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インタビュー:奥田誠治 日本テレビコンテンツ事業局コンテンツセンターEP

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インタビュー:奥田誠治 日本テレビコンテンツ事業局コンテンツセンターEP

2009年05月18日
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08年興収合計300億円超

 ―― では話題を変えまして、日テレ開局55周年の展開もあり、大型作品も続いた08年の展開の総括と、今後または09年のラインナップについてお話を聞かせてください。まずは08年についてお願いします。

奥田 日本テレビの映画事業としては、08年は興行収入の合計が300億円を超え過去最高の成績を残しました。
映連の毎年恒例の発表があるので、それと同じ区切りで見ますと、日本テレビの出資作品は08年に13本ありまして、合計すると興収は325億5700万円となりました。うち幹事作品が5本ありまして、その5本の興収合計は114億2千万円でした。
08年作品を順に挙げますと、年度では07年度の後半の作品となっています、「マリと子犬の物語」、「雪の女王」、「陰日向に咲く」、「L change the worLd」、「パンダコパンダ」、「死神の精度 sweet rain」。ここまでで興収87億43百万円。08年度に入りまして、「名探偵コナン」、「隠し砦の三悪人」、「チェブラーシカ」、「アンパンマン」、「崖の上のポニョ」、「スカイ・クロラ」、そして「20世紀少年 第1章」。この7本で興収238億14百万円となり、合計13本です。
公開でいうと08年にはこの後、「252」、「K‐20」、「20世紀少年 第2章」、「ヤッターマン」と続きますが…。この4本で、07年度後半の6本(前記)の興収87億円に近い数字を上げられるので、08年度も興収300億円を超えることになるでしょう。

 ―― 数字で成果を出しているということですね。

奥田 08年はジブリの「ポニョ」もいい成績となりました。それに、映画事業部の各担当Pもがんばりました。

 ―― 作品ごとに見るとどうでしたか。

奥田 「マリと子犬」は07年12月の公開として正月作品となり、結果30億を超える成績を上げることができました。この作品は、企画から東宝さんと綿密にやって、制作の猪股監督の初メガホンが光り、うち(映画事業部)の担当の藤村Pも頑張り、制作面でも宣伝面でも大変良い結果が出せました。
「陰日向」は、うちの佐藤(貴博)Pが東宝さんと組んで制作した作品です。岡田准一さんの演技も大変良かったです。
同じく佐藤(貴博)P担当の「L change the worLd」は、「デスノート」のスピンオフ作品でしたが、ほとんどオリジナルで、幹事作品として取り組んだもの。それで興収30億越えができたので、本当にうれしい成果でした。
「死神の精度」はROBOTとやった作品です。
「隠し砦」は、想像よりもヒットとならなかったことが、去年の作品の中で謎であり、今でも何でだったのかなと思う結果でした。リメイクというか時代劇の見え方が、食わず嫌いのようになってしまったのではないかと感じています。この映画化に向けては、東宝の島谷(能成・東宝専務取締役映画調整担当)さんと、黒澤作品のリメイクもまだやっていなかった頃の、今から5~6年前に企画したもので、そこから積み上げて映画化にこぎつけたわけですが。ご存知のようにオリジナルは「スターウォーズ」に影響を与えた訳で、とても広がりのあるテーマの作品だったので、期待していたのですが…。
その後は「ポニョ」です。出来上がりを初めて見た時に私は、これは宮崎駿監督の最高傑作だと思いました。実は興収300億いくのでは、という手ごたえを感じた作品でした。「ポニョ」では大橋のぞみと藤岡藤巻がユニットを組むことになり、おととしから動いていたのですが、昨年の2月頃は、月にCDが8枚しか売れていないと大変気をもんで、売れなかったらどこどこが買い取りだなどと言っていたことも思い出します。結局、「ポニョ」の映像露出を抑えていたPR戦略の中での話になるのですが、公開が近づき映像露出が始まったら、一気にその心配はなくなる売れ行きとなりました。これはジブリの鈴木敏夫Pの戦略で、戦国時代の長篠の戦いのような、ひきつけて一気に攻撃するような見事なものだったと思います。
また「ポニョ」の大ヒットの背景には、日本テレビあげてのTVパブリシティーはもちろんのこと、宮崎監督のドキュメンタリー番組の放送など、日本テレビ以外も含めたメディア連動も効果的にできたと思います。久石譲さんのジブリコンサートは、イベント自体は日テレが仕切って、放送はNHKがOAしました。また裏側では、色職人といわれた色彩設計の保田(道世)さんが、これを最後に引退するという思い出深い作品にもなり、とても感慨深い作品でした。
「スカイ・クロラ」は、森博嗣さんの原作に元々支持層がいましたし、キルドレという存在を描いた印象深い作品です。元はジブリにいた石井さんがIGに移り手掛けた最初の企画となるのですが、日テレは高橋望Pが担当しました。作品について朝まで激論を交わし、最後は皆で涙を流した思い出もあります。

(全文は月刊誌「文化通信ジャーナル」09年4月号に掲載)

【奥田誠治(おくだ・せいじ)氏の略歴】
日本テレビ放送網株式会社
コンテンツ事業局コンテンツセンターエグゼクティブプロデューサー

1956年会津生まれ、東京音羽育ち。
1980年明治大学政治経済学部経済学科卒業
1980年日本テレビに入社。
 5年間編成部に在籍したのち映画部に異動。『魔女の宅急便』(89)から『崖の上のポニョ』(08)まで全てのスタジオ・ジブリ作品に製作参加。および、プロダクションIG作品『スカイ・クロラ』(08)を製作。近年のおもなプロデュース作は、『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)、『DEATH NOTE 前編・後編』(06)、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(07)、『舞妓Haaaan!!!』(07)、『めがね』(07)、『ALWAYS 続三丁目の夕日』(07)、『20世紀少年 第一章、第二章、第三章』(08、09)『252 生存者あり』(08)、「K-20 怪人二十面相・伝」(08)ほか多数。第25回藤本賞特別賞ほか受賞。


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