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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.99】
「アウトレイジ~」、公開延期で “状況” 変化

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.99】
「アウトレイジ~」、公開延期で “状況” 変化

2012年10月10日

 邦画興行で、明暗がはっきりと分かれた。 “明” は「アウトレイジ ビヨンド」。 “暗” は「新しい靴を買わなくちゃ」。バイオレンス映画が勝って、恋愛ものが負けた。といった単純な理由ではない。一つに、マーケティングのありようが、勝負の分け目になったと思う。

「アウトレイジ ビヨンド」
▽10月6、7日=全国動員20万6614人・興収2億7924万7500円
▽10月6~8日=29万4485人・3億9528万7800円(225スクリーン)

「新しい靴を買わなくちゃ」
▽10月6~8日=7万4152人・9883万0000円(203スクリーン)

 「アウトレイジ~」は、前作「アウトレイジ」(最終興収8億円)の出足を大幅に上回り、最終では今のところ15億円以上も視野に入る。同じ監督のバイオレンスものでは、「BROTHER」(同9億円)を凌ぎ、北野監督の作品としては、全く新しいヒット作になると言っていいだろう。

 また本作は、昨年の東日本大震災以降の世情などを考慮して、公開が延期された作品でもあった。この延期が、人々のマインドの変化を微妙に反映して、興行への追い風となった点は重要である。単純に言えば、宣伝がやりやすくなった。それが、宣伝の弾みになり、多くのメディで浸透した作品の “精神” が、ストレートに人々に届いた。昨年の秋ならば、こうはいかなかっただろう。

 ただ、マーケティングとは、作品が生み出すものでもある。もちろん、全的にではなく留保的だとは言え、本作の場合は中身に相応の威力があったから、マーケティングの力に結実したと言える。作品に押された形で、宣伝面での監督はじめ各俳優陣の奮闘ぶりは見ものでさえあった。

 逆に、「新しい靴~」は、そのマーケティングに鋭さが見えなかった。俳優陣の露出を含む作品情報が、人々の関心の幅を広める役目を、大きく果たすことはなかった。マーケティングの “乗り” が、あまりいいように見えなかったのである。中身の単なる是非を超えて、マーケティングに関する限り、中身に何らかの問題があったとしか言いようがない。

 簡単にマーケティングと言うが、過去はともかくとして、今では作品の中身を逸脱して、生半可にそれは敷設できるものではない。それだけ、作品主体の意味合いが強くなっているのだが、「アウトレイジ~」は、中身に “芯” があったからこそ、多くの情報伝達が可能になったのだと言える。あとは口コミが、きくかどうかだ。

(大高宏雄)

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