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特集「ndjc 2011」 今押さえておきたい若手映画作家たち

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特集「ndjc 2011」 今押さえておきたい若手映画作家たち

2012年02月17日

ndjc2011メインビジュアル.jpg 「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」という名前をご存じだろうか。聞いたことがないという人も多いかもしれない。映画をはじめ映像業界の関係者、またはそのファンなら、是非とも知ってほしい。

 「ndjc」は、国が行っている人材育成事業で、実際の作品制作を通じて若手映画監督を育てようという貴重な取り組み。これまで、おもに業界向けのプロジェクトとして展開されてきただけに、一般的な知名度は決して高くなかった。しかし、今年はプロジェクトで完成した短編作品がすぐに劇場で一般公開されることが決まり、日本映画の次代をうらなうその試みに俄然注目が集まる。


実施6年目…評価高まる「ndjc」


 「ndjc」のスタートは、2006年にさかのぼる。諸外国が、国を挙げて若手映画監督の養成に乗り出すなかで、日本も積極姿勢を打ち出した。文化庁が主導し、NPO法人の映像産業振興機構(VIPO)が企画・運営を受託。芸術性と商業性を兼ね備えた21世紀の“映画作家”を育てようと毎年実施されてきた。エントリーするには映画関係団体からの推薦が必要なのにもかかわらず、過去6年で、プロジェクトの応募総数は250名を越え、今や業界最有力の人材宝庫となりつつある。また、35ミリフィルムでの映画作りを次代に継承する指導内容には、文化的側面からも評価が高い。

>>指導する桝井省志氏が語る「ndjc」の意義とは…

 若手が長編商業作品のメガホンをとるのが極めて難しい現在の日本映画界にあって、「ndjc」は監督志望者にとって数少ない希望の光だ。助監督として長年キャリアを重ねても、または自主映画界で傑作を発表しても、あるいは他の映像分野で顕著な活躍を見せても、監督デビューが約束されない時代。国が出資する「ndjc」は、各方面で注目されながらもチャンスに恵まれない才能にスポットをあて続けてきた。その活動は、業界内外に着実に浸透し、芽吹き始めている。


強力指導・支援で才能発揮…名作短編ずらり

ndjc2011藤澤組風景.jpg 具体的に「ndjc」は、ワークショップと製作実地研修の大きく2課程に分けられる。春に募集がかかり、映画関係団体が推薦する全国の若手映画作家たちが名乗りを上げる。夏に行われるワークショップで自身の技量を確認。その成果などを勘案して次のステップに進む監督5名が決定。選ばれた5名は、35ミリで約30分の短編を制作する機会を得て、脚本を書き下ろし撮影や編集といった製作実地研修に挑む。

 短編制作にあたっては、資金面の援助だけでなく全面的なバックアップ体制が敷かれる。プロデューサーの桝井省志氏(アルタミラピクチャーズ代表)ら現代日本映画をリードする面々が脚本段階から指導にあたり、商業作品で多数実績のあるプロダクション各社が現場を支える。若手作家の未知なる才能を開花させるのに、申し分ない環境。この強力な指導、支援体制こそが「ndjc」最大の特徴だ。また、デジタル化が進む時代にあって、35ミリで撮影・編集を行える貴重な場であることも重要なポイントだ。

>>昨年の「ndjc 2010」ではどんな短編が発表されたか…

 こうして完成した作品は、昨年までに28作を数える。どれも質が高い。自主映画ほどに監督のひとりよがりではなく、並の商業作品以上に作家の個性を発揮。国が手がける案件ながら、作風は人間ドラマだけでなく、ラブストーリー、社会派、コメディ、ホラーテイストのものまでバラエティに富む。老若男女誰もが楽しめる作品に、若手ならではの豊かな想像力やパワーが加わり、その魅力は何倍、何十倍にも広がる。


今年はいち早く一般公開が実現!!

 その出来の良さにもかかわらず、「ndjc」の完成作上映会はこれまで基本的に業界関係者向けにしか行われず惜しむ声が多かった。これに応える形で、昨年から今年にかけて実施された最新のプロジェクト「ndjc 2011」で完成したばかりの短編5作品は、劇場での一般公開が実現する。東京・ユナイテッド・シネマ豊洲で2月25日(土)~3月2日(金)に1週間限定の特別興行。今後が期待される若手映画作家を今押さえておきたい。


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例年以上に気鋭ぞろい…


ndjc2011集合写真.JPG 「ndjc 2011」は、28団体から計68人の応募があり、昨年8月に行われたワークショップには15名が参加した。その中から選ばれた5名を対象にした製作実地研修が10月から行われ、今年1月に全課程を終了。今年度も、若手映画作家たちによる短編5作品が無事出来上がった。

