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2010年11月18日


「第23回東京国際映画祭」記事スピンオフ

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 当社は、10月に都内で開催された「第23回東京国際映画祭」の関連フォーラム、及び同時期に行われた「ユニジャパンエンタテインメントフォーラム」のうち、計6プログラムを取材。当コーナーでは、その詳細を掲載します。


~~~~~~~~~~~レポート目次~~~~~~~~~~~~
(1)「『Graduated Response』と『スリーストライクルール』を考えるフォーラム」
(2)「アジアキャスティングフォーラム」
(3)セミナー「日本‐香港 共同制作 ロードマップ」
(4)「映画をつくる:キャンパスから劇場へ」
(5)「映画『桜田門外ノ変』から生まれた映画づくり・ひとづくり・まちづくり」
(6)「映画文化維新!時代を変える新しい興行文化のつくり方」


第23回東京国際映画祭関連企画
(1)「Graduated Response」と「スリーストライクルール」を考えるフォーラム」


 第23回東京国際映画祭の関連企画「『Graduated Response』と『スリーストライクルール』を考えるフォーラム」が10月21日、六本木アカデミーヒルズ49で行われた。主催はモーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)、一般社団法人 コンテンツ海外流通促進機構(CODA)。


 インターネット上での、映画・音楽等のコンテンツの違法ダウンロード対策として、各国で注目を浴びているプログラム「Graduated Response」(GR)と「スリーストライクルール」(スリーストライク制)。これらは、ファイル共有ソフトを悪用し、ネット上で著作物を違法にダウンロードし続ける者に対し、2回の警告後、3回目にネットアカウント停止などの罰則を適用する制度の名称だ。2つの違いは、スリーストライク制が、あくまで罰則を科すことに重点が置かれているのに対し、GRは、最終勧告までに違法ダウンロードを止めさせるよう指導する、教育的な意味合いが強い点だ。同フォーラムでは、両制度の各国の導入状況やネット侵害の現状が報告され、今後の課題と対策について議論が行われた。


ロバート・ピサノ氏.jpg これまでに同制度を法制化した国は台湾、韓国、フランス、イギリス、ニュージーランドの5カ国。各国で細かなシステムが異なるため、GRとスリーストライク制の境界線が曖昧だが、フランスとイギリスはGR、その他3カ国はスリーストライク制の要素が強いという(フランスは、当初スリーストライク制の導入を図ったが、1度目は棄却。GR要素の強い『スリーストライク制』に修正した2度目の案で法制化された)。登壇した米国映画協会(MPAA)代表取締役兼CEOのロバート・ピサノ氏によると、いずれの国も昨年から今年にかけて導入し、「ニュージーランド、イギリスでは、10人中7人は一度の警告でファイル共有ソフトの悪用をやめることがわかった」と、一定の効果が見られることを明らかにした。その一方でピサノ氏は、「警告しても違法ダウンロードを続ける残りの30%の人に対し、きちんとした教育が必要だ。若年ユーザーは、本は書店で購入しても、ネット上での窃盗は構わないと思っている」と指摘。さらに、ISP(インターネットサービスプロバイダー)側の姿勢を改める必要もあると語り、「彼らは、自身が問題解決の鍵を握っているとは思っていなかった。しかし、違法行為を可能としているのは自分たちであることを、最近ようやく認識し始めた。今後はISPとパートナーシップを組んで連携することが重要だ」と述べた。


「GR」パネル・ディスカッション第1部.jpg また、この両制度を日本でどのように扱うべきか、一般社団法人 日本レコード協会理事の高杉健二氏(写真右)と、ティ・ジョイ常務取締役の與田尚志氏(写真中央)がパネル・ディスカッションを行った。高杉氏は、「(違法行為の)ライトな人には啓発のみでいいと思うが、常習犯には『スリーストライク制』や『GR』は効果がありそう。ネットのアカウント停止に焦点が当てられがちだが、段階的に警告を強めるというところがポイントだ。日本でも導入を検討すべき」と主張。與田氏は、「不正なコンテンツの取引が罪であることを知らない人が50数%もいる。問題はそこであって、知識・認識を標準化させることが重要だ。その前提に則って、その国状にあった制度に加工すべき。私は、段階的なプロセスの在り方、日本の叙情的な国民性から考えると、スリーストライク制よりも(指導重視の)GRの方が日本に向いているのかなと思う」と意見を述べた。(写真左はMCを務めた弁護士の遠山友寛氏)

 さらに、パネル・ディスカッションの第2部では、各国のネット侵害や両制度の導入状況について、MPAヨーロッパ地域代表マネージングディレクターのクリストファー・マーシッチ氏(英国)、ALPA会長のニコラ・セドゥ氏(フランス)、映画プロデューサーのナンスン・シ氏(香港)、俳優のテモラ・モリソン氏(ニュージーランド)が報告した。

「GR」パネルディスカッション第2部.jpg



 マーシッチ氏は「『スリーストライク制』は、国によってアプローチの仕方が異なる。フランスは包括的なアプローチを図ったが、今はまだ実験段階だ」と語り、明確に成果が出るのはもう少し先であることを示唆した。また、氏はネット侵害を根本的に断絶するには、同制度の導入だけでは不十分だと語り、「我々のコンテンツはビジネスそのものだ。広く普及させることで多くの人たちに新たな感動や楽しみを味わって頂ける。結果として、ビジネスの成功に繋がっている。コンテンツの普及とビジネスの成功は車の両輪の関係。それについて、(違法行為を行う中心の)若者の姿勢、認識を上げていかなければならない」と、與田氏同様に、違法ユーザーの意識の向上が不可欠であることを強調した。


 また、セドゥ氏は「フランスでは、『スリーストライク制』の導入に5年もかかった。反対の立場に立ったのは、私の孫の世代だ。我々は政治家とも協力して対処しなければいけないが、政治家は若者の票を失うことを恐れ、なかなか(彼らを)説得できない」と政府の対応にイラだちを隠さなかった。香港のシ氏は「我々の国でも、11年のはじめに法案が提出される見込みだが、政府は導入に後ろ向きであり、現在はフランスのケースを様子見している段階だ」と現状を説明。モリソン氏は「友人が製作した『ボーイ』という映画がニュージーランドでヒットしたが、コピーしたものがオーストラリアで出回ってしまった。今後はその友人の手伝いをしながら、(違法対策の)キャンペーンを支持していきたい」と意気込みを語った。(上写真は左より遠山氏、マーシッチ氏、セドゥ氏、モリソン氏、シ氏)


 なお、同フォーラムでは、主催・CODA代表理事/公益財団法人ユニジャパン 代表理事・理事長の高井英幸氏、東京国際映画祭チェアマンの依田巽氏がそれぞれ挨拶に登壇。さらに、ワーナー・ホーム・ビデオ&デジタルディストリビューション ジェネラルマネジャーの福田太一氏が同社のデジタルビジネスに関する取り組みをレポート。最後に、MPAアジア太平洋地域代表 マネージングディレクターのマイケル・エリス氏が閉会の挨拶を行った。


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