東宝が、若き才能を発掘・育成するべく取り組む短編オムニバス映画プロジェクトの第2弾『GEMNIBUS vol.2』が、3月6日(金)からTOHOシネマズ日比谷で公開されることが決まった。
6本の短編が並ぶ同作だが、プロジェクトリーダーの栢木琢也氏(東宝株式会社 エンタテインメントユニット コンテンツビジネス開発室 プロデューサー)は「東宝のメンバーが80~90人の監督にお会いし、様々な方とプロット開発を行うなかで実現した選りすぐりの作品です」と胸を張る。まさに、東宝が「いずれ一緒に長編映画を制作したい」と考えた才能豊かなクリエイター陣がずらりと揃ったプロジェクトであり、映画ファンはもとより、映画業界人にとっても必見のオムニバスと言える。森七菜、黒川想矢、黒島結菜、浅野温子、吉田美月喜、香椎由宇、西野七瀬、本郷奏多、西垣匠、山﨑天、戸塚純貴といったメジャー映画の主演クラスの俳優が数多く出演していることも、このプロジェクトに集った監督らの才能に寄せられる期待の大きさを表している。
プロジェクトリーダーの栢木氏
東宝は、才能支援を目的に実験的コンテンツに挑戦していくレーベル「GEMSTONE Creative Lavel」を展開している。その一環として製作しているのがオムニバス映画『GEMNIBUS』だ。第1回は2024年6月に公開した。当時からプロジェクトを統括している栢木氏は「前回はおかげさまで業界の方々、特に監督たちから『東宝がこういうことをやるべきだよね』とお褒めの言葉を多く頂きました。僕たちプロジェクトメンバーだけでなく、上長やプロデューサーにもそういったお声を頂くことが多かったようで、大きな成果を上げることができたと思います」と振り返る。参加した監督の中には新たな企画開発での起用が決まったケースもあり、早速クリエイターの登竜門としての機能も果たしている模様。さらに、第1回作品のプロデュースを経験した東宝の社員が映画企画部に異動となったケースもあり、社内の映画プロデュース力向上にも一役買っているようだ。
その一方で、前回は反省点も多かったと栢木氏は話す。「とにかく作品を完成させることで手一杯でした。細かいことを挙げればキリがないですが、海外映画祭への出品など、作品をより多くの方に届けるための取り組みについては、十分に検討しきれなかった部分もありました。今回は作品の完成に加えて、より多くの方に届くことを意識しながら、公開に向けた準備を進めてきました」。
実は、今回の6本の中には2024年中や、2025年前半には完成していた作品が何本もある。しかし公開を焦ることなく映画祭出品に尽力。その結果、『ソニックビート』はモントリオールのファンタジア国際映画祭、『顔のない街』はハワイ国際映画祭などに出品を果たし、その確かなクオリティを証明してきた。
前回から約2年を経て、満を持して公開を迎える第2弾。上映順に、トップバッターを務めるのは『青い鳥』。BABEL LABELに所属し藤井道人監督から大きな期待を寄せられる新鋭・増田彩来監督の作品だ。写真家の監督による、スクリーンに映る様々な“青色”が魅力的な美しい1本。「弊社の今井(翔大)プロデューサーが藤井監督と作品をご一緒する中で、期待している監督としてご紹介頂いたのが増田さんです。まだ24歳ですが女性写真家として名声を確立しており、画がめちゃくちゃ綺麗なのは勿論のこと、監督の個性を存分に発揮した作品かもしれません」。
2番手は『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』。『リトル京太の冒険』も手掛けた大川五月監督らしい、思わぬ妊娠をした主人公をポップに描く作品ながら、日本人の中に潜在的にある偏見をグサりと刺すクライマックスに驚く作品。「(他社の)浅野由香プロデューサーにご紹介頂き、社内で興味のある人を募ったところ、たくさんの女性プロデューサーが手を挙げた企画です。実は当初『GEMNIBUSでこれをやるべきか』と議論にもなりましたが、偏見・差別という難しい題材を、大川さんの演出でうまく仕上げてくださいました」。
3番手は『顔のない街』。顔を自由に変えられる近未来を舞台にした社会派SFを、村上リ子監督がスタイリッシュに撮り上げた。「集英社が展開していた漫画ネームや絵コンテを誰でも手軽に描けるアプリ『World Maker』と東宝で実施したコンテストの大賞作品を原案とした映画企画です。村上監督がドンデン返しを得意としていて、しかもクリストファー・ノーランを目指していると常々おっしゃっており、題材にピッタリだと思いました」。「イクサガミ」にも参加した杉本大和氏がカメラマンを務める映像にも注目だ。
4番手は『インフルエンサーゴースト』。中学生の頃から共同でクリエイティブ活動をしていた西山将貴監督と白組の佐藤昭一郎氏の若手タッグが奮闘し、ハイクオリティで不気味なクリーチャーを生み出した作品。「僕も撮影現場に行きましたが、監督と佐藤さんには(CGの)クリーチャーが見えていて、カメラマンも2人を信じて進んでいく撮影でした。佐藤さんは『ゴジラ-1.0』の大戸島のゴジラのシークエンスを担当した方ですし、短編とは思えない素晴らしいクリーチャーになりました」。
