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インタビュー/光武蔵人監督「サムライ・アベンジャー」

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インタビュー/光武蔵人監督「サムライ・アベンジャー」

2010年08月16日
インタビュー



「サムライ・アベンジャー/復讐剣 盲狼」


光武蔵人監督

 19年間に渡りアメリカの映像業界で鍛練を積み、現地で製作したサスペンス・スリラー「モンスターズ」で長編映画監督デビュー(2007年、DVDリリース)を果たした光武蔵人監督。
 その光武監督が「今の自分が出したいものと、出せるものを全てやってみた」と全精力を注ぎ込んで完成させた長編第2弾「サムライ・アベンジャー/復讐剣 盲狼」が、いよいよ劇場公開&DVD発売(配給、発販:マクザム)を迎える。2009年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭をはじめ各国の映画祭に出品され、続々と海外での配給も決定している本作。脚本・製作・主演も全て自身で務めた光武監督が、製作秘話、作品への想いや公開への意気込みを余すことなく語る!!



「サムライ・アベンジャー/復讐剣 盲狼」
監督:光武蔵人
出演:光武蔵人、ジェフリー・ジェームズ・リポルド
~あらすじ~
全編に渡り光武監督のこだわりが詰め込まれた本作は、マカロニ・ウエスタンにチャンバラ、ゾンビまで登場するハイ・インパクト・ムービーだ!物語の主人公は、犯罪組織の冷酷なボス・フレッシャーに家族を惨殺され、自身も両目を失った一人の男。数年後、男は盲目の剣士として復讐に立つ。しかしその道程には、フレッシャーが差し向けた7人の刺客が立ちはだかるのだった――。
公開:8月21日(土) 渋谷アップリンクX
DVD:(セル)8月27日(金)/(レンタル)9月3日(金)
公式HP:http://www.samurai-avenger.jp/



足を洗う覚悟で製作


――この映画は監督のどういった思いから生まれた作品でしょうか。


光武蔵人監督(以下、光武) 監督長編デビュー作「モンスターズ」は、自分が構想していたような形で世界配給ができなかったんです。日本ではマクザムさんにDVDリリースして頂きましたが、結局日本のみの発売に留まり、しかも完成(04年)からリリースまでずいぶんと時間がかかってしまいました。もちろん色々なマーケットに持って行きましたが、有名な俳優が出演しているわけではないですし、純粋なインディーズ映画はわかりやすくジャンル分けできていないとマーケットに乗せることは難しかったですね。
 他にも諸々の理由はあると思いますが、なかなかパッケージ化しにくい作品だったなという感想です。そういった失敗を、今回の「サムライ・アベンジャー」では全部解消しようと心掛けました。「モンスターズ」で最も指摘されたことは、日本人の僕がアメリカで製作したのに、なぜ日本人っぽいものやらないのか?ということ。アメリカは多民族国家なので、「モンスターズ」のようにどこの国の人が演出してもあまり違いがない作品だと響かないようです。


――外国人にはそういった壁があるのですね。


光武 ある程度のレベルにまで達してしまえばそうでもないのかもしれませんが、少なくともマーケットに入っていこうとしている段階では、自分のアイデンティティーやバックグラウンドを出したもので勝負した方が(成功への)近道かもしれません。


「モンスターズ」ジャケ写
――監督のデビュー作「モンスターズ」のDVDをリリースする際もインタビューさせて頂きましたが、あの作品はウェブサイトで募集した原作の映画化だとおっしゃっていました。


光武 あれは元々舞台劇の脚本だったんですが、映画化にあたって自分の意見をたくさん取り入れてもらったので、7割くらいはオリジナルから変更されています。ただ、アメリカ人の脚本家の方の作品がベースであるのは確かです。


―― 一方、今回の「サムライ・アベンジャー」は、監督が一から作り上げた作品ですよね。アイデンティティーを強く感じました。一コマ一コマ、監督がこの作品に懸ける意気込みが伝わってきました。


光武 今の自分が出したいものと、出せるものの全てをやってみたという感じです。この作品で職業映画監督になれなかったら足を洗うぞという覚悟でやったもので、例えこれが最後の長編映画作品になっても悔いが残らないほど全力を尽くしました。


