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「GTFトーキョーシネマショー2011」シンポジウム

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「GTFトーキョーシネマショー2011」シンポジウム

2011年09月22日

「映画界の“今”と“これから”~外国映画をもっと元気にするには~」

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 去る7月29日(金)、東京・丸の内の東商ホールで開催された第24回東京国際映画祭提携企画「GTFトーキョーシネマショー2011」(7月29日・30日)で、「映画界の“今”と“これから”~外国映画をもっと元気にするには~」と題したシンポジウムが行われた。
 洋画メジャー、インディペンデントの配給会社と興行会社のトップが揃って登壇し、日本における外国映画の現状と共に、どうすればもっと映画界を再び盛り上げていくことができるのかなどについて意見が交わされた。もちろん、結論を導き出すまでには至らなかったが、各社トップ、そしてモデレーターの言葉には、映画界の今後を考える上で非常に示唆に富んだものがあった。
 映画界の方々が現状を改めて認識し、力を合わせて映画興行を活性化させていくヒントをまとめる意味で、シンポジウムの模様をここに改めて提示する。日本映画界は“もっと元気になる”のか―。
(テキスト構成:和田隆)



モデレーター:大高宏雄氏(映画ジャーナリスト、文化通信社)

パネリスト:
佐野哲章氏(株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント映画部門 日本代表)

豊島雅郎氏(アスミック・エース エンタテインメント株式会社代表取締役社長)

中川敬氏(TOHOシネマズ株式会社 代表取締役社長)



14年前、何か非常に大きな変化を感じた

大高
 トーキョーシネマショーでは、ここ最近こういった形の講演といったものをやらなくなっておりますが、せっかく配給会社と興行会社の方々が集まる場、珍しい機会ですので、今の映画界のいろんな問題点についてみんなで話し合って、皆さんの現状認識みたいなものをもう一回深めてもらいたいということで、今回このテーマで企画されました。

 テーマは、「外国映画をもっと元気にするには」ということになっているんですけど、今日は一般の方もいらっしゃっています。映画業界にずっと長く携われている方々も多いので現状というのは重々承知していると思いますけども、やはり外国映画、アメリカ映画と言ってもいいかもしれませんけど、アメリカ映画の現状ですね、それがかつてと比べて様変わりしてきたことは皆さんご認識だと思います。

 その中で私が考えていることで言いますと、アメリカ映画がこの10数年でどうなって行ったのかについてよく言うんですけど、一番印象に残っていることがありまして、1997年の7月だったと思います。夏休みの公開で、「もののけ姫」と「ジュラシックパーク:ロストワールド」がぶつかったことがあるんですね。これは日劇、当時の日劇プラザで「もののけ姫」を公開しまして、日劇で「~ロストワールド」をやったんですね。公開初日、当然「ジュラシックパーク」の第2弾だったものですから、凄い動員になるだろうなと映画業界の予想がありました。「もののけ姫」もスタジオジブリの作品ですから、ある程度の動員が見込まれると皆さんが考えていたと思うんですけど、そのような状況の中で動員が「もののけ姫」に圧倒的に集中したという現実がありました。

 いまから14年前になるんですけど、公開初日に日劇に行っていまして、何か非常に大きな変化というのを感じざるを得なかったんです。アメリカ映画の綻びがちょっと見えたような気がしました。逆に邦画の強さ、アニメでしたけど、邦画の強さがそれまでと違うのではないかというような認識がありました。その辺りからちょっと流れが変わってきたかなと。そして2000年に入ってかなり変わってきました。06年に邦画と洋画のシェアが逆転という事態が起こります。この時点で、洋画、アメリカ映画の状況が一体どうなるんだというのがあったと思います。その現状から5年経ってもそれほど大きく変わっていないのではないか。そういう中で今日のシンポジウムを行いたいと思います。

 アメリカ映画について今日のお三方、配給、興行のトップの方ですので、なかなかこういう機会で皆さんでお話しすることは少ないと思うのです。ですので、今日は皆さんの率直な意見を伺いたいと思っています。