5番手は『ソニックビート』。TOHOシネマズ学生映画祭でグランプリを受賞した、24歳の関駿太監督による初の商業映画。陸上100m走のスタートラインに立った主人公の精神世界を描く。「僕は映画祭の審査員を務めていますが、グランプリとともに、初めてGEMSTONE賞を授与させて頂いた監督です。それまで残念ながら“該当なし”の賞だったのですが、ようやく見つけた才能です。彼の抱えている葛藤を、陸上の走り出す前の主人公に投影した作品です」。
トリを務めるのは、唯一のアニメ『もし、これから生まれるのなら』。CMやMVで手腕を発揮する土海明日香監督が、生まれる前の双子の冒険を独自の柔らかな世界観と強いメッセージ性で描く。「映画調整部の山元(哲人)と、アニメーションクリエイターチームの騎虎とのお付き合いを通して始まった企画です。この作品を発表すると、アニメ業界やファンの方が沸いていて、土海さんへの期待値の高さを実感しました」。
栢木氏は、「TOHOシネマズ日比谷1館に絞った公開ですが、反響次第では全国を目指そうと考えています。東宝が見出したクリエイターの作品にぜひ注目してほしいです」とアピールするとともに、「今後も続けていくうえで、ぜひ業界の仲間も増やしていきたいと思っています」と、社外からのプロジェクト参加も呼び掛けている。(取材 平池由典)
『GEMNIBUS vol.2』ラインナップ
■タイトル:『青い鳥』
■監督・脚本・撮影:増田彩来
■出演:森七菜、黒川想矢/井浦新
■音楽 : haruka nakamura
■あらすじ:写真家として生計を立てる女性・ミチルは、心に傷を抱える少年・トアと初めて旅に来ていた。
2人は7年前に運命的に出会い、それから姉弟のように支え合ってきた。
ミチルの運転する車で北海道・女満別の雄大な自然を巡りながら、ミチルはトアの姿をカメラに次々と収めていく。
美しい自然のなか、互いの心を満たすような幸せな旅のなかで、トアはやがてその心の闇を打ち明けはじめる。
しかしミチルは、そんなトアにどうすることも出来ず——。
■タイトル:『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』
■監督・脚本:大川五月
■出演:黒島結菜、浅野温子
■あらすじ:広告代理店で働く30代独身の菜摘(黒島結菜)。NY帰りの彼女を待っていたのは予想外の妊娠だった!キャリアとの間で揺れながらも出産を決意するが、母・登紀子(浅野温子)に「父親はアメリカ人」と告白したことで運命は激変。母の珍妙な出産サポートに辟易しつつ、想像を絶する痛みに耐え無事出産の日を迎えるが……。
■タイトル:『顔のない街』
■監督・脚本:村上リ子
■出演:吉田美月喜 香椎由宇
■原案:西田充晴(ペンネーム:奇多郎)「顔のない街」(東宝×ワールドメーカー短編映画コンテスト 大賞受賞作品)
■あらすじ:舞台は近未来の日本。顔を自由に変えられる時代、同じ顔をした人々が街にあふれる社会。“ナチュラルの顔”で生きる大学生・ミサ(吉田美月喜)は、自身の鏡に謎の×マークが描かれていたことをきっかけに、不穏な違和感と不安に飲み込まれていく。やがて彼女はレイ院長(香椎由宇)の経営する有名クリニック「レイ・フェイス・クリニック」の扉を叩き、顔を変えるという選択に向き合うが——。
■タイトル:『インフルエンサーゴースト』
■監督・脚本・編集:西山将貴
■出演:西野七瀬 本郷奏多/武田玲奈/カルマ 青島心
■あらすじ:ある日突然、身に覚えのない罪で「炎上」したら?
日本を代表するインフルエンサー集団が、火災で命を落とす衝撃的な事件が発生。偶然居合わせた一般人の麻理(西野七瀬)はSNS上で犯人扱いをされ、世間の怒りを買う。追い詰められた彼女は、「本当の自分」を取り戻すため、火災現場に向かう――。いつ、誰が、どんなタイミングで、炎上するか全く予想がつかない現代。明日のターゲットは、あなたかもしれない。これは、現代を生きる全ての人が無関係ではいられない、炎上の裏側を描く物語。
■タイトル:『ソニックビート』
■監督・脚本:関駿太
■出演:西垣匠 山﨑天(櫻坂46) 戸塚純貴
■あらすじ:陸上競技大会100m走予選のスタートラインに立った高校陸上部員のイサオ(西垣匠)は、極度のプレッシャーから精神世界に閉じ込められてしまう。真っ暗な空間には、怪しい作業員とイサオの記憶を映し出すテレビデオ。陸上部イチ足が速いアキ先輩(山﨑天)や、幼いころに出会ったさすらいの旅人リキ(戸塚純貴)との思い出が、走馬灯のように駆け巡る。イサオは過去の記憶と向き合い、走り出すことができるのか——。
■タイトル:『もし、これから生まれるのなら』(アニメーション)
■監督・脚本:土海明日香
■出演:林咲良 松村くるみ
■音楽:原摩利彦
■主題歌:坂本美雨「Lullaby」(Universal Music)
■制作:騎虎
■あらすじ:とある星に降り立った名もなき双子。臆病な妹と、無邪気な兄。
二人は案内人に導かれ、まだ見ぬ母を探し不思議な世界を進んでいく。しかし、行く道は母の悲しみによって崩れかけていた。これは「とつきとおか」の記憶になる前の物語。
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