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トップインタビュー:依田巽 ギャガ(株)代表取締役会長兼社長CEO

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トップインタビュー:依田巽 ギャガ(株)代表取締役会長兼社長CEO

2010年07月20日


ギャガの火を消さずにきちんと将来につなげたい

 ―今、スタッフの人数的にも適正というところですか。

依田 それは見方によりますけれど、私は適正だと思っています。なぜなら、いろいろな作品を預かる上において、繁忙期もあれば閑散期もあるのですが、ある程度きちんとした人材と会社としての機能を整えておかないと、作品を預かれません。いま約60人弱なのですが、この会社を立て直して売り抜けるという気持ちだったら、もっと小さくすればいいのですよ。1~2期の財務状況を良くしておけばいいわけで。そういう気持ちではなくて、ギャガの火を消さずにきちんと将来につなげていきたいと思うと、やはり人材を確保することは大事ですから。

 それからもう一つには、私共は権利ビジネスをしていますから、過去25年分の膨大な権利とそれにまつわる清算業務、管理業務があって、大変な労働集約的な部分もあるのです。これを合理化しようと思ったら、このビジネスをやめなければなりませんが、そうすると、多くの権利者、ジョイント・ベンチャーのステイクホルダーに迷惑をかけるわけです。それがこういう企業の経営の最も難しいところですね。今の作品の公開から上がって来る損益ではなく、そういう25年に及ぶ過去のビジネスの後始末も、いま全部しているのです。特に著作権、著作隣接権というと、映画の場合70年ありますからね。ですから、1回かかわると、非常に長い期間それを管理し、報告し、分配する義務があって、そのためにある程度の人材は絶対に必要なのですね。


 ―昨年の春までは、しばらくは他社からの作品を預かって、それを確実に当てて利益を出していく、「ディストリビューションの専門代理店」としてやっていくとしていましたが―。

依田 基本的に一昨年のカンヌから昨年のカンヌまで1年間は、ギャガの買い付け、企画製作機能は停止していましたので、ギャガとしては買っていませんが、預かり作品はあります。

 買い付けをギャガとしてやめた時期の作品の公開、あるいはビデオ化権、テレビ放映権については、今期と来期で若干影響が出てくると思いますが、新体制になって買い付けを再開し、タイミングよく公開していきますから、それほど大きく影響があったわけではありません。


 ―そうしますと、旧ユーズフィルムとの関係は、今後どうなっていくのでしょう。

依田 ユーズフィルムは昨年の7月22日から新規の映画の企画製作、買い付けは一切やめるという前提で、ギャガの再生をスタートしたのです。社員にしても作品にしても、両方で競合することはマズいですから、それはないという前提でギャガの再スタートが決まったのです。


 ―例えば邦画の企画、開発だけするとか、そういうこともないのですか。

依田 それもないです。


 ―では、残っている作品の処理をしていくと。

依田 そうですね。ほとんどこちらが引き受けましたけれども。新規案件はないです。


 ―6月上旬に、松下(剛)宣伝部長に兼務という形で、調達企画部企画開発プロデューサーという業務を任命されましたが、この意味合いというのは。

依田 ギャガという会社は、洋画の輸入配給で今までやってきましたが、邦画というのはまた違うのですよね。そこにいくらギャガの過去の経験があっても、やはり邦画となると新しい人材も必要です。松下は松下なりの、30代の新しい感覚でいろいろなおつき合いもあり、そういう風な人と人とのつながりが邦画には重要だと考えています。今の調達企画・契約部は洋画ベースになっていまして、松下も洋画の宣伝マンなのですが、邦画の世界にも彼はかなりいろいろな人脈があるのですよ。本人もやりたいということなので、そうさせようと。外部のプロデューサーとか、外部のいろいろな方の意見も取り入れながら、基本的には30代の人たちが作品をどんどん作り上げていくというのが、ギャガのDNAだろうなと思います。しかし、邦画は邦画の一つの社会がありますから、そこで勉強させたいという思いもありますね。


 ―自社で企画開発をして製作もやっていくと。

依田 そうなるのが一つの私どもの夢ですけれど、現実はなかなかそんなわけにいきませんから、とにかくみなさんとおつき合いさせていただければと。「一緒に我々も参加させてくださいよ。出資もできますし」という意味で、キノシタグループとティー ワイ、ギャガということで、まずおつき合いいただきたいという発想ですね。


 ―引き続き他社からの作品も受けつつということですね。

依田 そうですね。


 ―年間の配給本数はどのくらいをイメージされていますか。

依田 来年の夏までの1年間は、四半期に5本ぐらいのペースで入っています。


 ―自社で買い付け、企画製作するものと、他社の作品とのバランスはどのような感じですか。

依田 あまりこだわっていないのです。やはり作品ありきということで、私どものマーケティング・チームと営業チームがきちんとそれをこなせなくてはいけませんからね。


 ―邦画と洋画の比率はどうでしょう。

依田 基本的にはやはり洋画が当社の本業ですからね。年間20本前後ぐらいで、そのうち邦画が4~5本できればいいのではないかなと思っています。これは全部私どもが企画製作するという意味ではなくて。ギャガらしいマーケティングを期待するから、劇場を空けてくださる興行もいらっしゃるのですよ。例えば、ギャガの星野(有香・取締役)が宣伝プロデューサーをやるんだったら、「じゃあ、劇場を何館空けますよ」と言ってくださる所もあるわけです。ですから私どもなりの本業は大事にしようと思っています。


 ―ワーナー・ブラザース映画と共同配給した「第9地区」がスマッシュヒットとなりましたね。

依田 そうですね。あれはワーナー エンターテインメントジャパンのウィリアム・アイアトン(代表取締役社長)さんと私とでいいディールができたのですけれど、その前に、私どもの小竹(里美・執行役員)と星野がやりたいという気持ちがあり、皆で一生懸命やった結果です。


 ―ワーナーとギャガがフィフティ・フィフティだったのですか。

依田 そうです。ありがたいと思っています。


 ―年間洋画・邦画合わせて20本ぐらいやったとして、年間総興収どれぐらいをまず目標とされていますか。

依田 映画をやる以上興収はつきものですから、やはり60億円前後ぐらいは狙いたいというのはありますね。それもさることながら、最終的には劇場公開で確実に粗利が残っているということが一番大事だと思っています。堅く見て、最低60億、来期は100億円ぐらい狙いたいと思いますけれども…。



 ―依田さんが新生ギャガを作り上げていく上で、「プロジェクト21」というものがありますが、この役割はどういうことですか。

依田 会社のビジネス・モデルをどのように多角化するかという時に、洋画の輸入配給会社というのは、ご存じの通り、そんなに権利を持てないのです。その限られたビジネス・チャンスをどのように最大化するか、そのためには、もちろん劇場の興行もさることながら、それから派生するビジネス、あるいはニュービジネスを取り込んでいこうということで、各部署のオピニオン・リーダー的な役職員を集め、一応私がその監修で、週1回ブレインストーミング的な機会を持つようにしているのです。これは忙しくても私もなるべく出るようにしているのですけれど、私が行くと誰もしゃべれないような雰囲気にはしたくないので、私なりの人脈も活かしつつ、いろいろな話を今まさにしているところです。時間はかかると思いますけれど、去年の9月にスタートしましたから、1年経つと少しずつ方向性が見えてきています。


 ―ギャガとして、新しいビジネス展開につながる展望が見えてきていると。

依田 ありますね。来年の今ごろになると、かなりそれが具体的な形になるかと思います。やはり2年はかかりますよ。


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