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大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.32

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大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.32

2011年06月07日

◎「パイレーツ」の興行展開がいつもと違うぞ


 今年公開された作品で、初めての興収50億円突破である。6月5日現在、「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」が50億3317万円を記録した。昨年のこの時期は、「アバター」「アリス イン ワンダーランド」「カールじいさんの空飛ぶ家」の3作品が50億円を超えていたことを思うと、逆に今年の低迷ぶりがわかるというものだが、2週間少しでの達成はやはりたいしたものである。

 ただ今回の「パイレーツ~」は、いつもと興行展開が微妙に違うのである。前回のおさらいになるが、スタート時の3日間は前作「~ワールド・エンド」(最終109億円)の82%ほどの興収であった。それが2週目の5月28、29日の土日では、前週土日の92%の興収となり、ほとんど落ちがない見事な推移を築いた。しかし3週目となったこの6月4、5日では、前週の70%弱の興収という推移になったのである。

 2週目は、子どもたちを中心としたファミリー層が集客に貢献した。これは、シリーズのテレビ放映やそれにからんだ新作宣伝などが功を奏し、客層が広がったためとみられる。子どもたちは、テーマパーク的な中身にある程度の関心を覚えたのだろう。追いうち的に流れた番組内での新作情報は、子どもたちに劇場へ足を運ばせるきっかけとなったと判断できる。しかし、そのファミリー層の動員が、この6月4、5日には少し減少する傾向が見えた。

 こういう見方ができるかもしれない。最初のテレビ放映(1作目)は視聴率が16%あった(5月21日夜のフジテレビ)。しかし、2作目以降の放映が日曜夜の枠(テレビ朝日)になった段階で、少し視聴率が下がった。これは、この時間帯が各局入り乱れた視聴率の大激戦区であり、他の人気番組と競合したためであった。

 こうした経緯を見ると、シリーズのテレビ放映がもっとも有効だったのが、1作目のときであったのがわかってくる。2週目段階では、これまで以上にファミリー層の掘り起こしが実現できたが、それは3週目に至り強い持続力をもっていなかったことが少し見えてきた。

 さて、今後はどうなるか。50億円は超えたが、ここから先が険しい道のりである。少しトーンダウンしたファミリー層の動員はどうなるのか。さらに、3D版への関心はどうなるのか。この分析は、次回に続くことになりそうである。

(大高宏雄)

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