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座談会/ユナイテッド・シネマ 営業統括本部 企画編成部 3室長

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座談会/ユナイテッド・シネマ 営業統括本部 企画編成部 3室長

2011年08月05日



――企画編成室――

ドキュメンタリー「LIFE IN A DAY」公開

 

LIFE IN A DAY.jpg――番組編成においても、かなり独自色を出していくようですね。話題のドキュメンタリー「LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語」を8月27日より全20劇場で公開する、しかも“特別協力会社”として宣伝面でも積極的に関わると聞いて、驚きました。

 田部井 5月、としまえんのIMAXデジタルシアター内覧会で、配給のマジックアワーと話をしました。この時、私の中で、何か感じるところがあったんですね。Google×YouTubeのプロジェクト、リドリー&トニー・スコット兄弟が製作総指揮、これは面白そうだと。ビジネス的には難しくても、震災後の大変な状況にある2011年の今、この作品をやる意味があると。先方は映画の特性やサイズから、ある程度限定公開をイメージしていたようですが、6月の二度目の打ち合わせの時には、全20劇場でやりたい、一緒に宣伝もやりましょうと、逆提案をしました。

――
社内のコンセンサスをとるのが、大変だったのではないですか。 

田部井 社長、役員、企画編成部以外の部署の社員ら約20人で試写を見て、意見を出し合い、その結果としてUC全20劇場での公開を決めました。

(画像:「LIFE IN A DAY」)

――とはいえ、一般的に考えて、これだけミニシアター色の強い作品を、シネコン20劇場で上映するのは、なかなか難しいと思いますが。

田部井 そうですね。当初の段階から配給宣伝は、予算も含めて20劇場に対してきめ細かい対応は厳しいと判断し、劇場宣伝は当社がプランから各種告知物等の制作のハンドリングまで行うようにしました。

――
だからこその“特別協力”という関わり方なのでしょうね。

田部井 “特別協力”として、公開までのあらゆる局面で関わっていきます。同日公開のオーディトリウム渋谷さんと、打ち合わせで同じテーブルにつくこと自体が異例のことですが、そこで宣伝のコピーを練ったり、料金設定を検討したり。都内の単館ならともかく、シネコンで上映するにはマイナスの要素も当然ありますが、そこは見せ方次第。ドキュメンタリー映画ですが、むしろ“ソーシャルネットワークムービー”という新語を作って打ち出していきます。インシアターの宣伝でも、色々と工夫していきます。一例では、月刊のリーフレットの特別号を作りました。毛色の近い「ライフ‐いのちをつなぐ物語‐」(9月1日公開)と併せて、2作品を一緒に押し出すデザインとし、全世界一斉試写会のあった7月24日から配布を始めました。興行的には、おそらく東京とローカルで差がつくとは思っていますが、各劇場のスタッフには“特別協力”の意味合いをしっかり伝えて、「自分たちの作品」として興行することの意義を理解してもらいました。

――「LIFEIN A DAY」のような作品を上映するのは、会社としての意識が変わったということでしょうね。

田部井 やはり経営基盤が整ってきたことが精神的な余裕になり、また本社のファンクション、企画力と劇場の現場力が有機的に繋がることがイメージされてきたので、多少リスクのある案件だとしても、果敢にチャレンジしていこうと思っています。須藤.jpg
 須藤 今後、企画編成部の姿勢、性格を変え、一人ひとりのマインドも変えていきます。今まで以上に、番組編成とインシアター宣伝をシンクロさせます。動員の多い時期、少ない時期があり、その時々の稼ぎ方というものがあるものです。繁忙期であれば大作映画でどれだけ収益を広げるかを最優先し、それ以外の時期には、自主的に作品を取りにいく。「LIFE IN A DAY」も8月27日初日であり、夏興行が落ち着いてくる時期ですし、ODSもそのような存在だと位置づけています。

――編成と宣伝の連動は、これまではどうだったのですか。

須藤 これまでも編成と宣伝は連動してきました。ただ、配給会社との打ち合わせは別々であり、配給会社の誰と話をするかで、目指す着地点にズレが生じてしまうこともある。ですから、今後は、当社の編成と宣伝、配給会社の営業と宣伝プロデューサーらが同じテーブルに座って、色々な課題を一つの場で決めていくように変えていきたいと思っています。(写真:須藤氏)