 佐野さん、いま概略をしゃべったんですけど、アメリカ映画の状況はこの10数年でどう変わったと思いますか。ソニー・ピクチャーズのトップでやられていますけども、どういう認識でしょうか。


P1170451.jpg佐野 アメリカ映画自体は実は大盛況で、全世界興収10億ドル作品というのがやたら出ているんですよ。スタジオ全体からしてみると、年々売り上げが上がっている状況です。ただ、日本に関して言えば、本当に邦画に対するアメリカ映画の配給・宣伝の仕方が、とても難しくなっていると認識しています。
 昨年の洋画対邦画のシェアで、洋画が46%なんですけど、洋画イコールアメリカ映画では本来ないんですよね。ドイツ、イタリアなどヨーロッパ映画が10%あるんですよ。ヨーロッパ映画にも頑張ってもらい、単純計算で言うと、46%のアメリカ映画と10%のヨーロッパ映画で56%になって欲しいです。
 そういう意味では洋画が弱いという言い方が正しいかどうかは、正直言ってわからないんです。全世界的に見れば、10億ドル超えている映画がここ最近出ています。ただ、日本においては本当に厳しい時代になっていることは仰る通りだと思います。


豊島 インディペンデントの映画会社の人間としての立場で発言させて頂ければと思います。正直、洋画、特に独立系の映画が、非常に厳しいポジションにあるのかなと思っております。それはここ数年のシネマコンプレックスの台頭、装置がどうしてもヒットする映画をたくさん上映して、中庸それ以下の作品がなかなか回数、出来るだけ長く上映して頂くということが、仕組み自体難しくなっているのかなと。そんな中でも独立系の会社は、どうやって生きて行こうかというのを、本当に各社知恵を絞ってやっているところだと思います。
 大きい点としては、以前はビデオグラムのレンタル、セルといったパッケージからの収入を当て込んでやるというのがビジネスの主な生業だったのですが、それがどうしても2次利用からの収入が得難くなっております。なかなか配給で、劇場でのお客さんも集まりにくい、システム自体のそういう風になってしまっているということで、これからどうしようかというところを苦慮しています。


中川 私は日本映画の宣伝が長く、70年代から80年代、90年代とやっていたんですけど、その頃は洋画が強くてうらやましかったですよ。2000年においても邦画が全体の3割、洋画が7割という時代が10年前まで続いていました。02年の時が、邦画530億円で、洋画が1230億円ですね、02年が洋画の最高の年かなと。昨年の10年は洋画が1020億円ですけど、ひとつ気になっていますのは、やはりアメリカ映画にはMPAさんの部分と、インディペンデントの洋画の比率が随分この数年で変ったんじゃないかな。たぶん洋画の買い付け額が高くて、買い付けられなかったということが、もしかしたらここ2、3年の洋画の苦戦の原因になっているのではないかなと個人的には思っています。
 昨年、メジャーのローカルプロダクションもあったり、インディペンデントは年間興収180億円。02年には500億円近くあったと思うんですよ。この部分が下がっているので、もしかしたら作品不足が今の状況を招いているかなと思っています。これだけではないですが。


インディペンデントの洋画配給の問題


大高
 インディペンデントと言われている洋画配給会社、今でいえば東宝東和、角川書店、アスミック・エース、ギャガといった会社ですね。かつての東宝東和、そして角川書店の前身である日本ヘラルド映画といった会社は強くて、今日来ている若い方は知らないかもしれませんけど、東和とヘラルドが競い合った時代がありました。
 そういう流れの中でこれほどインディペンデントの洋画配給本数から興収が下がってしまったことに関して、これは非常に大きな問題だと思っているんですけど、豊島社長、アスミック・エースというのは洋画をやっていましたし、ここ数年は邦画で大作もやっているんですけど、そこら辺の事情については―。