――マカロニ・ウエスタン、チャンバラ、ゾンビにスプラッタと、前作とはガラッと雰囲気が変わりましたね。


光武 繰り返しになりますが、配給ベースに乗らなかった「モンスターズ」の反省から、次はアイデンティティーを生かした作品をやらなければならないという思いがありました。
 そうやって新作の企画を練っていた当時はJホラーが世界的にブームになっていた頃で、日本人にはホラーが求められていると感じていました。自分も怪談ものをやるべきなのかなとも思いましたが、出口が決まっていないインディーズ映画の場合、エンドユーザーに届けるまでに数年かかってしまいます。そうすると、公開する頃には既にJホラー自体が下火になってしまうのではないかなと予測したんですね。実際にその通りになってしまったのですが、次に来るものは何かと色々考えていく中で、ジャパニーズアクションが良いのではないかいう結論に至ったわけです。


――前回のインタビューの際、「モンスターズ」製作の前に「サイレントソード」という企画を進められていたというお話を伺いました。結局その作品は流れてしまったとおっしゃっていましたが、今回の「サムライ・アベンジャー」とは全く別物ですか。


監督が自ら熱演!
光武 「サイレントソード」も肉体的ハンディキャップを持った主人公の復讐アクションという点では同じですが、内容はシリアスなもので、「サムライ・アベンジャー」とは別物です。それよりも、04年に撮った「復讐剣 血塗れ狼」という短編映画が原型となっているんです。予算がなくて短編にしたのですが、大作のようにストレートな内容にするよりも、低予算を逆手にとって、笑える、パロディ風の映画にしました。そうすると、見た人の反応がすごく良かったんです。僕がお願いしているセールスエージェントの会社が、マーケットで「モンスターズ」のついでに短編の「復讐剣 血塗れ狼」をバイヤーに紹介すると、世界各国のバイヤーがむしろ短編の方を気にいってくれて、「こっちが長編なら買いたいんだけどね」と言ってくれました。そこでちょっとしたマーケットリサーチができて、今世界のお客さんはこういうものを欲しがっているんだなと把握することができましたね。


――私はこの作品を見て、はじめにクエンティン・タランティーノ監督の作品をイメージしました。何か意識はされたのですか。


光武 09年は、本作を持って世界6カ国、計10個の映画祭に行くことができたのですが、色々なところでタランティーノテイストだと言われました。確かに、「グラインドハウス」「キル・ビル」、あるいは70年代のジャンル映画にオマージュを捧げたような雰囲気は似ているのですが、意識はしていません。世界中に同じようなことを考える監督はたくさんいるんだなという感じですね。
 ただ、タランティーノ監督は力があって既にメジャーな方ですので、エンドユーザーに作品を迅速に届けることができます。世の中に出回る速度があちらの方が遥かに上なので、我々の方が二番煎じ的に見えてしまうことはあるかもしれませんが、それはスタジオ映画とインディーズ映画の差なのかなと思いますね。


――目指しているところが近かったという感じですか。


光武 タランティーノ監督と僕の大好きな映画は被っていると思います。そういうのに影響された我々がやりたいと思っていることも非常に近いのだと思います。


出るものは大袈裟に出した


――本作は、主人公の盲目の剣士「盲狼」が、目の前に立ちはだかる7人の刺客と対決するストーリー展開が主ですね。それぞれの刺客が非常に個性豊かでしたが、誰かモデルがいるのですか。


「柳生烈堂」がモデルの老人剣士
光武 モデルありと、まったくオリジナルのものが半々ぐらいですかね。例えば、胸をさらけ出して催眠術を駆使する女殺し屋は、「子連れ狼」シリーズの「親の心子の心」というエピソードに出てきた女剣士がモチーフです。また、眼帯の老人剣士は、やはり「子連れ狼」の悪役「柳生烈堂」がモデルとなっています。
 一方で、ゾンビを操る妊娠中の魔女などはオリジナルです。胎内にいる子供を楯に使って戦いを挑んでくるキャラクターをずっと前に思いつき、この映画に登場させました。


――第1の刺客、トラックの運転手役は「モンスターズ」で主演だったカイル・イングルマンですね。


光武 そうです。僕の友達の俳優さんですが、実力のある頼り甲斐のある俳優さんなので、オープニングを任せたいなと思い、彼に頼みました。


――彼が腹を切られた時の、腸の飛び出し方は半端じゃなかったですね(笑)


