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インタビュー:光武蔵人監督「モンスターズ」

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インタビュー:光武蔵人監督「モンスターズ」

2007年02月26日
撮らせてもらえる場所があれば、地の果てでも行く
 ソリッドシチュエーション・スリラー「モンスターズ」。
 新鋭の和製ハリウッド監督の本作に懸ける熱い思いとは―撮らせてもらえる場所があれば、地の果てでも行く

3月2日レンタル、続いて30日にDVD発売される、
ソリッドシチュエーション・スリラー「モンスターズ」。
新鋭の和製ハリウッド監督の本作に懸ける熱い思いとは―


ハリウッドを拠点として活躍する日本人監督・光武蔵人が長編作品デビューを果たした。マクザムよりDVD発売される光武監督のデビュー作「モンスターズ」は、銃乱射事件を起こした高校生に、その事件の被害者の父親が復讐する密室スリラー。
 ホラー映画の巨匠・清水崇監督に見出され、「呪怨2」のハリウッドリメイク版「THE GRUDE2(原題)」のシカゴ撮影部分の助監督にも抜擢されるなど、今後の活躍が大いに期待されている。本作の見所や、今後の目標等について聞いた―。

一枚のコインの表と裏

―ご自身初の長編作品のテーマに、娘を殺された父親の復讐劇を選ばれた理由は何でしょうか?

アメリカでも日本でもそうですが、事件が起こると犯罪者が注目されてヒーローになってしまうケースが多いと思います。しかし、事件の主人公は本来被害者であるべきで、被害者側からの作品を撮れたらいいなと思いました。

―作品の中盤からは、狂っているのはむしろ被害者の父親の方であって、加害者・ラッセルの方が正常なようにも見えたのですが・・・

100分の尺の中で、ずっと父親だけに感情移入するという図式で引っ張るよりも、観客が本当は感情移入ができないと思っていた犯罪者側の立場にもなり、そしてまた、復讐に燃える父親側にもなるという、一枚のコインの表と裏を表現したストーリー展開を狙いました。

―あえて高校生の銃乱射事件を題材に選ばれた理由はあるのですか?

現代は日本でもアメリカでも子供達が育っていく環境が難しい時代だと思います。そこで、大人の犯罪よりも、子供が大人になる中間地点にいる人間の犯罪を、大人がどう裁くのか、という話が今の社会ではタイムリーな物語なのではと思い、選びました。

―ラストシーンも印象的でした。様々な結末が考えられる展開の中で、なぜあの結末に至ったのですか?

自分の責任は自分で取るという、男っぽい映画が元々好きなので、主人公の父親にも責任をとらせたいとの思いがありました。その結果、あの結末を選んだのですが、それがアメリカ人の観客には切腹や武士道という形で受け取られた面がありましたね。しかし自分の中ではそういう意識はありませんでした。様々なエンディングを考えましたが、一緒に撮影したスタッフも今のエンディングを支持してくれていますし、個人的にも良かったと思っています。

―主人公の二人はどのような経緯で起用したのですか?

 オーディションを開き、220人の中から2人を選びました。高校生のラッセル役であるカイルは、ほぼ即決でした。ファッションや態度まで役作りをしてきていましたし、彼が会場に来た時からビビっときていました。
 父親役はあまりイケてないアメリカの中流の親父という明確なイメージがあったので、スタイルもルックスもいいディーンがオーディション会場に現れた時は、自分の中でイメージしているキャラクターとは違う印象を受けました。しかし、演技力や、背負っているもの、内に秘めたものを感じ、どう考えても彼がベストチョイスだと思いました。自分のイメージを守って、イケてない親父を探すべきか悩みましたが、試しにカイルとディーンに掛け合いをしてもらったところ、二人の化学反応みたいものが非常に良かったので、自分のイメージしたキャラを彼に近づける方が成功するだろうと思い起用しました。

順撮りが良い連帯感に

―撮影時の苦労話などはありますか?

スタッフ、キャストのみんなが辛かったのは、昼と夜が逆転したスケジュールだったことだと思います。舞台となった倉庫は、普段は普通に営業している会社の駐車場を借りたもので、その会社が営業中は使用できません。彼らが会社を閉めた午後6時から撮影開始で、朝の10時ぐらいまでに撮り終えるという作業が3週間続いたのが辛かったですね。時差ボケ状態で、スタッフ一同極限の状態でした。でもその緊張感がかえって良かったとも言えます。みんな映画のためだけの毎日だったので、集中できました。

―連帯感なども生まれたのではないですか?

もちろんそうです。さらに連帯感を作る一因となったのが、今回は映画にしては珍しく順撮りができたことです。脚本を読んでいない末端のスタッフなども、実際に現場にいることでストーリーがわかってくるので、彼らも話に引き込まれるという環境が生まれ、それが自分や俳優さん達のやりがいにも繋がり、現場の連帯感に良い形で作用したと思います。

―思い出などはありますか?

食事休憩の前にこのシーンだけ撮ってしまおうと、急いで撮影してた時、それが終わって、さあメシだー!とスタッフがセットから出て行ったのですが、イスに縛られていたカイルのことをみんながすっかり忘れていたことがありました(笑) そんな雰囲気で和気藹々な現場でしたね。扱う題材はダークでハードなものですが、現場は明るくて楽しい雰囲気でした。

―この作品はどのような経緯で作られたのですか?

最初は「サイレントソード」という企画を動かしていて、製作費5000万円を予定して資金集めをしていましたが、新人の私には結局1000万円ほどしか集まりませんでした。そこで一度その企画は断念したのですが、投資して頂いた1000万で別の企画を進める話がもち上がり、新たに脚本を募集しました。アカデミー・オブ・モーションピクチャー・アーツ&サイエンス(約6000人のアメリカ映画製作関係者によって構成されている団体。アカデミー賞選考の権利を保有しており、毎年アカデミー賞の授与を行っている)が主催している脚本のコンペティションが毎年あるのですが、そのセミファイナリストまで選ばれた人達が参加できるウェブサイトの掲示板があります。そこの掲示板に募集をかけたところ、アメリカ、オーストラリア、イギリスから9本ほど応募があり、その中で一番自分の中でグッときた舞台劇の脚本を選びました。


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