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AKB48で思うこと…

2011年06月15日

 オタクを熱狂させているAKB48。

 先ごろ東京・北の丸の日本武道館で総選挙が行われた。その模様はメディアで大々的に報じられた。確かに東日本大震災で世の中が暗くなっているだけに「元気にする」「起爆剤」なんて言えば、そうなのかもしれない。が、福島第一原発事故で放射能汚染が深刻になっている中で、メディアまで入り混じってバカ騒ぎするなんてアホらしいと個人的には実感した。「取材するのが記者だろ!」と言われるかもしれない。しかし、その総選挙に集まった報道陣は内外から500人以上。だが、会場ではファンに混ざってマスコミもファン気分で熱狂していること自体が疑問だった。

 いずれにしても、投票券入りのシングルCD「Everyday、カチューシャ」は、150万枚近く売れ、総選挙への投票数は116万票にも達したと言うから驚きである。もっとも、ファンの中には、投票券を手に入れるために1人で何千枚もCDを買った人もいれば、1人で800万円もCD購入のために費やした狂気的な者もいたという。その結果、今回は前田敦子がトップになり、2位には前回1位だった大島優子がなった。

 基本的に、この総選挙は「前田」か「大島」かの争いだと言われている。裏返すと、この2人のファンを煽ることがCDセールスの1つのポイントになるだろうし、メディアに対してもキャッチになる。

 それにしても…。冒頭でも記したが、当日の会場には500人も取材陣が駆けつけていながら、大した批判もなく、それこそ主催者の描いたプレスリリースに沿って取材して総選挙を盛り上げるっていうのも、いささか疑問である。

 ところで、まるで「社会的現象」とまで言われる「AKB48人気」「総選挙」だったが、これは個人的な計算であるが、AKB48のコアなファンと言うのは、CDセールスから見る限り、おそらく7~8万人いるかいないかという程度ではないか。「Everyday、カチューシャ」のセールスについて、初回枚数がMr.Children、宇多田ヒカルを超えたと言っているが、ファンの人数で言ったら圧倒的にミスチルや宇多田だろう。と言うことは、もしミスチルや宇多田のファンが、AKB48のシングルのような買い方をしたら、あるいは1000万枚を超えてしまう可能性だってある。「アイドル」というカテゴリーでみても、おそらく嵐やKAT‐TUNなんかとも比較できないだろうし、洋楽だったら、レディー・ガガのファンの方が圧倒的に多いと思う。要するに、この場合、オタク的「マニアック」なファンはAKB48に多いと言う程度の比較にしかならない。

 ところで、AKB48で、フッと思ったのは、いわゆる「アイドル評論家」の顔が見えてこないことだ。80年代、90年代には、週刊誌でも何でも「アイドル評論家」なるものが登場してきた。オタクと言ったら宅八郎、アイドルは中森明夫、北川昌弘といった面々…。最近は現役女子大生アイドルで「アイドル好き」を標榜する鎌田紘子とかいるらしいが…。

 「アイドル評論家」の元祖と言ったら中森だろう。彼は80年代に「オタク」(83年に「おたくの研究」というコラムを書いた)という言葉を認知させた人物である。何年か前からは「アイドル国宝」という言葉を使ってコラムを書いたりしていた。

 ところが、その人たちが、AKB48では目立って登場してこない。これは、あるいは「おニャン子クラブとは違う」と思っている秋元の戦略なのか?などと思ったりもするが、いずれにしても、AKB48では何故か南海キャンディーズの山ちゃん(山里亮太)やテリー伊藤である(テリーはモーニング娘。にも絡んできたが…)。やや理解に苦しむが、これも時代の流れなのか? 

 AKB48は、秋元が、かつてのおニャン子クラブをもとに、「身近で、会えるアイドル」として結成したと言われる。おニャン子は、芸能界はテレビを使った「高校のクラブ活動」といった要素が大きかった。一方、AKB48はネットを手始めにテレビに広がった感がある。人気の高い子たちを「神」と表現するのもネットを意識してのことだろう。そういった意味で、その周辺ビジネスも含め一段と「オタク化」していることは確かで、とにかく一部のコアなファンを煽ったビジネスを展開している。確かに、その部分では「社会現象」なのかもしれないが、どう見ても「大衆的」とは言い難い。

 そう思うと「アイドル評論家」も登場しにくい部分があるのかもしれないが、80年代と00年代のアイドル…。よくも悪くも彼女たちを取り囲むファンの意識や環境はメディアも含め大きく変わったことだけは否めない。

(渡邉裕二)

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