アニメが、映画興行を席巻し始めている。この10月27、28日の週末ランキング(興行通信発表)によれば、上位10本のうち、何と4本がアニメだった。
初登場トップの「映画 スマイルプリキュア!絵本の中はみんなチグハグ!」、6位の「ロラックスおじさんの秘密の種」、初登場8位の「009 RE:CYBORG」、9位の「神秘の法」の4本である。まずは、新作アニメの2日間(27、28日)成績を見てみよう。
☆「映画 プリキュア~」=動員17万3283人・興収1億9279万2900円(172スクリーン)
☆「009 RE:CYBORG」=4万1901人・6981万5300円(63スクリーン)
「映画プリキュア~」は、今年3月公開の前作(最終興収10億3千万円)の98.6%。定番アニメの安定感といえば、それまでだが、より低年齢層の新しいプリキュアファンも見受けられるとのことだ。この新しい層の広がりは、シリーズ維持に欠かせないもので、それが少し見えてきたのが重要である。
注目は、8位とはいえ、限定公開にして好スタートの「009~」だろう。神山健治監督への期待感が、興行のベースにある。題材の知名度の高さが、さらに客層の幅を広めているのも見逃せない。監督主導の作品であり、高い知名度も併せもつ。この2段構えの要素が混ざり合ったアニメの形が、スタート時点では、しっかりと興行の成果に結びついたと言える。
ただ、アニメ全体で見れば、土日型という興行もまた、多いのである。だから、4本も週末にランクインしたことを補足しておきたい。1位と6位は、明らかにそのパターンで、平日になれば、数字は上がらない。そこを押さえつつも、明らかにアニメの興行は様変わりを始めたのである。
邦画はかつて、実写作品の興行が弱く、アニメばかりが興収の上位に入ってくると言われた時期があった。ただそのときは、ファミリー向きのアニメが多かった。それが今や、アニメの多ジャンル化の時代を迎えて客層も広がり、まさに“アニメ百花繚乱”といった趣となってきた。
もちろん、アニメ全部がヒットするわけはなく、成功、不成功あるのだが、その興行ポテンシャルは、かつてとは比べようもなく広がっている。これは、果たして何を意味するのか。今後の興行成果が、それに一つ一つ答えを与えていくことだろう。
(大高宏雄)