P1170453.jpg豊島 恐らくここ1、2年で買い付ける値段は下がってきていると聞いていますし、我々の恐らく肌感覚では、05年、06年くらいが一番ピークで07年以降は値段が下がってきているのかなと。やはりビデオマーケットが悪くなり、その買い付ける時の礎となっていたビデオ販社さんからのMG(ミニマム・ギャランティ)みたいなものの後ろ盾がなくなったというのを背景にですね、段々マーケットに出てくる値段は下がってきているという認識はあります。
 その代りどうしてもP&A(プリント製作費と宣伝費)のA(宣伝費)の部分というのが、メジャーさんと同じ土俵で我々やらなければいけない。200、300スクリーンとってやる時に、我々独立系が出せるとしても宣伝に3億円くらいというのがせいぜいのところなのかなと。メジャーさんは5億、10億円というブロックバスター作品にマーケティング費をかけるということも聞いています。我々も一時ドリームワークスさんの作品を手掛けたりして、その辺のメジャーさんのようなやり方も勉強させて頂きましたが、メジャーさんと同じ土俵で大きい作品についてはなかなかシンドイなと。MGは下がってもやはりマーケティングコストがかかるという部分では、同じようなことはできないなというのは凄く感じています。


大高 DVD(ビデオグラム)の問題が出てきました。これが今の映画界において、非常に大きな問題です。DVDというのが売り上げの中で、劇場収入とトータルでいろんな映像収益がありますけど、そんな中でDVDの収益が非常に大きかった。そのいわゆる収益構造がここ数年で完全に崩れたことが、豊島社長の話に出てきています。買付値段は安くなったけども、収益構造が悪くなったことで大作が買えない。
 かつての東和、ヘラルドのことは先ほど言いましたけど、その当時は宣伝というのが凄く生きていたんですね。つまり、宣伝によって映画を当てる。元々、東和、ヘラルドはメジャー系の作品を配給したこともありますけども、それほど強い作品をメジャーと同じように扱うことはなかったんですね。
 しかし、それを補うのが宣伝であった。宣伝によって一般の人に強烈にアピールできた。それは今の外国映画における宣伝ですよね。みなさん宣伝を苦労してやっていると思うんですけど、かつての宣伝によってお客さんが来てくれた時代とはまったく変わってしまいましたよね。


豊島 弊社の特別顧問をやってもらっている原正人さん、佐野さんの大先輩にもなられます原さんが、70年代、ヘラルドの宣伝部長として「エマニュエル夫人」とかですね、いろんな作品を当てたという時代がありました。凄く荒っぽく言えば、「騙しが効いた」という風に原さんご自身も仰っているんですけど、正直これだけ情報化社会というか、誰でも個人ベースでも情報が調べられてしまう時代になって、なかなか騙しが利かないと言います。その20年、30年前の宣伝と、今の世の中の環境の違いというのは、インディペンデントの映画を送り出して宣伝していくのは難しくなっている。世の中の仕組みが変わってきていると思います。


佐野 私は原さんが宣伝部長の時の最後の新入社員だったんですけど、本当に凄い人で「デメリットはメリットだ」と言われて、本当に逆手にとって映画を当ててきた方。豊島さんのお話と重複するかもしれないんですけど、当時、本当にインディペンデントって頑張っていて、買い付けて、特別償却で10ヶ月で償却できて、尚且つ利益を来期にも持ち越せた。投機目的の会社は資本力があるので、映画の買い付け金額をどんどん上げていったんですね。それから買付手数料で儲ける会社もあったので、高ければ高く買うほど儲かるという仕組みの会社もあったんですよ。本来、安く買えば儲かるという仕組みなのに、高く買って儲ける会社もあったので、それが今のインディペンデントをダメにしたとも言われています。
 ただ、本当にインディペンデントに頑張ってもらいたい。我々メジャーはポスターひとつ作るのに、本社の承認を得るまでに2ヵ月くらい待つんですよ。インディペンデントはそういうところが我々より自由なので、本当に知恵を絞れば面白い予告編も作れると思います。


