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インタビュー:ユナイテッド・シネマ(株) 代表取締役社長 宮田昌紀

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インタビュー:ユナイテッド・シネマ(株) 代表取締役社長 宮田昌紀

2009年07月14日
黒字回復へ、この2年間の歩み
 “やればできる!”宮田イズムが浸透
 一歩先のための組織変更・人事異動 

黒字回復へ、この2年間の歩み
“やればできる!”宮田イズムが浸透
一歩先のための組織変更・人事異動


 ユナイテッド・シネマ(UC)が、ここ数年の赤字から一転し、09年3月期に最終損益(米国会計基準)で黒字化を達成した。宮田昌紀社長が住友商事から来て2年余り。“宮田イズム”が浸透してきた結果である。
 本誌ではちょうど2年前に、社長就任から数ヶ月が経過した宮田氏にインタビューを行った(07年6月号)。それを振り返ってみると、宮田氏は、全従業員との面談、自社サイトや他社サイトの視察などを経て、UCの長所、短所を冷静に分析していた。
 そして、興行環境が厳しい中でも利益が出せる体制をどう作っていくか、顧客満足(CS)をいかに上げていくか、UCブランドをいかにして確立していくかなどの大きな目標を掲げた上で、具体的な施策はこれから打っていくと述べて、インタビューを締めくくっていた。
この2年間の取り組みとその成果、4月1日付の組織変更・人事異動の狙い、今後のUCの将来像などを、宮田社長に尋ねた――。


3つの体制、3つの取組

本誌 まずは、前年度に黒字を達成したそうですね。おめでとうございます。

宮田 ありがとうございます。まさに2年前のインタビューの時に持っていた前提条件のもと具体的な策を打って、2年経った結果として、赤字からの脱却ができたというのが大きな流れですね。

本誌 いま興行会社は、どこも順風満帆とは言えない状況です。赤字の会社も数多くあります。

宮田 本当にしんどい2年間でしたが、中身が非常に濃くて、実にやりがいがありました。

本誌 この2年、どのような施策を打ってきたのですか。

宮田 大きなテーマとしては「内部体制を固め、筋肉質な体質への変革」。この台詞自体は2年前にも言っていましたが、これを実現するための施策を2年間行ってきました。両輪である「従業員の成長」と「顧客満足度向上」、この実現を通じて、競争優位性を獲得して、UCのブランドを確立することを目標としていました。2年前に申し上げたとおり、プロ揃いのオペレーション部隊には当面口をはさまず、前述の目標を達成すべく「体制」として3つ、「取り組み」として3つ行いました。
「体制」の1つ目として、「人材開発担当」を人事総務部内に置きました。2つ目が同じく人事総務部内に置いた顧客満足を上げる「CSアップ担当」。3つ目が社長直轄の「CRM担当」です。CRMとは“カスタマー・リレーションシップ・マネジメント”の略で、お客さんとの良好な関係を作り、それを維持・向上させていくという考え方です。お客様との関係をどうやって発展させて、収益向上やCSアップにつなげていけるかということです。こういう体制をオペレーションの部隊とは別に作ったわけです。

取組(1)研修で支配人強化

本誌 人材開発担当、CSアップ担当、CRM担当という新たな体制ができて、具体的にどんな「取り組み」を行っていったのですか。

宮田 「取り組み」の1つは「研修」です。研修の対象者はサイトの支配人。当社の収益の根源は現場です。その現場をきちっとオペレーションでき、CSも上げ、収益につなげるためには、支配人が強くないといけない。年2回の支配人会議とは別に、半年に1回の頻度で支配人には東京に集まってもらい、研修会議をしました。この2年間で、研修による支配人のレベルアップを徹底しました。
研修の1つが「マインドアップ研修」で、人材開発担当が関わりました。全国21サイトになりましたので、支配人が同質化した考え方を持つ必要があります。リーダーシップ、マネジメント、コミュニケーションに関する研修を行って、支配人の意識レベルを高めました。会社がどういう方向に向かうのか、そのために必要なスキルは何か、スキルをどう使って収益アップ、CSアップにつなげるのか、お客様、株主、従業員という3つのステークホルダーの良好な関係がレベルアップすることの大切さ等々を、研修を通じてまず叩き込んだわけです。
研修会議には支配人と一緒に本社の役員、部長クラスにもほぼ毎回出てもらいました。僕の方針を本社の方たちにも理解させるのに、わざわざ別の会議を持つ必要はないので、研修時にグループディスカッションやケーススタディをやって、本社のスタッフにも支配人と同じ体験をしてもらいました。
もう1つの研修は、CSアップ担当が関わった「CSアップ研修」です。CSアップ担当がサイトを回って議論をしたり、支配人が本社に集まる研修会議時に外部講師を招いたりして、CSアップがいかに大事かを教育しました。マインドアップ研修でのリーダーシップやマネジメントに加え、CSアップが必要だということを叩き込ませていただきました。
研修以外では、サイトでのお客様満足度を測定しました。ミステリー・ショッパーという形で外部委託をしまして、実際に各サイトの接客レベルチェックを昨年は2回行い、点数を付けました。これを21サイトで共有しますから、競争心が芽生え、CSアップへの意識付けがなされます。
でも意識付けだけではダメなので、CSアップのためのキーワードとして、〝たくさんの、ちょっとうれしいへ〟というサービステーマを皆で作ってもらいました。例えばブランドショップや高級レストランと、映画館とではCSアップに必要とされる要素が異なります。接客の心は同じだとしても、お客様と接する時間、お支払いいただく金額が違いますし、映画館の場合は座席などの設備面や音響面、トイレの清潔さなどが重要視されるでしょう。ですから、接する短い時間その一瞬に、お客様に〝うれしい〟〝たのしい〟と思ってもらえるか。“ちょっとうれしい”をたくさん感じていただけるように、笑顔、元気な声、ご挨拶、一言のプラスアルファのお声掛け、きれいな劇場、身だしなみ、こういった当たり前のことを実践しました。