――須藤さんは2年前の2009年4月に、人事総務部長から企画編成部副部長に異動になり、計数管理を担当してきました。この人事は、社長の肝いりでした。そして、今年4月からは企画編成部 部長、企画編成室長兼務となりましたね。

須藤 上司として、常務で営業統括本部長の関本(信)、理事で副本部長の田部井がいますから、組織上は殆ど変わりません。

――とはいえ、番組と宣伝の部隊をどう指揮していくのか、非常に興味があります。

須藤 社内的には、企画編成部の各セクションと20劇場が、同じ方向、同じ目標で動いていくようにするのが、私の役目だと認識しています。私はこれまで計数管理を重点的に担当してきて、4月1日に企画編成室長に着任して以降も、その姿勢は変わりません。ただ、これまでは「結果」から物事を分析することが多かったのですが、これからは「始まり」から見ていく必要があると考えています。このコストがどのように収益に結びつくのかを、配給会社の皆さんにご協力を仰ぎながら、今まで以上に精査していきます。今後、私の立場から、1年を通じて、どう収益を上げていくのか、どのようなマインドで進んでいくのか、関係部署全体に示していくつもりです。近いところでは、動員の落ち込みやすい秋興行で、どう稼いでいくのかが、カギですね。

また対外的には、これまでにUCが培ってきた現場と本社一体の総合力をベースにしたより強固なパートナーシップを配給会社の皆さんと紡いでいけたらと思っています。
 
田部井 7月20日に、地区責任者が集まる定例の営業会議をやりました。例年ならば、夏興行に向けての最終確認に終始していましたが、今回は、秋の施策もかなり具体的に提示することができました。これも一つの成果と言えるかもしれません。



――新規事業開発室――

シネマプロットコンペティションで新機軸

――新規事業開発室の案件である、映画のアイデアを募集するコンテスト「シネマプロットコンペティション(CPC)」が、今年も始まりました。
 田部井 CPCは今回が第6回。これまでのプロット応募数は、第1回から372、408、892、743、1554と推移し、5年間で合計3969本のプロットが集まりました。この中から4本が映画化されました。

――今年の特徴は、何でしょうか。

 田部井 一つは、一般部門において、これまでテーマは自由、「UCの劇場のある街」を条件にしていましたが、今回はこの条件を外しました。過去5年の傾向として、応募されるプロットのジャンルが、どうしても落ち着いたドラマに偏っていました。当社としてはアクションやサスペンス、ファンタジー、何でもありの構えなのですが…。そこで今回は「みんなの夢をプロデュースする」という部分を押し出して、条件は無しにしました。石井監督.jpg

――審査委員長が若手の注目株、石井裕也監督ですね。昨年の森田芳光監督をはじめ、これまではベテラン監督が審査委員長を務めていました。

 田部井 石井監督は今年2本の新作があります。プロット募集が始まった6月に「あぜ道のダンディ」(配給:ビターズ・エンド)、CPCの受賞結果を発表する11月に「ハラがコレなんで」(配給:ショウゲート)が、タイミング良く公開されますので、審査委員長をお願いし、快諾していただきました。また、今回は、ベネフィット・ワンの協賛が付きました。ベネフィット・ワンは、企業の福利厚生業務の代行サービスを行う会社で、約450万人の会員を抱えています。(写真:石井裕也監督)

 

――大きな数字ですね。

 田部井 この450万人に対し、CPCをアピールし、CPCに参加してもらい、プロット応募数の底上げを図ります。今回、協力会社のアスミック・エースから、審査員として小川真司プロデューサーに出ていただきます。ベネフィット・ワン会員の中から抽選で選ばれた人を招待して、小川さんによるティーチインと、製作を手掛けた映画の上映会をセットにしたイベントを、8月に豊洲で開催予定です。ここで小川さんには、プロット応募のきっかけ作りを手伝っていただきます。

――一般部門の他に、アニメ部門もありますね。

 田部井 アニメ部門は、今回もブロスタTVの協賛のもと、入賞作品は映像化が確約されます。よりプロの視点が欲しいということで、アニメ雑誌・月刊ニュータイプの水野寛編集長に、審査員を務めてもらいます。