豊島 メジャーさんでは出来ないことを我々がやっていかなくてはいけないと思っています。


佐野 円高ですから、スポンサーになる人はいると思うので、是非挑戦した頂きたいと思いますよね。


中川 宣伝に関しては、メジャーもインディペンデントも関係ないと思うんですよ。やはり基本的にメジャーの方が大変だなと思うのは、同時公開で非常にニュースが少ない、ニュースが届くのが直前。ヘラルドとか東和の全盛期の時には、宣伝に手塩をかけていました。今のメジャーの大作というのは、予告編が届くのが公開間際で、しかも同時公開でしょう。作品に力がある時は1ヵ月、2ヵ月の見せ込み期間があって、慣れたところで公開するというのが僕は、作品公開の正しい形だと思うんですよ。それが非常に難しくなっているのをなんとかしなければいけない、して欲しいという期待もあります。


メジャーとインディペンデントの宣伝の違いとは

佐野 中川さんは宣伝を30年以上やられた先輩ですけど、メジャーの宣伝はインディペンデントみたいなことが出来ないというのが実情です。題名ひとつ、日本語題名にするにも。一方で、同時公開というのは海賊版対策なんです。ネットに載ってしまうと、パソコンで観て満足している人がいるんですね。映画人口が減る一因です。そういう人たちに、家で見ないで映画館で観てもらうために3Dにしたり、音も映像も進化していったところがあるんです。
 冒頭に洋画の宣伝が難しくなってきていると言いましたけど、宣伝費で10億円使うこともありますが、使わないと邦画に敵わないんです。例えば、邦画でTV局が絡んでいる作品がTVで大宣伝しますが、我々があれと同等の宣伝費を払ったら40億円くらいかかってしまうと思うんですよね。そうすると60億円、70億円あげても赤字なんです。


中川 TV局が入った大きな作品は媒体換算が数10億円、宣伝マンもTV番組を使った宣伝メニューを考えていて、手を変え品を変え揃えますから、そうすると未知の作品が、いつの間にかお客様にとって身近な親しみのあるものになる、それが事前の畑を耕すことにつながって、大ヒットにつながるという構図ですよね。


佐野 最近、ハリウッドは能がなくシリーズものばかり作ってと言われるんですけど、これは能がなくてではないのです。なぜ、「スパイダーマン」を作るかというとお客様に支持されているし、宣伝をゼロからしなくていいんですね。じゃあ、「スパイダーマン」の権利を半分、日本のTV局に売れるかというと出来ないわけです。そうすると自分で宣伝しなければいけないから、知名度がある程度ある映画をということになる。特にインディペンデントはそうだと思うんですけど、ファンドマネジャーたちは映画のことあまり知らないから、例えば「スパイダーマン6」にはお金出せるんですよ。聞いたことないような映画にはファンドマネジャーたちはお金出さないんです。そうすると有名なフランチャイズ(人気作品・シリーズ)だと仮に失敗しても言い訳が立つんですよ。そういうことで益々シリーズものとか、リメイクというのが出てきてしまうのが現状なんです。


中川 まあでも、これが続くとお金持ちがどんどんお金持ちになってしまう話になる、とにかく未来がないので、なんとか打開の一つとして僕は予告編が大事だと思っているんです。マーケティングの法則に「パレートの法則」というのがあるんですけども、消費者の2割が全体の8割近くを占めるという、どの大体の商品でも言えるらしいんですけど、映画もそれがあるのかなと調べたら、なんとありまして、いま大体映画の総人口は1億7000万人前後ですけども、実際に日本人の全員が映画館に行っているわけではありません。
 実際には4000万人~4500万人くらいの方が行くことによって1億7000万人という延べ鑑賞人口が成立しています。実は4500万人の3分の1、1500万人が年間ご覧になる鑑賞回数全体の75%、つまり参加人口の3分の1で全体の4分の3という非常にヘビーな方、ミドルの方によって映画館産業は成立しているという実態があるのです。これを逆手に取り、その人たちに安価で映画の情報、新作の情報を届けるには予告編を活用すべきだと思っていて、TOHOシネマズでも出来るだけ数多くの作品を早く紹介していきたいので、佐野さん、短い予告編を早く作って欲しいということです。
(次ページへつづく)


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