本誌 率直に聞きますが、支配人の仕事は忙しいでしょうから、それに加えて、これだけの研修を行うことに、社内から反発はなかったのですか。

宮田 正直に言いまして、社内では〝研修にお金をかけるのであれば、給料を上げて〟という意見もありました。ただ僕はその時に言ったのは、黒字化が実現された時には当然成果を分け合う、給料アップは考えますが、興行が厳しい時代だからと言って単純に縮小均衡するのではなくて、やっぱり従業員の皆さんそのものの価値を上げるための投資というのは、続けるんだと。それに反対であれば、会社を辞めてもらって結構ですとハッキリと申し上げましたが、辞めた人はいませんでした。

本誌 社長として方針を述べて、研修を通じて、会社の方向性、価値観などを共有できた。これが、赤字脱却の大きなベースになったわけですね。

(2)会員数とCSをアップ

宮田 そうです。次に、「取り組み」の2番目として「チーム2・0」と「チーム7:3」を行いました。CSアップと同時に、収益アップも行うべく、当社の会員組織「CLUB‐SPICE」の加入率を毎日2%以上、つまり来場したお客様のうち2%超に会員になっていただこうと、「チーム2・0」の標語を掲げました。結果、僕が就任した2年前に比べて、2倍ほどになっています。今後は会員組織を通じてプッシュ型マーケティングを行っていきます。広告出稿や新聞の折込チラシといったマスマーケティングに加えて、会員の方を対象にする、或いはその中のヘビーユーサーの方に手厚い特典を打ち出すなど考えられます。
日々2%以上の加入率を維持させるために、サイトではチケットを買っていただく時に、会員でないお客様には説明をして会員になっていただく。現場からは、特に混雑時などは余計なことだと思われてしまいますが、何故加入促進が必要かをきちんと説明しました。信頼され愛される劇場という企業ビジョンは、サービスを使っていただくお客様を増やせなければ達成もできない、お客様が増えれば収益にもつながるし、CSアップにもつながりお客様の笑顔も増える、働いている人も嬉しくなる。こういう話を、本社から発信し各サイトへ、支配人経由で伝えました。勧誘の上手な従業員を、2%に届いていない別のサイトへ派遣するなど、全国的に大きく盛り上がりました。最初は大変なこと、面倒なことという意識でしたが、途中からは競って会員の比率を上げましょう、サービスを提供しましょうと意識が変わっていきました。結果として、チーム2・0は従業員の意識を向上させる、CSを上げる、収益を上げると、全部がプラスの方向に変わっていき、大成功でした。サイトの従業員はやらされている感がなく、積極的に取り組んでいただいています。

本誌 「チーム7:3」というのは、どのような取り組みですか。

宮田 シネコンの1年間は、3割の繁忙期と7割の非繁忙期に分けられます。この3割の繁忙期にいかにコンセッションの売上を上げるかが大事になるわけです。3ヶ月半ほどのお客様の多い期間に、売店での購買率、つまり興収以外の収入を増やそうという取り組みがチーム7:3です。「ベスト・プラクティス・アワード」という社内コンテストを設け、本社の売店事業部が購買率を上げるための具体案を作って、それを現場に投げ、サイト毎で目標を立て、競争してもらいました。購買率を含めた当初の目標に対する達成度や、サイトでの盛り上がりぶりなどを評価し、一番大きな成果が上がったサイトを表彰しました。

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