光武 出るものは中途半端にせず大袈裟に出しました(笑) 残酷描写は、リアルにしてしまうと陰惨になってしまうので、それを派手に派手にベクトルを上げていくことで、気持ち悪過ぎて笑っちゃう、派手過ぎて笑っちゃう方向に持っていきました。


――先ほどの話から、「子連れ狼」を強く意識されていることはわかりました。また、作品の最後に「岡本喜八監督に捧ぐ」という文言が表示されますが、岡本監督からも影響を受けているのですか。


光武 はい、心の師匠と呼ばせてもらっています。残念ながら映画撮影の現場ではご一緒できなかったですが、実際にお付き合いさせて頂き、色々教えてもらいましたからね。晩年、監督が海外に行く時は僕が通訳させて頂きましたし、僕が学生時代に短編を制作していた頃から色々アドバイスを頂きました。残念ながら05年に亡くなられましたが、この作品を監督に捧ぐという形にさせてくださいと、監督の奥様である岡本みね子さんにお願いしました。


アマンダ・プラマーも出演!


――本作には日本人のキャスト・スタッフもたくさん参加していますが、それはアメリカでコミュニケーションを取っていたメンバーなのですか。


光武 そうですね、(拠点にしていた)ロサンゼルスには日本人の俳優、スタッフがけっこういて、横の繋がりはあるんですよ。日本人だけで固まって映画を撮っている人もいますが、僕はあまり垣根無く、才能のある人に集まってもらいました。今回はいい感じの混合グループになったと思います。


ジェフリーが華麗な殺陣を披露!
――日本人キャストも続々と登場する一方で、光武監督演じる主人公「盲狼」と双璧で活躍する「流れ者」役は、ジェフリー・ジェームズというアメリカ人ですね。


光武 正直な話をしますと、アメリカ映画として、アメリカで映画を上映する場合、アジア人が主人公の映画はまだ弱いんですよ。アメリカ人を主人公にすることが必要不可欠な要素ということは否めません。そこで、ジェフリー(=左画像)のキャラと僕のキャラが、50:50でなければならない、という考えがプロデューサー的な視点からはありました。


――ジェフリーは華麗な殺陣を披露していますが、経験はあったのでしょうか。


光武 オーディションで選んだのですが、彼は、自称元アメリカ軍の特殊部隊なんですよ。また、現在柔道の先生もしているらしく、武術のバックグラウンドがある人でした。オーディションに自分の木刀を持ってきて、演武をやってくれたりして、この役はジェフリーだなと即決状態でしたね。


――また、「パルプ・フィクション」のハニー・バニー役等で有名なアマンダ・プラマーが本作に出演していて驚きましたが、彼女はどういう経緯で出演が決まったのですか。


光武 アマンダとは06年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で出会いました。その年はトビー・フーパー監督が審査委員長を務めていて、当時トビー監督と交際していたアマンダも同伴して来たんですよ。その年は、岡本喜八監督が亡くなった翌年だったので、監督作品「肉弾」の追悼上映があり、僕はスタッフとして参加していたんです。
 その映画祭期間中、僕はたまたまトビー監督とホテルの部屋が向かい同士だったのですが、トビー監督の荷物が無くなる騒ぎがあり、僕がサポートしてあげたんです。すると、お二人とすぐに友達になれまして、アメリカに戻ってからもアマンダとは月に1度くらいは一緒に食事する仲になりました。そして今回、映画を撮るという話になって、アマンダがセットに遊びにいきたいと言ってくれたので、それならば少しだけご登場頂けないかと話してみたところ、快くOKしてくれました。まさに「ゆうばりマジック」ですよ。
 しかも、アメリカの俳優さんは、映画に出演する際に契約書を作ったりエージェントを通したりだとか、なかなか直接交渉はできないものですが、当時アマンダにはアメリカのエージェントがいなかったんですよ。なので直接交渉ができました。そういった偶然が重なって出演して頂くことができ、非常にラッキーでしたね。


アマンダ・プラマーが登場!
――アマンダ・プラマーのようなビッグネームが出演していると、やはり印象も変わってきますね。


光武 普通に話しているとエキセントリックなおばちゃんなんですが(笑)、カメラを通して覗くと、存在感やオーラに、キャリアの短い役者さんには無い重みがありますね。撮影監督や照明さんにしても、彼女が入った画を覗くと、「オオッ、違うよね~」と言っていましたし、鳥肌の立つような魅力を持ってらっしゃいました。


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