 メガホンをとった面々は、例年に増して気鋭ぞろいだ。助監督からの“現場叩き上げ”勢、CMやテレビの現役ディレクターなど、5名とも異なった経歴を持つ。それだけに、完成した作品はテーマもジャンルもまるで違い、演出手法もさまざま。しかし、どれも野心に満ちあふれ、新しい日本映画の時代到来を予感させる。

>>「ndjc 2011」で短編のメガホンをとった5名の経歴は…

 七字幸久監督は、助監督歴15年超のキャリアに裏打ちされた確かな手腕で魅せる。『ここにいる…』は、双子姉妹の心の絆をホラーテイストで描き、恐怖と感動の絶妙のバランスに要注目だ。 同じく現場叩き上げ勢の藤澤浩和監督は、抜群のコメディセンスを披露。『嘘々実実』で、就職活動をテーマに青春の1ページを鮮やかに切り取り、笑って泣かせる。

ジャンル映画を作った2人に対して、CM界から現れた中江和仁監督は、東日本大震災という大きなテーマに挑んだ。被災地でのボランティア経験を経て完成させた『パーマネント ランド』は、観客に“家”とは何かを問いかける。敏腕CMディレクターならではの映像センスを存分に発揮しつつ、大スクリーンに負けない堂々たる作品に仕上げている。


女性監督の活躍に注目!!

ndjc2011山下組風景.jpg 今後が期待される若手映画作家は男性に限らない。日本映画界全体でみても女性監督の躍進が目立つなか、「ndjc 2011」でも女性2名が短編のメガホンをとった。その能力は男性陣に劣らない。

 谷本佳織監督は東映在職中で、今回発表する『あかり』も制作プロダクションは東映京都撮影所。古き良き東映のDNAを受け継ぎながら、知的障がい者の妹をもつ自身を投影した27分間に強いメッセージを込めた。一方、やましたつぼみ監督はテレビディレクターと自主映画作家という2つのキャリアを『UTAGE』に華麗に融合してみせる。慕われていた雇われ女性シェフが堕落していくさまをパチンコ玉で描写する感性が面白い。

>>若手映画作家たちが語る「ndjc」の意義とは…

 いよいよ披露される「ndjc 2011」の成果。果たして、次代の日本映画を背負って立つ若手作家たちの力量はどれほどのものか。業界人はもとより映画ファンであるならば、その目で確かめてほしい。



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「ndjc 2011」完成作品ラインナップ

七字幸久監督「ここにいる…」(30分)

ndjc2011ここにいる….jpg 小さい頃からずっと一緒に過ごしてきた双子の真海と実空は、離れていてもお互いを感じることができる絆を持っていた。しかし、突然行方不明になってしまった実空のことを、真海はまったく感じられなくなってしまう。ある日、真海の前に実空が姿を現すが――。双子の心の絆をホラータッチで描く。

【キャスト】蒼れいな、蒼あんな、井上肇、角南範子、太田 美恵、澤山薫、河原健二
【スタッフ】プロデューサー:柘植靖司、脚本:七字幸久、撮影:今井孝博、照明:鈴木康介、美術:松葉明子、録音:井家眞紀夫、整音:中田仁、早川麻衣子、編集:大永昌弘、衣装:篠塚奈美、ヘアメイク:鷲田知樹、スクリプター:山本亜子、音楽:長嶌寛幸、助監督:吉田亮、製作担当:中村恵子、アシスタントプロデューサー:宮武令衣
【制作プロダクション】映広

>>七字幸久監督インタビュー 職人志向の45歳が描く「人の絆」
 

 

谷本佳織監督「あかり」(27分)

ndjc2011あかり.jpg 結婚式の準備のため帰省した環は、知的障がいを持つ妹のあかりと仲良く連れ立って買い物へと出掛ける。嬉しそうにはしゃぐあかりを見て、環の顔もほころぶが、あかりの何気ない一言が環の正気を奪い、目を離した隙にあかりが行方不明になり――。谷本監督自身の経験がベースになった。

【キャスト】七海薫子、古谷ちさ、福本清三、東康平、まつむら眞弓
【スタッフ】プロデューサー:福島一貴、脚本:谷本佳織、撮影:朝倉義人、照明:沢田敏夫、録音:日比和久、美術:松下ゆかり、編集:永井靖子、助監督:匂坂力祥、記録:中野保子、装飾:極並浩史、音楽:小林暁弘、整音:深井康之、音響効果:伊藤瑞樹、進行主任:森洋亮、プロダクションスーパーバイザー:菊池淳夫
【制作プロダクション】東映京都撮影所

