーター」という、批評まとめサイトもキュレーターになると述べ、ジャーナリストの映画批評を集めて採点するサイト「ロッテントマト」や、ドイッチマン氏が運営するツイッターの映画批評まとめサイト「ムービー・ツイービューズ」などがその役割を担っているとした。

 また、日本では「ドリパス」で浸透し始めている「ユーザー主導型上映」も有効だとした。ユーザーからリクエストを受け、一定数の客が集まることが保証されれば上映が実現するというフラッシュマーケティングのことを差し、ブラジルでは「ムービーモズ」、アメリカでは「タグ・ギャザー」というサービスが存在するという。ドイッチマン氏は「このコンセプトが大好き」とし、「友人を誘って映画に行く。あなたがキュレーターになれる」と語った。

 最後にドイッチマン氏は、「キュレーターは将来、今の映画配給会社のような存在になると思っている」と独自の考えを述べ、様々なメディア、様々な作品が世に溢れる中で、「自分の好きなものをどこから探し出すか、そのキュレーターを誰がやるのか?が重要になる」と締めくくった。


ニワンゴ杉本氏「ソーシャル・メディアがキーワード」

 続いて、映像配信に携わる業界人4名によるパネルディスカッションが行われた。出席したのは、ニワンゴの杉本誠司社長、フールージャパンLLCのバディ・マリーニ日本代表、ヨウク・トゥードウ・インクのシュ・フイロンシニア・ヴァイスプレジデント、GyaOの神谷寿彦社長室長。モデレーターを遠山友寛弁護士が務めた。

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(左より杉本誠司、バディ・マリーニ、シュ・フイロン、神谷寿彦の各氏)


 まず、日本の映像配信市場についてマリーニ氏が、「市場は確実に伸びているが、まだ一般的にはなっていない。日経が1万5千人に行なったアンケートによれば、フールーのような定額配信サービスを利用したことがある人は4.8%に留まっていた。一方、関心があると答えた人は22.5%もいた。日本人はネット利用率は高く、スマホなどのデバイスの普及率も高い。ここに伸びしろがあると考えている。また、コンテンツ提供側の考えも、弊社が参入した2年前に比べ配信に前向きな姿勢を示す会社が多くなった」と、可能性の高い市場であることを強調した。

 一方、中国の大手動画共有サイト2社が昨年合併してできたヨウク・トゥードウのフイロン氏が中国市場について「中国では(海外の映画公開を制限する)クォーター制があり、それに外れた作品は劇場で観ることができない。この問題に対応するために、アメリカで劇場公開された2~3週間後に中国でオンライン配信する仕組みができている。過去数年で、我々のサイトの定額制会員は3倍に増え、アクセスする人は毎日2億人を超えている」と語った。

 続いて、配信される映像の視聴方法が今後どうなるかについて、杉本氏は「接触率が長いスマホでの視聴は確実に伸びていく。ただ、やはり画面は小さいし、誰かと共有するためにも、大きな画面で観る需要はあるはず。大きい小さいではなく、その人がその時に一番楽しめる選択をしてもらうのが大切で、コンテンツ会社は作品のオールライツを取得することが重要となる。また、映像は今後「観る」だけでなはく、「体験」「参加」することも望まれるようになり、そういったサービスを盛り込んだ形でビジネス化していくだろう。その際はソーシャル・メディアがキーワードになる。同じ価値感を持った人といかに繋がることができるか、というサービスに、徐々にビジネスがスライドしてきている」との考えを述べた。

 また、有料映像配信サービスへの支払いに関して、杉本氏は「クレジットカードは有効な支払い方法だが、何より支払っていることを(ユーザーに)麻痺させることが重要。あと、数年前までは無料の違法な海賊版が出回っていたためそっちに視聴者が流れてしまっていたが、今は正規のものにお金を払うことへのクールさが広がってきている」と語り、神谷氏は「確かにまだ決済は面倒なところがあるが、携帯電話のキャリアがサブスクリプション型(定額制)のVODサービスをしており、以前よりはだいぶ楽になっている」と述べた。その一方、中国の状況について、フイロン氏は「中国ではクレジットカードではなく、『アリペイ』という第三者決済サービスが普及しており、これが動画配信ビジネスの普及を後押しした」などと語った。議題はそのままサブスクリプション型ビジネスに移り、新作映画を定額制配信サービスに投入することができるどうかの是非について、マリーニ氏は「映画は莫大な製作費がかかっており、定額制にするためには会員の数がもっと多く必要。現状は難しいのでは」と話し、神谷氏も「今の形ではサブスクリプション型は難しい。コンテンツの作り方から変える、作り手の努力も必要だ」と、定額制配信サービスに合った作品作りを業界に呼び掛けた。

 なお、同セミナーではほかに、MPAアジア太平洋地域 プレジデント アンド マネージング・ディレクターのマイケル・C・エリス、東京国際映画祭ディレクター・ジェネラルの椎名保、在日米国館臨時代理大使のカート・トン、内閣参事官 内閣官房知的財産戦略事務局の田口重憲の各氏が挨拶、アメリカ映画協会国際政策渉外担当エグゼクティブヴァイスプレジデントのマイケル・P・オリーリー氏が「オンラインビジネスの急速な普及」と題した基調講演を行なった。 了


取材/文・構成 平池 由典



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