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トップインタビュー:原口一博 総務大臣

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トップインタビュー:原口一博 総務大臣

2010年03月02日
新規参入阻害する既得権益は徹底的に壊す!
多様な言論を!クロスメディア所有見直しに言及

 「民主主義の基本は言論の自由にあり、市場の基本は一人ひとりが公正であることにある。歴史を見ても、時の政治権力は、自らを正当化するために放送に介入する誘惑を断ち切れず、多くの言論弾圧や抑圧が行われてきた。放送・報道の自由は絶対に侵害されてはならない。世界の類のない“言論の砦”を作って参りたい」――昨年12月16日に行われた「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」初会合の冒頭、言論の砦、すなわち「通信・放送の独立行政委員会」の設立という“官の変革”について、原口大臣は熱弁を振るった。 

 一方、今回のインタビューでは、新聞・テレビ・ラジオなど複数のメディア所有の見直しという“民の変革”にも言及している。両方の考えの根底にあるのは“自由”。報道や表現に留まらず、ビジネス参入など、あらゆる場面での自由が、健全な民主主義、引いては平和の実現に繋がるというものだ。

 デジタル化に、新たなメディアの出現、広告収入の低迷など、放送業界を取り巻く環境は依然として厳しい。そんな中、この2つの変革を掲げる放送行政のトップは、何を語るのか――。


 ――大臣就任から4ヶ月が経過した。以来、情報通信分野についても次々に施策を打ち出されている印象だが、ここまでの感想は。

 原口大臣(以下、原口) この4ヶ月で世界の5カ国を回った。例えば米FCC(連邦通信委員会)のジョナカウスキー委員長と情報通信に関する日米合同のタスクフォースの立ち上げに合意したり、ASEANの通信大臣会合で世界にまたがる様々な話し合いをしたり、先日はインド電気通信規制庁のサルマ委員長との間でICTを中心とした電気通信分野の政策協力に関して合意した。そして何と言っても、ペルーのリマで地上デジタル放送の日本・ブラジル方式(ISDB‐T/日伯方式)を南米に広げるという「リマ宣言」をした。国内でも、新たなICT政策の検討を行うタスクフォース(「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」)、“言論の砦”を作るためのフォーラム(「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」)を立ち上げた。そういう意味で、情報通信担当大臣としてのこの4ヶ月間は、私がここに至るまでに思い描いていたことを軌道に乗せるという期間だった。この作業は思った以上に進んでいる。

 BPOの定着は全く関係ない

 ――“言論の砦”、つまり通信・放送の独立行政委員会の構想だが、フォーラムに参加しているメンバーからは「“砦”が言論の自由を破壊するのでは」という懸念の声も上がった。そういうことにはならないという根拠は何か。

 原口 その根拠は一人ひとりにある。皆で、オープンソース(公開)で作ろうとしているものが、どうして抑圧になるという議論をするのか。その懸念は発想そのものが貧しいと思う。“砦”を作っておいてそれが破壊になるというのはまさに民主主義の否定だ。民主主義というのは一人ひとりがチェックするものであり、もし誰かにお任せするということをやれば、権力は暴走する。それは当たり前の話だ。そこには不断の努力が大事。主権者としての権利を行使する限りにおいて、その懸念は杞憂であるということを申し上げたい。

 ――この他に、BPO(放送倫理・番組向上機構)を定着させることで十分ではないかという意見も出たが。

 原口 BPOはあくまで自主規制機関であり、独立行政委員会とは全く関係ない。私は4年前に読売新聞の渡邊恒雄主筆に誘われ、「検証戦争責任」という企画に参加させて頂いた。そのときに一番感じたのは、権力の側が言葉を失わせるという恐ろしさだった。言論の自由が抑圧され、ジャーナリズムをコントロールする。あるいは言葉そのものを抑圧していく。この“砦”は、その権力に対する機関なので、BPOとは全く関係ない。

(※全文は文化通信ジャーナル2010年2月号に掲載)

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