>>谷本佳織監督インタビュー 知的障がい者テーマ「次は長編で」
 


中江和仁監督「パーマネント ランド」(30分)

ndjc2011パーマネントランド.jpg 山奥の寒村に住む老女・富子は、市役所から移住を迫られているが断固として動こうとせず、東京で暮らす息子の幹夫が説得に来る。幹夫は母の体を案じ、内緒で移住の書類にサインをするが、数日間共に生活する中で自分たち家族にとって一番の選択とは何かと葛藤し――。多くの人が移住を余儀なくされた東日本大震災が背景にある。

【キャスト】佐藤貢三、喜多道枝、春木みさよ、古川慎、森下能幸
【スタッフ】プロデューサー:春藤忠温、ラインプロデューサー:久保田傑、脚本:中江和仁、撮影:田中智仁、照明:吉田敦、録音:福田伸、美術:金田克美、装飾:大坂和美、編集:鈴木真一、衣装:川崎健二、ヘアメイク:有路涼子、スクリプター:柴山あすか、助監督:岩渕崇、制作担当:齋藤大輔、音楽プロデューサー:戸波和義
【制作プロダクション】パレード

>>中江和仁監督インタビュー 震災と故郷に対す―CMから映画へ

 

藤澤浩和監督「嘘々実実」(29分)

ndjc2011嘘々実実.jpg 就職活動を題材にしたコメディ。就活中の真は、面接で印象を残そうと大きな嘘をついてしまい彼女の希に愛想を尽かされる。どうしても内定をとり希と寄りを戻したい真は、ついた嘘を正当化するために労を惜しまなくなり、やがて嘘のレベルはどんどんヒートアップして―。本当にやりたいことを見つける青春物語。

【キャスト】尾上寛之、小野健斗、久野雅弘、山崎真実
【スタッフ】プロデューサー:土川勉/杉﨑隆行、脚本:藤澤浩和、撮影:蔦井孝洋、照明:疋田ヨシタケ、美術・装飾:渡辺大智、録音:林大輔、編集:村木恵里、衣装:宮本まさ江、ヘアメイク:中村洋子、スクリプター:川野恵美、音楽:長嶌寛幸、助監督:佐和田惠、ラインプロデューサー:原田文宏
【制作プロダクション】角川映画

>>藤澤浩和監督インタビュー 現役助監督は「笑い」にこだわり


やましたつぼみ監督「UTAGE」(29分43秒)

ndjc2011UTAGE.jpg カフェバー宴は今夜も盛況。雇われ女性店長ハルの接客と料理の腕は客を惹きつけていた。そんなある夜、宴に小さな異変が起こる。常連客のカヨが有名パティスリー・オノマコトに就職を決めたのだ。カヨの健闘を讃える店内。しかしハルに笑顔はなく―。独特のタッチで、女性が嫉妬し堕落していくさまをユーモラスに表現。

【キャスト】つみきみほ、奥瀬繁、岡田達也、小田部千夏、山田真歩、安井真理子
【スタッフ】プロデューサー:成田尚哉、アソシエイトプロデューサー:東快彦、ラインプロデューサー:池原健、脚本:やましたつぼみ、撮影:上野彰吾、照明:赤津淳一、録音:岩倉雅之、美術:鈴木千奈、フードコーディネーター:はらゆうこ、編集:奥原好幸、音楽:George St John、助監督:関谷崇、制作主任:間口彰
【制作プロダクション】アルチンボルド

>>やました監督インタビュー 魅力的な主人公 フィルムで創造



業界関係者向け上映会の一般モニターも募集中

 ユナイテッド・シネマ豊洲での一般上映に先駆けて、業界関係者向けの合評上映会が2月14日(火)に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズ、2月16日(木)に東映京都撮影所第一試写室、2月17日(金)に大阪シネ・ヌーヴォで行われる。一般公開後も、3月8日(木)に沖縄・桜坂劇場、3月26日(月)に宮城・せんだいメディアテークで実施され、すべての会場で一般モニターも募集している。



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「ndjc 2011」一般向け特別興行
日程:2012年2月25日(土)~3月2日(金)
場所:ユナイテッド・シネマ豊洲
時間:2月25日/18時10分~21時30分 ※5作品上映後に監督5名によるティーチ・インを実施
         2月26日~3月2日/18時40分~21時30分 ※上映前に監督による舞台挨拶を実施
入場料金:1000円均一
「ndjc」公式サイトで詳細のほか、お得なチケット情報などを順次掲載


(C)2012 VIPO



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