シネマプロットコンペティション.jpg――CPCは、デジタルSKIPステーション(SKIPシティ)も協賛しています。

 田部井 CPCから派生する事業として、デジタルSKIPステーションと協業し、CPCに応募されたプロットを映画化するプロジェクト「D‐MAP」を行っています。第2回CPC(2007年)の応募作品「ブラバン!」を原案に映画「ソロコンテスト」が、第3回(2008年)の準グランプリ作品「夢が夢なら」を原案に映画「ネムリバ」が、D‐MAP第1、2弾として制作されました。現在、第3弾として、第5回(2010年)のテーマ部門賞作品「バルーンリレー」を原案にした映画化を進めています。5~6月に監督募集を行い、7月10日に監督候補者と面談をして、監督が内定しました。間もなく撮影に入り、11月には完成、来年2~3月にかけて公開します。これまでの作品と同様、80~90分程度に仕上げる予定です。(画像:第六回シネマプロットコンペティション2011)

――D‐MAP第2弾「ネムリバ」とは、何か違う部分がありますか。

 田部井 前作の制作プロダクションがコイノボリピクチャーズ(シネバザール)、今回はアルタミラピクチャーズです。桝井省志代表がプロデュースします。「ネムリバ」は昨年10月に埼玉県内のUC5劇場で公開しました。今回も埼玉県を中心に興行展開していくことは変わりませんが、前回ほど“ご当地映画”ということを意識せず、全国のお客様に見てもらえるような作品作りを目指していきたいと思っています。このような目標を掲げることで、劇場のスタッフにとっても、CPCへの取り組む姿勢が変わってくるはずです。これまで何度か述べているとおり、全社的に同じマインドで進んでいく中で、「バルーンリレー」の全国公開も、その意識づけの一つです。

――
CPCの運営はどのような体制ですか。

田部井 外部の会社に運営事務局作業をお願いしていますが、やはり当社でコントロールする作業がかなりあります。ただし、今年からは、新規事業開発室の案件は、担当の中村(佳子)がきめ細かく対応しているので、いろんな意味で進化していると思います。


田部井.jpg――新規事業開発室の案件は、CPC以外にもありますか。

 田部井 UC浦和(2007年10月開業)で、浦和映画祭を初開催すべく、支配人や地区責任者が中心となって準備を始めています。UC浦和は4年目ですが、当初の目標数字には達していません。しかし、伸びる余地はあり、映画祭を通じて動員の底上げを図ります。10月後半開催の予定ですが、CPC審査委員長の石井裕也監督が実は浦和出身なんです。そこで、だめもとで、ショートフィルムを作っていただけないか打診したところ、二つ返事でOKをいただきました。この映画祭でお披露目できるよう準備を開始しました。
(写真:田部井氏)

――マガジンハウスから刊行された「ペンギン夫婦がつくった石垣島ラー油のはなし」の映画化プロジェクトもありました。発表から1年が経ちましたが。

 田部井 これも、新規事業開発室の案件です。最初の趣旨どおり、観客の声を集めながら企画を進めている最中です。また、現在は重要な製作委員会組成をしているところですが、私と中村も出資社営業をしています。とても勉強になりますね。新規事業開発室としては、他に、共同開発という立場で関わっているドキュメンタリー映画が数本あります。どういう形で宣伝、公開するか、制作元と議論を重ねています。いずれも中高年・シニアの方が興味を持つであろう社会性のある内容であり、UCの劇場で上映する意義は大きいと考えています。いわば“中高年・シニア向けのODS”であり、当社の企業価値向上、ブランディングにも一役買うはずです。それを、全社共通の認識で取り組めるように、準備を進めています。

――最後になりますが、3室長それぞれの決意のほどを、聞かせてください。

 須藤 番組編成、インシアター、劇場の力を結集し、配給の皆さんのご協力を仰ぎながら、最大限の結果が出せるよう頑張っていきたいと思います。

 川辺 ODSに関しては後発なので、まだまだ手探りの部分も多いですが、アグレッシブにこれから展開していきたいと思います。また、いろいろなコンテンツを実施することで、劇場の魅力を最大限に引き出していきたいと思います。

 田部井 新規事業開発室の業務は多岐にわたりますが、新たな収益源の発掘という視点は共通しています。各案件において、関係各社に対する提案、交渉、社内の調整を行って、事業化の可能性を探っていきます。お客様に“夢”を提供すると同時に、UCで働くみんなにも“夢”を感じてもらえるような企画や事業を立ち上げていきたいですね。“夢”を“カタチ”にしていく、次なる展開にご注目ください。(了)



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