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「MPAセミナー」マイケル・C・エリス氏、依田巽氏が今後の映画業界を展望

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「MPAセミナー」マイケル・C・エリス氏、依田巽氏が今後の映画業界を展望

2015年11月09日

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左より司会の遠山氏、エリス氏、依田氏


 MPAによる「日本の映画産業及びテレビ放送産業の経済効果に関する調査」結果が東京国際映画祭開催期間中の10月26日に発表された。同日、MPAは六本木ヒルズでセミナーも開催し、MPAアジア太平洋地域プレジデントのマイケル・C・エリス氏、ギャガ代表取締役会長兼社長CEOの依田巽氏が出席。今回の調査結果を踏まえて、現在と今後の映画業界について両氏が語った。(司会はTMI総合法律事務所の遠山友寛弁護士)。




作品の供給過剰、配信で補完


エリス 調査結果によると、日本の映画産業、テレビ放送産業の国内生産額は、2014年に5兆3015億円の直接効果、間接効果も含めると合計で11兆3515億円も貢献している。雇用では38万人以上の人が携わっており、これは本当に大きな数字。税収は955.3億円で、税金という意味でも政府に貢献している。今後は新しいチャネルで大きなチャンスがあると思う。私自身は、映画は大きなスクリーンで観たいと思うが、若い世代はそうじゃないかもしれない。いずれにしてもコンテンツを観たいということに変わりはない。


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MPAの調査結果



司会
 粗付加価値額は5兆5778億円で、対名目GDP比1.15%という結果が出ている。一見低いようにも思えるが、どのような印象をお持ちか。

エリス GDP比1.15%は低いようにも聞こえるが、中国はGDPとの比較では0.2%しかない。日本は成熟した強固な市場であり、自信を持つべきだ。良い産業と言える。

依田 中国の場合、その数字は映画館ビジネスに限ったものではないか。日本同様に2次、3次利用も含めれば、もっと上なのではないかと思う。私も興味のあるところなのでまた調べたい。
 映画は、かつては35mmフィルムで撮影する特定のコミュニティで作られていたが、デジタル化により誰でも制作することができるようになり、現在は供給過剰になっている。ドイツの年間公開本数は600本ぐらいと聞いているが、日本では年間1100本とおびただしい数が公開されている。でもスクリーン数は3300~3400台で頭打ちであり、供給だけ増えているという問題がある。一方で、VOD配信がどのようにこれを補完していくかは期待している。調査によれば、動画配信(の年間売上)が1200億円という数字が出ている。映画ビジネスを生業とする者としては、そういった実感はないが、様々なコンテンツがあるので確かに存在しているのだろう。映画の年間興行成績が2000億円なので、その60%に達しているということになる。これは映画業界にとって朗報だと思う。問題は、家庭のモニターで映画を観てもらえるようになるかというところ。現在日本では動画配信プラットフォームが数十ある乱立状態で、ネットフリックス、Amazonプライムビデオ、ボノボも立ち上がり、今年は配信元年と受け止めており、映画興行の数字は数年前に中国抜かれたが、何とか配信で補完したいと思っている。


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中国でもビジネスチャンス

司会 今回の調査結果では2020年もそれほど映画興行の数字は伸びていないと予測している(1980億円台で推移すると予測)。

依田 私見だが、1億6千万人の観客がなぜそれ以上増えないのか。1つ大きいのは、日本には多様化された娯楽があり、若い20代の人が忙しすぎて、劇場で2~3時間を費やすことをためらう傾向にある。韓国では映画人口の中心は20代、中国も同じように言われている。そう意味では、日本の映画興行を支えるメイン層は偏っていると思う。我々インディー(の配給会社)の場合、中高年の女性客から始まって、そこから広げていくという難しい選択を迫られる状況にある。

司会 アジアでは、国よって映画文化の違いはあるか。

エリス もちろん違いはある。例えば、インドでは人口の93%はインド映画しか観ない。中国は作品内容に制約があり、作品数も制約がある。中国は映画の興行ビジネスの80~90%は興行収入によるもの。それは(2次利用、3次利用も)成熟した日本とは違う。中国では、劇場公開されなければ、何も収益を得ることはできない。日本だとそれ以外にもチャンスを得ることはできる。一方、中国で良い傾向というと、新興の中流階級が映画に行くようになっている。北京では日本よりもチケット代が高いぐらいだが、それでもスクリーンの数は足りおらず、国内で毎日15スクリーンが増設されている。これは今後5年くらいは続くと見らえる。経済規模で言えば、あと数年でアメリカを超えるだろう。中国は経済がコントロールされており、映画やTVで何が放映されるかも規制されているが、これは変わってくると思う。中国の友人と話すと、日本の脚本家やプロデューサーと協力してシナジー効果を出したいと言っている。日本は素晴らしい脚本家がたくさんおり、中国の映画人はそのストーリーを得たいと考えている。日本オリジナルのストーリーとしては公開されないかもしれないが、ローカライズされたストーリーとして、輸入することは可能だ。純粋に日本のコンテンツを輸出することにはならないかもしれないが、アイデアの提供やコラボレーションによって中国で展開できるチャンスがある。

司会 調査結果の中で、今後成長要因に4K・8Kのことも触れられている。あと4~5年で家庭内の視聴環境も変わってくると思うが。

依田 すでにネットフリックスでは4K配信が始まっている。4Kは次のステップだと思うし、これが家庭内視聴で増えていくことを我々も期待している。一方、映画館に足を運んでくれるのかという点だが、各地の映画館はゴージャスなシートを作り、ドルビーアトモスやIMAXで臨場感を味わう時代に入っているので、4Kによる家庭内視聴が増えると同時に、多少割高でも大きな劇場の素晴らしい視聴環境で映画を観てくれるようになるんじゃないと思っている。問題は、そこに到達するまで我々が我慢できるのかということ。2020年のオリンピック、パラリンピックを待つまでもなく、その流れは進んでいくものと思うが、映画業界に身を置く者としては、映画コンテンツとシナジーを発揮してほしいと思う。

記者 動画配信プラットフォームが乱立状態。海外はどんな状況なのか。

エリス 競争は良いこと。一つ最近注目している国はオーストラリア。日本と同じような(乱立)状況が起きている。従来のDVDを買うとか、レンタルするとかいう状況から移行しつつある。いくつは生き残るだろうし、いくつかは淘汰されるだろう。注目に値するところはオーストラリアだと思う。(了)



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